第二三話 (8日目) 「調べの読み違い」
遅くなりましたが、神話……新話です。
ペースが落ちていて申し訳ないですが、宜しくお願いします。
はっ。
僕は暑くて暑い、布団の中から一刻も争う様に素早く這い出し、壁に掛かった時計の針を見る。
2時半だ。
早く起きすぎたのだろうか。
しかしながら、窓から斜陽がキラキラと輝くので、今は昼なのだと察した。
別に寝過ごした訳じゃないし......。
「いや、少年。なーに寝ぼけたこったぁ言ってるんだ。」
マルクスがケラケラそう言って笑う。
...............?!
僕が昨晩セットしておいた目覚まし時計を勝手に止めたのか。
僕は深く、溜め息を吐く。
死神は死を司る“神”なんだろ?
天使じゃないんだよなあ?
こんな勝手な行動が許されるのかよ。
(ウェルトに言いつけるぞ。)
小学生みたいな事を言っていると言う自覚はあったのだが、マルクスはどうせ子供みたいなものだから、こんなんでも効くだろうと言う算段である。
「そりゃぁー、困った困った」
「何せ彼“が許可を下ろしたんだぜ?」
は?
目が一度瞬く間、理解が及ばなかった僕は、追っていた敵を見失った探偵みたく、呆然と立ち尽くした。
おいおいオイ。
神たるものが、2人して僕を起こさまいという企みか?
目論見か?
2人して、僕を止めようとしやがって。
まあ、こんな死神“様“のお遊びには付き合ってられんのだ。
____何故なら今日は、調べなければならない事がある。
…………のだが。
いい方法が見つからない。
ウンウン唸る僕を横目にマルクスは僕の本棚を奥の方まで漁って、とある雑誌を読んでいる。
そしてニヤケている。
……こんなやつなんて本当にどうだって良いのだが。
それは兎も角。
そうだ!
捜索だ。
......ついでに、学校で出された美術の“創作”課題が頭をよぎったが、まあ今は無視することとしようではないか。
昨日のことを探るために。
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その数日前。
咲の部屋で…………
「彼を……助けられるの?!」
活発そうな少女の、そう叫ぶ声が、部屋に響き渡った。
私は知ってしまったのだ。
あいる君が悪い悪魔に騙されて、6月の終わりまでに不条理な死を迎えるだけの契約をしてしまったということを!
それは昨日の放課後に遡る。
私が部屋に入ると、小さな妖精のようなヌイグルミのような見た目の兎に角かなんだか懐かしく、可愛い“の”が開けっぱなしの私のクロゼットの中のハンガーにすわっていた。
目を逸らしてみたが、まだいる。
顔を抓ったのだが、頗る痛かった。
しかしながら、なんだか不自然だから母親も呼んでみた。
母は何もいない。
そう断言すると、私が疲れてるんだと言って夕飯を作りにキッチンに戻って行った。
すると、どこからか声が聞こえたのだ。
まさかね。
ま、まあ、まだ夜は深まっていない時間帯。
テレビとか、ご近所のおばさん達の話し声だとかかと、最初は思った。
色々な声が聞こえる室内。
蓋が開いて漏れ出す万年筆の液でも混ざったような騒々しい音の中から、その小さな音だけを聞き取るのにはそう、苦労しなかった。
何故ならば、耳から聞こえていないのだから。
つまり?
私にだけ聞こえるように喋っている。
いや、心に浸透して、声として脳で変換され、映し出される。
まるで映画の体験だ。
そして、私は振り返った。
クロゼットから見下ろす“それ”は私に伝えてくれた。
「亜威留が今月末消える」
と。
私は初聞でどういう事を指しているのか。
全く持って理解が及ばなかった。
が、彼女?の話を聞いていくうちにわかった事がある。
彼は誰かが身代わりにならなければ、死んでしまうという事だ。
それなら、もう答えは一つだった。
そう、つまり私は、どうにかこうにかして彼を助けなければいけないんだ。
だって、友達…………だもん!
(彼がそう思っていなかったとしても、そうであったとしても。
そんなことはあまり関係のないことだ。
目の前に死にそうな人が倒れていて、見て見ぬ振りができるような私ではないのだ。
こんな何もできやしない私にすらできる事があると知ってしまった以上、実行しないなんて勿体無いことはしたくない。)
あぁ。
あわよくば…………
なんて考えている暇なんてない。
これは一刻を争う事件なんだ。
段々朱に輝く日は沈みゆく。
「私と契約したら、貴方の命と引き換えに“町田 亜威留”の命は助けてあげる。
それでいいなら、この契約書にサインしな。」
そう、“妖精”が言った。
「そうそう。
申し遅れましたわ。
私の名は、ミュランディーア=マトロッツァ。
妖精ではなくて、天使よ。
以後、お見知り置きを。」
「うん。......うん、うん!ミュラン!宜しくね。」
そう言って私は“天使”を名乗るそれの契約書の内容も見ずにサインをした。
これぞ命取り!というフラグを立てんばかりに。
続く!




