第一話 (1日目) 「異常な朝」
“天使”だとぉ?!
その“天使”は僕の部屋の窓の淵に腰掛け、晴れてきた空の太陽光をキラキラと反射させている。
「俺様は、天、使、なんかじゃね〜よぉ。まさか、こんな間違いをする奴がいるとはな」
「俺様は、悪魔!いや間違えた、、、、、、取り消しで」
「こほん、本当は…………」
僕はごくりと唾を呑み込んだ
「死神。」
ええと、、、、、、どう言うことだ。
状況が呑み込めない。
「はぁ。何度言ったらわかるんだ少年は。」
「君は、いんや町田亜威留は、『死にたい』と言う言葉を1ミリオン回言った。だから、俺様直々に死なせてやるって言っているんだ。感謝しろ。わかったか。」
っていわれてもな、わからない。
何時もと同じ朝が来たのではなかったのか?
「本当に君は無口で馬鹿だ。実に哀れだよ。哀れって何か俺様はわからんけどな。」
つまり、ここに居る天使の様な死神は僕をこの世から一掃してくれると言うのか。
こんな素晴らしい提案に裏は無いのだろうか。
「ねぇよ。」
なら、今直ぐにでも、、、、、、
「無理だな。死後の偽装工作を考えなくちゃならねぇし。第一、天界では魂の処理が追いついていないんだ。最近、死にたい奴が多くてな。仕事が増えれば、残業手当が出るので、俺ら死神にとっちゃぁいい話なんだがな。」
死神なのに天界。
天界って、ホラ、やっぱり天使とか、そういうのがいるのではないのか。
…………まあ、それはともかく、不思議な話だ。
夢だろうか。
「何度言わせるんだ。夢じゃねぇ。てな訳で、1カ月後ってのはどうだ。」
「良ければ、この契約書に………………」
「勿論!」
「はや過ぎだろ。
君の生死に関わるんだぞ。
他のユーザーはもっと考えていたのに…………君はもっと考えなくていいのか?」
「おい、何時もの無口な少年はどこに置いていったんだよ。」
もう此処から消えられるなら、僕は死神でも何でもよかった。
「ああ、もういい、わかったよ。それじゃぁ、まずはお互いに自己紹介と行こうか。
俺様は1カ月此処に居る訳だしな。」
えぇえ!?
なdんっfんっrーあ?
「俺様はマルクス•アイレス。
知っての通り“死神”さ。
因みに俺様は本来この世にいてはならない存在だからな、君以外の人間に俺様は見えない。
安心したまえ。」
まあ、でもよく考えたら、人に会う機会なんてないからいいんだけど。
(でもウザいな…………)
誰のことを言ってるんだーー!とマルクスの小さな手でポコスカと叩かれるが、髪に触れてポスポスいうだけだ。
父は僕が物心つく前に亡くなっているし、僕が引き篭もっているから、母とも殆ど話す機会がない。
更に、このマルクスとか言う小さい奴は、僕が心の中で考えただけで勝手に喋ってくれる。
まあ、後1カ月の暇潰しには丁度良いだろう。
「俺様を何だと思っているんだ少年!
後な、もう15だろ。
喋れないのか!?」
「ぼ、、、、、、僕は、まだ、14で、15になる前に死ぬんだ。だから、15、には、なら、ない。」
「あぁ、そうですかい。」
マルクスはケッと舌打ちをする。
シュッと言う音を立てて何かが出てきた。
例えるのならそう、本だな。
突然、ズタズタに破れて傷がついている本を何処からか取り出した。
年季が入っているのか。
本とは、こんなにボロボロになる物なのだろうか。
本…………とは?
「あった、あった。」
ん?
「君の誕生日は、7月2日。合ってるだろ。」
合っているだろ、と聞かれても何て答えたら良いのか困る。
合っているんだけれども。
「俺様と君は今日6月1日の9:29に契約を交わした。つまり君は、7月1日にこの世から消える事となる。そうか、誕生日は今年もう来ないんだな。」
僕は自分の、いや、町田亜威留の次の誕生日が来ないことなんてどうでも良い。
だから契約したんだ。
此処に僕は居られない。
然し、勇気もない。だからこうするしかなかったんだ。
「んあぁ、後な、少年。」
何だろうか。
もう疲れた。
寝てしまいたい。
太陽が雲に隠れ、暗くなってきた。
僕に寝ろとでも言っているようだ。
「待て、もう一つ、この俺様の持っている本について言いたい事があるんだ。
どうしたら、此処までズタボロになるんだ。
魂は肉体にくっ付いて、死ぬまで離れないが、此処まで身体だけではなく魂が傷つくケースは今まで死神を“数1000年”やってきたが、見た事がない。どう言う事なんだ。知ってるんなら吐け。
嘘は心の読める俺様なら御未透視だからな。」
本当に、何言っているんだ。
コイツは。
というか、本って何なんだ。
「君知らなかったのか?!嘘だろ、、、、、、」
「あぁ、後、本っていうのは、君の経歴が示されているんだ。
君の魂の前世だって載っている。」
前世、か。興味はある。
面白そうだ。知りたい、かもしれない。
「君が何かに興味関心を持つなんて驚いた。」
………………なら、
「が、然し、教える事はできない。」
なら、言わなければよかったのに。
と僕は思った。
「そして、この本の表紙は、君の中に宿る、魂の状態を物理的に死神や、天使、天王が処理しやすい様に物理的に表した物なんだ。」
「わかったか。つまりは君の魂は今、とても危険な状態にある、という事だ。」
何となくはわかったような気はするが。
まあ、僕には対して関係がない話だ。
何故ならば僕は、1ヶ月後にはこの世からさる事になるのだ。
僕の後世の人には少々申し訳ないが、好き勝手させてもらおうと思う。
この人生は僕のものだ。誰かに邪魔をされたとしても、僕の中では常に僕が中心だ。
自己中?
そんな事は知らない。
だから、どの様な形で僕がこの世から居なくなったとしても良いはずだ。
もう、他人を愛せないのだから。
もう、他人を信じられないのだから。
もう、僕には何も無いのだから。
いいや、あるかもしれない。
今僕は、一筋の黒い暗幕のような光、マルクスと言う希望を得た。
……………それだけだ。
これで、コイツにも裏切られたら、もう僕は何も出来ないだろう。
でも僕は、考えることをやめた。
信じてみようと思った。
コイツと契約したのは、僕のただの気紛れだった。
そんな気紛れが僕の1ヶ月を変え、更には世界の彩度も明度でさえもが変わろうものとはこの時の町田亜威留は知りもしなかった。
いや、思いも、考えもしなかったのだ。




