23 貴方の為の道具だから
最初に謝っておきます。
まだ完結しませんごめんなさい<(_ _)>
水に薬物が混入されていたと知った翌朝、俺は普段通りに執務をこなしていた。
裏でアンク達には動いてもらっている。何処で混入されているか。欲を言えば、混入させた者は誰かも証拠を押さえておきたい。
バイゼン皇国のハリスにも暗部の者に見張らせているが、これといって何かある訳でもない。
本人は街の図書館や公共施設、市場などを見て回っているらしい。
期待はしていなかったが、あの頭の切れそうな第二皇子はスパイと接触など自らを危険に晒し、疑われるような真似はしないだろう。
するなら部下……だが、これと言った情報はない。
今日も城下に出掛けるという知らせが入っていて、許可を出す為に紙面にサインをする。
時間がないというのに、調べている事が進まない。
本当だったら執務全て投げ出して俺自ら捜査したいのだが、俺の代わりがいないので仕方ない。
ふうと溜め息をつくと、執務机が影に覆われた。
見上げると、セイドリックが嬉しそうに立っている。
「お前か……どうした?」
いつの間にか他の文官は退室していて、俺とセイドリックのみとなっていた。
「ちょっと聞いてください王子。朗報ですよっ!」
ニコニコと酷く上機嫌に笑うセイドリックは、自信満々に語ってみせた。
「やっぱり王子の読み通りでした。昨日第一妾妃様に寝台に引き摺り込まれたんですけど、そこで魅了使われちゃいましたよ!いやー、ちょっと冷や冷やしたんですけど、大丈夫でした!」
分かってはいた。状況から理解してはいた。
だけどそれを信じたくなくて、確たる証拠がない内は断言を避けて、無意識に目をそらし続けていた。
何故国王陛下の周りと古株の使用人が魅了の影響を強く受けているのか。
近くに術者がいたからに他ならない。
そっか。やっぱり、そうだったのか。
いつの間にか止めていた息をゆっくりと吐き出すと、それと一緒にストンと物事が心の中で落ち着いた。
一度認めてしまえば後は楽だった。
「そうか……。ありがとう」
幼い頃に抱いた願いは、成長してもそのままだった。
この先もずっとそれを胸に抱えたまま、大人になるまでずっと続くと思っていた。
でもそれは、思ったより早く来たのかもしれない。
心の中で燻っていた思いは、煙が風に吹かれて消えて行くかのように跡形もなくなってしまった。
ジェニー嬢と母上を2人同時に捕らえなければ、返り討ちにあう。
慎重に、早急に事を進めなければならない。
「いえいえー!王子の為は俺の為でもありますからね!あと、来週も呼ばれました!」
「そうか」
俺が微笑んで頷くと、セイドリックはふと真顔になった。
そうして真剣に告げる。
「俺を、利用して下さい」
「……は?」
利用、なんて今まで散々してきてるじゃないか。
なんで今更そんな事を、という疑問が音になる前にセイドリックは覚悟を決めたような顔をしてニコリと静かに笑った。
「不貞現場でも、何でも。第一妾妃様を抑える事が出来るのなら俺を不倫相手として拘束して、殺してしまっても構いません」
「……それは」
自分でも思ったより掠れた声が出た。
分かっていたんだ。
「俺は王子の役に立つ為に生きてるんですから」
俺の為なら、命なんか平気で投げ出す奴らだって事を。
でも、俺なりに大事にしたいと常に思ってる。
俺が無理をしてこいつらの命を守っても、セイドリック達は喜ばない。
だから改めて、功を立てた部下を労った。
「よくやった。セイドリック。これで動ける」
自分の実の母親と不倫関係を結んだ部下を。
セイドリックは、心底嬉しそうに俺に微笑んだ。




