入学編
20XX年 春 4月8日 午前7時00分
いつもの様に目覚ましを止め、目を覚ます。今日から高校1年になる俺、天野 光 はどこにでもいる普通の高校生になるはずだった。しかし俺は今、重大な悩みに直面している。
「・・・・・・何だこれ?」
目を覚ました後、顔を洗う為に洗面台に向かい、いざ顔を洗い、顔を拭いた後一瞬鏡を見た。
二度見した。
そこにいるのは俺なのかと疑いを抱いた。
右目の色がおかしい。
ありえない。昨日まで左目と同じ様に黒色の瞳だった。それが今はどうだろうか?そうそれはまるでこの世界に果てしなく続く青空の様に青く澄んだ瞳をしているではないか。
別にカラーコンタクトや、特殊な目薬をさした訳でもない。むしろ俺が訪ねたい、何故こうなったのかを。
「いやいや、ありえないだろこれ!何だこれ?どこの中二病だ!『我の右目は全てを見透かす魔眼なのだ』とか言えばいいのか?マジないから!」
鏡の前で自問自答し、叫びまくる。ちなみに騒いでも誰も何も言わない。俺には兄弟なんて者は存在しないし、親は現在海外に仕事に出ていて、現在この家には俺のみとなっている。
「どうすんだよ?これじゃあ中二病コースまっしぐらじゃねーか!せっかく普通の学園生活が送れると思ったのに」
自慢じゃないが、俺は小学校から中学までそれほど親しい友人は作れていない。唯一親しかったのは小学校5年まで一緒だった幼馴染みの女の子しか記憶にない。小学校から中学まで誰とも会話をせずただ黙々と生きてきた。
そんな俺が今日、高校生になり新しい生活を送ろうとしていたのに、これでは高校でも友人が1人もいないという事になりかねない。それだけは是が非でも避けなければならない。取り敢えずしばらくは眼帯を着けてこの右目を隠す事にした。しかし、そんな自分の姿を鏡で見れば見るほど中二病様に見える自分が少し悲しくなってきている。
いや、そんな事は気にしない方が良い。自分は怪我人だと装えばなんとかなんかもしれない。目にボールが当たって青アザができたとか、本棚から辞書を取ろうとしたら手を滑らして目に落ちてきたとか、考えによっては色々な回避方法がある。
そういう事はきかれた時に対処するとしよう。今は入学式の準備を済ませて、これから高校生活を送る学園に向かうとしよう。
三日月学園
生徒総数 756人。
男女比 男子238人 女子518人。
元女子高だった為に女子が多いこの学園はこの地区ではかなり偏差値の高い学校である。ここならば、中学の俺を知っている者はほとんどいないと踏み、中学の間猛勉強をしてこの学園に入学した。
それなのに・・・・・・
「あれ?ひょっとしてお前、天野 光か?」
突然声をかけられた。一瞬聞き間違いだと思い、そのまま入学式の会場である体育館に向かおうとしたが、声をかけられておいて無視するのは失礼な行為だと思い、仕方なく声の主の方を向くことにした。
「俺だよ!中3の頃同じクラスだった。」
「・・・・・・」
「もしかして覚えてないとか?修学旅行の班も一緒だっつのに⁉︎・・・話した覚えないけど・・・」
覚えていないのかと聞かれても困る。なぜなら俺は中学で誰とも会話をした事がないのだから。彼が俺の事を知っていてくれたのは喜ばしいかぎりだが、あいにくな事に俺は中学のクラスメイトの顔も名前も覚えていない。というか知らない。
「・・・・・・君は?」
名前も知らない相手と会話を弾ませろと言われれば無理がある。取り敢えずここは元クラスメイトだという彼の名前くらいは知っておいた方が良いだろう。
「・・・案の定覚えていないみたいだな。まぁいいや。俺の名前は 月島 照。テルでいいぜ。」
月島 照。身長は俺よりも少し高いぐらいか。俺が165だから170ぐらいかな?身体は見た感じ結構ガッシリしている様だ。
「・・・天野 光だ。俺の事もヒカルでいい。」
「おう!よろしくなヒカル。」
正直俺と同じ中学の奴がこの学園にいるとは思わなかった。この学園は偏差値が高い。俺のいた中学はごく平凡な中学だったからその中学からこの学園に入るのは相応勉強しなければならない。こう言ってはなんだが、テルは勉強面に関しては、不得意なのではないのかと思う。見た目のままだと、スポーツは万能だが、勉強は不得意というのが当てはまる感じだ。