笑って
泣いたり、怒ったり笑ったりできることって素敵なことだと思いませんか?
むかしむかし、あるところの貧しい夫婦の間に元気な女の子が生まれました
女の子は一日中 泣いて 怒って 笑って そして泣いて
夫婦の生活はよりいっそう忙しくなりました
しかし、我が子の無垢な笑顔で頑張ろうと思えるのでした
女の子はすくすく育って活発な子になりました
毎日村の子どもたちと一日中遊びました
女の子は 笑って 笑って 時々泣いて そして笑って
女の子が笑うとみんなもつられて笑いました
ある日、女の子の両親が不慮の事故で突然亡くなりました
女の子は泣きました
泣いて 泣いて 泣いて
そして泣き疲れた女の子は心を閉ざしてしまいました
女の子は家から一歩も外に出なくなりました
友達が遊ぼと誘いにきても決して外に出てきません
女の子は 泣きも 怒りも そして笑いもしなくなりました
友達が一人、二人といなくなっていきました
ある男の子だけは毎日、女の子の家にきました
屈託のない話を返事のない戸に話すのです
男の子は 笑って 笑って 笑って そして笑って
女の子は何も答えません
男の子は、また明日ねと言って帰って行くのです
次の日も男の子がやってきました
女の子だんだん鬱陶しくなってきました
ほっといてよ ほっといてよ ほっといてよ……
女の子は心の中で何度も呟きました。
男の子はいつものように話しをして笑います
ついに女の子は戸を開けて
ほっといてよ!
と叫びました
小さな村に女の子の声が響きわたりました
女の子は久しぶりに感情を外に出したのです
男の子はにこっと笑って
遊ぼ!
と言いました
女の子の声を聞きつけた他の友達が駆け寄ってきました
みんなは 泣いて 笑って 泣いて 笑いました
女の子は 泣いて 泣いて 泣きました
悲しみの涙ではありません
嬉し涙です
そして女の子は涙を拭いて
笑いました
今日も村から笑い声が聞こえてきます
その大きな笑い声は
天国にいる女の子の両親にも聞こえていることでしょう