第二六話 (8日目) 「3秒後の未来で」
お久しぶりでございます、桜井です。
復活しました。
ぜひ、最後までお付き合いくださると幸いです。
いつものように。
未来は簡単に、いとも呆気なくやってくるものだ。
これが、来なくなるというイレギュラーを作るというのは、平和慣れし過ぎた僕には想像できない。
どうせ、僕一人、この世に居なくたって、殆ど全てと言っても過言でないような人々が困りやしない。
然し、ワクワクするし、待ち遠しい。
マルクスは、僕がなんやなんやと少しだけ、思考していた3秒間も経たないうちに僕の顔から興味を逸らし、僕に向けての話(……多分な。)をし始めた。
明日さんの家にいたら、僕が自由に相槌をつけないことを忘れてでもいるのだろうか。
家の誰かにバレたら大変なことなのではないだろうか?
「あれは、“生神”だ、少年。」
僕が、僕に向けて彼が話しているのかわからないみたいな話(考え)様で接していたことがバレたのか。
彼は初期のデフォルト=語尾に少年
と呼ぶことをしたみたいだ。
でも今はそんなことどうだっていいのである。
いやまさか、さっき明日さんが____
「そうだ。あれは、あの日俺様達が見た生神。ミュランディーア・マトロッツァ。」
「今度はあいつに取り入ったのか。」
そう言って死神は生神に向けてか、自分の盲点だったところをつかれたからか。
少なくとも僕には聞こえる大きさで舌打ちをしていた。
眉間には(いやそもそも眉なんてないけども)シワが寄っている様子で、なんとも............
そして、死神に、(そしてあんな天使の輪なんかつけたぬいぐるみに)舌という部位があることの方に僕は意識が一度吹っ飛んだが、それも今は気にしている場合ではなかった。
あの日僕等に攻撃を仕掛けてきたヤツが、今度は彼女に近づいている。
今すぐにでも助けに行かなければ......
「いや、辞めておけ。
どうせ、又近いうちに対面することになるだろうがな。」
そう言った彼の背中は、すでに不可解な光に包まれた。
そして不可解ではなくなった。
(どうせ行きと同じ仕掛けだったのだろう。)
僕たちは町田家に帰って来ていた。
というか、あの円の中に帰ってきた。
まだ何もわかっていないじゃないかと、なぜこんなに早く帰ってきてしまったんだと、僕は喚くが彼は何やら悩んでいる様子だ。
僕の“煩い”は気に求めず、僕の斜め上=上空をふよふよ漂っている。
オロオロと辺りを見回すと、僕の姿が視界に入ったのか、シュッという音すら立てずにせっかちに消えてしまった。
声をかけるが、返答はない。
仕方ないから、1人で考えることにしようか。
......いや、今まで1人で考察することが成功していた試しがどこに、いつあったのであろうか。
数分も経たないうちになんの答えにも辿り着けず、ベッドにダイブする。
眠くなって来た。
でもやっぱり、机に向かう。
途中で、何やら紙の塊で足を滑らす。
「痛っ」
その辺に転がしていたシャープなペンシルが僕の足を穿つ(流石に過剰表現である。)。
靴下はすぐどっかにいってしまうから、履いていなかったことで、不幸のレベルが上がってしまった。
ここ数年は殆ど外に出ていなかったし、転んでしまうほど焦って行動していることもなかったような身。
自分の血液を久しぶりに見た気がする。
というかそうであろう。
なんだか、笑ってしまう。
まあ良い。
外界、窓から木漏れる太陽光に照らされたそれと、転がっていた物らを見比べる。
生き物と生を受けていないもの。
僕は、あとちょっとだけ、生き物だ。
そしてあと少しで、終わる。
死に時は決まっている。
但、只其れを待つだけではつまらない。
どうせそうと決まれば、僕は面倒に顔を突っ込む。
関係ないんだもの。
僕の今後に......
あの、ぬいぐるみ野郎はじゃあ突っ込む必要が無いじゃないかと、どうせ変わらないのだからと言ってくるが、無視だ。無視!!
好き放題しよう。
そう、なんでも良いんだ。
できてしまった1ヶ月を潰す暇つぶしがあればそれで良い。
世界が滅茶苦茶になれば、とても楽しいことだろう。
面白い。
勇気はいらない。
気楽に孤独に、それが今の僕が持てる最大限度のモットーだから。
その辺に落ちていた裏紙のプリントを手に、机に向かう。
亡き父の万年筆を納戸から取り出して汚い字を紙に染み込ませる。
シャープペンシルでも使えばよかったものをと思われて当然だが、これは僕“達”が解決しなければならない問題だった。
いや、ただ格好つけたかっただけかもしれないな。
まあ良い。
今日も終盤。
動き出した歯車はもう、誰にも止められやしない。
少なからず人間には............
太陽の橙が斜光となって窓を通り抜ける様子。
あぁ、雨が止んだみたいだ。
どうにも僕にはそれが、鮮血の宣誓に見えて仕方がなかった。




