第三話 (3日目) 「学校への朝」
◯人物紹介
マルクス•アイレス
主人公を1ヶ月後、亡き者にする予定の死神
町田亜威留
主人公
無口。多少病んでいる。
明日咲
ずっと喋っている。
そうだった。
計画を立てたり、遂行したりする以前の問題だった。
僕は、僕に勇気がないということをすっかり忘れてしまっていた様だ。
何度も、何度でも言うが、僕は実に馬鹿だった。
学校に行こうと考えるのは簡単だが、いざ、行くとなると脚が思う様に動かない。
どうしよう。
僕を見捨てなかったマルクスや、感謝しても仕切れない母を、今更裏切るわけにはいかないし、裏切りたくもない。
然し乍ら、まだ6時で時間は沢山あるのだから、取り敢えず制服に着替えてから考えようっと。
うーむ。
何も思いつかない。
「君の、お母さんに、連れて行ってもらったらどうだ。」
マルクスだ。
それもいい案かもしれない。
いや、他の学校の知り合いに笑われておしまいだ。
また、母にも仕事がある。迷惑だろう。
あと、自分で行かないと意味が無い気もする。
「いい心構えだな。」
変に見栄を張っているだけだが、、、、、、
「まあ、実行出来なかったらその心構えも、他の“人間”
には見えないから、無駄になってしまう訳だがな。」
わかっている。
わかっているんだ。そんな事。
そうこうするうちに着替え終わってしまった。
どうしようか。
マルクスは実体がない。それ故に、僕を家の外まで引っ張り出して貰うのは不可能だろう。
「出来るぞ。俺様を何だと思っているんだ。」
で、きるのか?!
「あたり前◯のクラッカー!、、、、、、なんてな。」
それと、、、、、、、自転車。
自転車通学可の学校で助かった。
これだ。これならいける。
............気がする。
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1時間後
さっき立てた計画はこうだ。
まず僕は、お母さんが仕事に行ったことを確認する。
次にマルクスが、家の外に人が居ないかどうか確認する。
そして、立ちすくんで居る僕を引っ張り出す。
更に、僕を自転車に乗せる。
そのままその調子でマルクスに押されながら自転車で学校へ。
自転車でこけたとでも言えば、もし今日学校に僕が辿り着けず帰ってきてしまったとしてもお母さんは何も言ってこないだろう。そう踏んだ上で実行する。勿論、辿り着きたいが............
自転車に乗るところまではどうにかなった。
僕はそこから20分間進む事ができなかった。
まだ6月だと言うのに、夏の追い討ちをかけるような容赦なくガンガン照った日差しは僕を汗でビチャビチャにしていった。
そして僕は決心した。
僕を散々な目に合わせた“友達擬”に仕返しを喰らわしてやるのだと。
決意の油がさされ、動く様になったペダルをくるりと重く踏み締め、遅れをとったスタートを切った。
僕なりの形で。
今の僕が頑張れるMAXの出力で。
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「やっと進んだのか。」
マルクスは僕の漕いでいる自転車の上空に、ふわふわと漂い、僕にちょくちょく話しかけてくる。
声に出して答えてしまうと、周りの人から変な人だと思われてしまうだろうから心の中で答えることとする。最も、周りに人が居なくても僕は普段声を出さないが。
今のうちは、特に変わったこともなく、進んでいた。
............と、思っていた。
数年振りに見る交差点。
と、懐かしんで居るのも束の間、赤信号だった筈の坂のある方向から、何かが超高速で、吹っ飛んできている。
僕は咄嗟に逃げることはできず、マルクスが僕を後ろに引っ張ることによって、怪我をせずに済んだ。
............同じ、制服。
坂から転んて吹っ飛んできた自転車に乗った少女の胸のピンを見た。同じ学年。でも何故だろうか。僕は一度もその顔を見た事がなかった。
「ごめんね。ごめんね。」
「何処か怪我してない?」
「同じ学校!?」
「いやぁ、丁度一緒に学校に行ってくれる人を探してたんだよ。転校初日で心細かったんだよね。」
「あんなところに坂があったなんて............」
............転校生?!だから知らないのか。
いきなり吹っ飛んできて、人のことをペタペタ触ったあげく、一緒に学校に行けとはなんて都合のいい奴なんだ。
早口で1人でペチャクチャ喋るわ、名乗らないわ、本当に何がしたいんだ、この女。
これが僕の彼女に対する第一印象であった。
「ふぇ?何。」
あっ。つい声に出して喋ってしまった。
「あぁー。な、名前ね!」
「こほん。私の名前は、明日咲。そっちは?」
「町dあ、あ、あ、威、留」
昨日イメージトレーニングしておけばよかった。
ガチで喋られない。
「ごめんね。本当に、、、、、、」
「あいる君でいいのかな?」
「あ、、、、、、う、はい」
人に名前で呼ばれるのは照れ臭いな。
「奥がましいとは思うんだけど、一緒に学校、行ってくれないかな。あ、なにか話したりする必要はないから、さ。」
僕はこの少女は何故かわからないが、初対面なのに信じていいと思えた。
彼女と一緒にいると気持ちが楽な気がする。
こうして僕らは共に学校まで行くことになった。
上手くかからなかったと思っていたスタートアクセルも割と、上手く行っていたのかもしれない。




