第二四話 (8日目) 「真っ直ぐに見つめて」
読んでいる人はいないと思いますが、(人じゃなくてもだが。)お久しぶりです。
ずっと書き渋っていたストーリーの続きです。
“探らねば......”
そうは思うものの、僕はどんだけ強がっていたって馬鹿なのに変わりは無いのだから、別に良い考えが降って来たりするわけもない。
何も思い浮かばないうちに、ただ雰囲気でつけておいたローソクがダラダラと溶け出る。
取り敢えず僕は誰もいないキッチンに行く。
母親は、今日平日は仕事で常にいない。
だから、本当にこの家には僕しかいない。
そんなことは兎も角、僕は母親が引き出しの奥に隠していたグミを手に取って、自室に戻る。
まあ、バレたとしても、そうとやかくは言われないだろうと踏み、何事もなかったかのように綺麗さっぱり全て覚えない。
いつも通り、平常運転である。
が、しかし、此処まで呑気にやってられるのかと言えばそんな事はなく時は移ろい鬱ろい、映ろう窓には水滴がついている。
綺麗だ......。
そう。
流暢な事は言えない。
これでは外に出向いて調査もできない。
殺風景な僕の部屋からケータイを探し当てるのには苦労しない。
(それもこれもウェルトが勝手に僕の部屋に入って片付け始めたからなんだけど。隠してたもん全部捨てられたし。)
......えっと、それにしても、やっぱり酷ない?
僕のこのいらん人生の中でも一二を争う大切なものなんだが。
まあそんな事はさて置き、今朝から今日終わりまで、指を動かす。
雨、すぐに止んでくれると良いんだけど。
ちょっとばかし願いを込めて地図上で僕の家の位置を眺めながら時間をずらす。
生憎。
ダメか......
「そりゃそうだろ!! こーんな豪雨w」
「この世界に来てから精々数年の俺様でもわかるぞ!」
一縷の望みにでも賭けていた僕は、馬鹿だったようだ。
嗚呼。
やめだ、辞め。
上着を羽織り始める僕を、マルクスがまじまじと見つめる。
「はぁあ?!このずぶ濡れ確定の雨の中、出掛けんのか?」
んあ?
あぁ。まあ、雨が降ってようと数日寝込むだけだろうな。
「おい。お前が風邪引いてると俺の仕事が増える。」
体調崩すのは僕なんだから別にいいだろ。
人様の生活に口出しするなよ。
僕の人生は……僕のものだし、お前に物申される必要も、執拗に止められる義理もあってないようなものだろ。
沈黙の夏。
海の波打つ音。
木々のざわめき。
雲の静けさ。
「俺様が看びょ............いや。兎に角、仕事が増えんだよ!」
「もう知らんわ!」
そんな出鱈目なことを吐き捨てたマルクスは、くるっと姿を消す。
今の間は何だったのだろうか……まあいい。
くだらない思考時間が一番無駄だと踏み、僕は次の行動に身を置くこととした。
ドアの鍵を持ってスリッパから外履に履き替える。
マルクスがいなくたって僕は大丈夫だ。
今までだって、そうしてきたじゃないか。
僕は玄関の扉を前に押す。
と、ほぼ同時にマルクスが扉を手前に引く。
2人の(1人と1神)の小さな決戦の末、独りの1人は安全地帯=家の中 へと弾き返される。
なんで止めるかな......
止めるんだったらどうにかしろよ!
......このダメ天使。
「誰が天使だ、この野郎!」
「俺様は、なんでもできちゃう正真正銘死神だって、何度言ったらわかるんだ。少年!」
いつもの調子でそう吐き捨てるように言うマルクスを横目に、僕は期待の眼差しを向ける。
今の言葉を聞いて利用しない手はなかろう。
......今、マルクスはなんでもできると言ったのだ。
「それにしても......悪知恵が働く奴だ......。」
彼(死神にこの代名詞を使う事は果たして正しいのだろうかとも思う)は何か口籠った後、何かを吹っ切ったように口を動かす。(実際には口は動かさず、脳波を使用して言葉を僕だけに聞こえるように伝達しているわけだが。)
「んあぁ!もういい。」
「手伝やあいいんだろ!」
僕は、ここまで一人間の思惑通り動いてくれる死神が存在していて良いものかと思うのだが、それはともかく。
「じゃあ、宜しく......」
「自分に好都合な時にだけ声を出して喋り始めるの、辞めろよな。ハハ......」
そう言いつつも、マルクスは何やら作業を始める。
悪魔だろうが天使だろうが、本当に死神であったとしても味方についている間は楽だと思う。
将棋じゃなくて、チェスであればなお良いと思うが、まあ、敵の手駒にされないうちにとっとと人生を終わらせて仕舞えば良い。
......ただそれだけだ。
そう思うと気が楽だな、なんて思っていたら、マルクスの準備ができていたようだ。
何やら怪しい円の中に石ころが一つ転がっていて、魔法陣のつもりでもあるのであろうか。
......もっといいデザインがあっただろうな。
残念がる僕を白けた顔つきで睨むマルクス。
「行くぞ。」
僕は無言で首を縦に振ると(縦に振ったつもりなのだがマルクスは満足していない様子で、もっと感謝をしろ、少年!とほざいているのは気にしないでおこうではないか。)彼の指示通りに石ころの近く、円の中に身を納める。
マルクスの体が小さいから、それの為に僕は窮屈な円に足を踏み入れる。
僕がいるのだからもう少しくらい大きいものを使えばいいのに、とか思っているとまた、マルクスはいらんことをむしゃくしゃするという様子でいい始まる。
「俺様だって普段はそうしているんだぜ?媒介物にできそうなのが、お前の部屋の中にこんくらいしかねぇんだよ。」
そういえば、この小石は何処かで見たことがある。
小さい時の話だが、大切にしているものかもしれない。
まあ、今となっちゃぁ、僕にとってそれはただの石ころにすぎないのだが。
片付け名人のウェルトへの怨言を呟く、マルクスと僕は小さな円の小さな光に包まれる。
ほんのりと温かみを感じたような気がした。




