R報告書
警告しましたからね?
R博士は警察庁公安部に十数年勤務した有能な研究員である。
その彼女がある報告書を公安研究部に残して失踪したことは、R博士をよく知る同僚たちだけでなく、公安本部にも大きな衝撃を与えた。
まずその報告書を、彼女をよく知るN博士が調査した。
自宅で首を吊ったN博士が発見された。
危機感を持った公安委員会は、ある受刑者にその報告書を見せた。司法取引によって死刑を免れさせた代償である。受刑者は人権活動家のテロリストであり、大企業の経営者ばかりを殺害してきた。逮捕拘束され死刑判決を受けた後、公安委員会に使われるようになったが、公安の仕事が終わって釈放されたらテロを再開すると豪語していた。報告書を見た後、受刑者は発狂した。
この結果を受けた公安は、「R報告書」を公安委員長の許可がなければ職員といえども、誰も接近できないようにした。
もっとも、それに関わった者の一人が失踪、一人が自殺、一人が発狂した報告書に近づこうとする者など誰もいなかったため、「R報告書」は公安の金庫の隅で忘れ去られ、その形状さえも誰も覚えていない、公安の膨大なファイルの一ページに、名称のみが記録されているだけの「もの」というより「概念」になった。
そのまま誰にも知られず、公安が存続する限り誰の眼にも触れないはずの「R報告書」だったが、これに不可思議な運命が訪れる。
ある、公安の元職員が、かつて委員会付きだったスキルを活かして、「R報告書」に接触したのだ。
元職員は、公安を辞めた後起業したが、二度の不渡りを出して倒産、自宅を担保にして銀行に借金をしていたため住む場所も無くなり、公安時代から連れ添ってきた妻は子どもを連れて彼の元を去った。
家も家族も信用も失い、絶望した元職員だが、自殺する勇気も無かった。
そこで「R報告書」を見れば死ねるのではないかと思い、読んでみたということである。
しかし元職員は、今も元気だ。
自己破産の手続きを終え、生活保護を受けながら、アルバイトとして働き、貧しいながらものんびり生きているということである。
そこである公安職員が委員会の命を受け、元職員が公安の金庫にあった「R報告書」をコピーした(オリジナルは今も財団の金庫にある)方法を問わないことを条件に、報告書の内容を元職員からヒアリングした。
「R報告書」を直接見ることなく内容を調査できる唯一の方法だからである。
以下に述べるのは、そのヒアリングの内容である。
このエピソードでは、別に不快ではなかったかもしれません。しかし次は本当にいやな気持になります。ご注意ください。




