死刑囚
何だこれは! 小児性愛者どころか、快楽殺人者じゃないか。何よりも、幼女を「お姉さま」と呼ぶのがものすごく気持ち悪い。少なくとも、わたしはこんなことをしたいと思ったことはおろか、こんなことを思い描いたことさえもない。これがわたしの潜在意識かどうかなんてどうでもいい。だいたい、性的少数者なんかの面倒を、どうしてわたしが見なければならないのか。わたしは「Qシステム」の研究を取りやめ、二度とさわらないことにした。
「どうしてもやらなければならないんですか?」
「当たり前だ」
おれの目の前にいるのは、白衣を着た中年女性。髪は栗色だが、肌の色を見ると白人かもしれない。もっともおれは、十三歳以上の女というものに全く興味がないため、中年というのも白人というのも間違いかもしれない。
「おまえは、小さな女の子ばかり狙って何人も殺してきた、クズと呼んだらクズに謝らなければならないような奴だ。おまえは日本の裁判所で死刑判決を受けた。それがなぜ生きていられるか。公安に拾われたからだ。公安のモルモットになることと引き換えに、一か月後に釈放されることになったんだ。ということは、一か月の間に死んだとしても文句は言えないっていうことだ。公安もおまえを可哀そうに思って拾ったわけじゃない。普通の人間にはやらせられないような危険な仕事をさせるためだ。それがいやなら、刑務所にもどって毎日執行の日におびえて暮らすんだな。おまえは自由になったわけではない。おまえは死刑囚のままなんだ! わかったらさっさとQシステムにかかれ!」
顔のイメージとは裏腹な流ちょうな日本語で怒鳴られた。
もう一度その機械を見ると、外壁とでも言うのか、座席の周りを濃い青のカバーが覆っている。窓から中を覗いてみると、液晶らしいモニターがひとつ。そのまわりを大量のスイッチが囲んでいる。禍々しい、というよりわけのわからない機械としか言いようがない。
いきなり、やたらごつい感じの男が二人やってきて、おれの両腕をつかんで連行し、機械の中の座席に無理やり座らされた。両手首をひじ掛けに、胴体を背もたれに拘束された。
耳に巨大なヘッドホンがかぶせられる。ヘッドホンから女の声が聞こえた。
「そのへんのスイッチにさわるんじゃないぞ」
手を拘束されているからやりようがないんだが。
「もっとも、システムは外から遠隔操作されている。そこにあるスイッチはすべて死んでいる。何をいじろうが、システムに干渉することはできない」
だったら、「さわるな」とか言わなくてもいいのに。
「おまえがさわったものなんか、わたしは二度とさわりたくない!」
心の中だけで言ったのに、なぜか返答が来た。
「行くぞ…。10、9、8、7、6、5、4、3、フタ、ヒト、イマ!」




