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第57話 漆黒のうさぎ

 目の前に現れた、手の平サイズの小さな『漆黒のうさぎ』は、ピョンピョン跳ねながらクリスの前へ来て丁寧に頭を下げた。


『ありがとう、主様(あるじさま)。これからは良き眷属となれる様、尽力すると誓います』


「誓わなくても良いよ、ラビィ。ボクはクリス。これからよろしくね。アトラ、コトラ、色々教えてあげてね」


 しゃがんだクリスは左の手の平にラビィを乗せ、右の手で撫でてあげていた。様子を見ていたアトラが、クリスの肩からスルスルと降りて来て、ラビィに挨拶をしている。2匹は同じぐらいのサイズに見えるな。


「クリス、このうさぎの言葉が分かるのかい?もしかして精霊なのかな?」


 ラウルが驚いた顔をしながら聞いて来たな。言葉は、我や精霊たちには分かるが、人間には無理なのだろう。


「ラビィは精霊じゃ無いよ。あ、ボクは契約者だから通じるのかな?ラビィ、人型に()()()よね?」


()


 大きく頷いたラビィは人型を取って、顔をあげた。それを見た皆が驚き、どよめいたな。


『全体的に黒いが……間違い無くエルフだな?』


「その様ですね。まさか、隣国の森の?」


「はい、賢者様。儂は※☆〇☆※※です」


 相変わらず、エルフの名前は聞き取れないな。賢者のエルフの知り合いらしい。であれば、クリスの近くに置いても大丈夫だろう。


「あぁ!あの優しき※☆〇☆※※なのですね!300年近く前に行方が分からなくなり、心配していたのですよ!無事で良かった!森のあの子に急ぎ教えてあげなければ」


「賢者様!儂から会いに行く!……心配かけたと分かっとるし」


「そうですか、分かりました。しかし、そなたは最初からそんな話し方でしたか?」


 確かに。エルフの使う言葉は、その国の綺麗な標準語である事が多いのだがな。


「あー、あの者たちの感情が強過ぎて、儂にも移ってしもぉたのです。敬語がおかしくなりまする」


「なるほど……しかし、クリス様の眷属になるというのであれば、きちんとした言葉を使わなければなりませんね」


 我も人の事は言えないが、クリスの汚点となるのは困るからな。我も辺境伯に来てから、人型で過ごす時の礼儀作法やマナーを随分習ったぞ。


「ううっ……頑張ります」


「別に良いのに。ボクは気にしないよ?言葉が気になるなら、うさぎの姿で居ても良いし。ボクとレオンと精霊たちは繋がってるから、恐らくラビィの言葉も理解出来るんじゃないかな?」


 下を向いて悩んでいたラビィは考えがまとまったのか、クリスの瞳をしっかり見つめながらハッキリと意思を伝えた。


「主様、神獣殿が人型で主様の隣に立つのであれば、儂……わたしもちゃんと頑張る。また教会に戻るかも知れんし、エルフとして恥ずかしく無い生き方をする」


「そっか。じゃあ、頑張ってね!ラビィの好きにして良いからね」


「はい、主様」


 ラビィは少し恥ずかしそうだったが、クリスと話が出来て嬉しい様だ。クリスと契約した事で、ラビィの気持ちも少しだが分かる様になって来たぞ。もう少し馴染まなければアトラ達と同じ様には意思の疎通が取れないだろうがな。


「ふふふ、それにしても『ラビィ』って、可愛らしい名前だね」


「人型の見た目が、ヤンチャな男の子だものね」


 ん?人間には男の子に見えるのか?ちゃんと教えておいた方が良いだろうな。今後は特に、同性の子が近くにいる事で、何かと助かる事も多いだろう。


『ん?ラビィは女の子だぞ?』


「ええ、そうですよ。森のエルフの、末の妹ですね」


「「「ええ――――――!!!」」」


「リフレッシュ!」


 クリスがラビィを魔法で綺麗にしてやると、ラビィはピョンピョン跳ねて喜んでいる。元から行動がうさぎっぽいんだな?


「ごめんね、ラビィ()()()。私はクリスの双子の兄でラウル。こっちはラウラだよ」


「本当にごめんね!」


「大丈夫、わたし、気にしない」


「「ありがとう!」」


 ラビィに許して貰えて、ホッとしている双子も可愛いな。ちゃんと非を認めて謝れるのは、爺さん達の教育が良かったのだろう。双子もクリスも素直で良い子だ。


「そう言えば、体も小さくなってますよね?最後に教会で会った時の見た目は、人間で言えば15歳ぐらいの大きさで成長が止まっていた記憶があります。今は、レオン殿と同じくらいでしょうか」


「そうです。儂……わたしは、教会のエルフとして、人々の苦しみや悲しみを聞き、少しでも安らぎを与えるって職についてたんだ……その仕事は神聖力を沢山使う。だから元々、他のエルフより成長が遅かったんだ。今回、主様の力を超えなければと無茶をしたから、体が同じ大きさを保てなくなったんだと思う」


「なるほど……聞いているうちに悩みの内容が、怨みつらみばかりになり、それを頑張って受け止めていたそなたは、彼らの心に飲まれてしまったのでしょう。真面目な性格が裏目に出てしまったのですね」


面目(めんぼく)無い……」


 シュンとして下を向いてしまったラビィの手を、クリスが優しく握って、ラビィの瞳を見ながら言った。


「ラビィは、お仕事を頑張ってたから取り込まれちゃったんでしょう?それって、お仕事をお願いする側が過剰な仕事をさせてたから悪いんじゃ無いの?ラビィは悪く無いと思う」


 爺さん達が、ギョッとした顔になったな。そりゃそうか。エルフに仕事を頼む事が出来るのは、『神』だけなのだからな。クククッ。


『ククク、そうだな。クリスの言う通りだ。ラビィは教会の仕事を1人でやっていたと言う事だろう?今後は、その仕事に就いている者が、孤独に陥らない様にすべきだと、我が神に進言しておこうな。クククッ』


「確かにクリス様のおっしゃる通りですね……私どもは言われるがままに仕事を(こな)しているだけで、神と話し合って決める訳ではありません。神の言う事が絶対なのであれば、今回の事は神の監督不行届って事ですものね」


「お、恐れ多い事で御座います……どうか穏便に……」


 爺さんがビビっている様だな?クリスが神に対して文句を言ったと焦っているのだろう。それを我々が肯定したから、祖父として孫を守りたいのだろうな。


『爺さん、前にも言ったかも知れんが、クリスは我々より遥かに神に近い存在なのだ。神が愛し子にしか持たせない力をクリスは持っているし、これくらいの戯言を許さない神では無いから大丈夫だ。それより、皇帝の下へ行かなくて良いのか?』


「はっ!急ぎ、報告に向かわなければ!きっと、ジョエルも心配しているはずです」


 外はもう暗くなっていた。これから全てを説明するのであれば、きっと日を跨ぐ事になるだろう。


『婆さんにも連絡してやってくれ。我が、明日の昼食を楽しみにしていると伝えてくれるか?』


「かしこまりました、レオン殿。これから陛下の執務室に移動する事は可能ですか?」


『問題無いが、直接行って良いのか?』


「はい、お願いします。陛下の執務室は、入る事の出来る人間が限られておりますし、辺境伯に直接連絡が取れる様になっているのです」


『ほぉー。まぁ、聞かなかった事にしておこう。賢者のエルフは当然来るだろうが、ラビィはどうするんだ?』


「わたしも行く。ちゃんと謝る……」


『そうか。誠心誠意、謝れば分かってくれるだろう。さて、皆を移動させるから、近くの者と手を取り合ってくれ』


 我は、皆が手を取り合った事を確認してから、皇帝陛下の執務室に転移したのだった。

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