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1ヶ月後消える僕の全て  作者: 桜井 雪
第三章 事件
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第十九話 (6日目?) 「ミュランディーア=マトロッツァ」

 題名は人名......いや、間違えた。

神名です。


名前...間違えてましたね。はは。すみません。

 僕とマルクスは黄金の光に包まれた。


 この輝く何かが僕の足元スレスレまで来たとき、僕は咄嗟に目を瞑った。

そして、腕をクロスして自らを守るような体勢をとった。

まあもっとも、僕には自分を守られるだけの力は備わっていないのだが。


 ピー、ツツー。

耳をつくような超高音が聞こえる。

僕には雑音にしか聞こえないが、これはモールス信号的な何かであったりするのであろうか。


 更には、マルクスの喚く声も聞こえてくる。

 「お、.........い..........r......」

 「............きろ」

 「起きろ、少年っ!!」


 僕はここまで必死なマルクスの声(僕の脳に直接信号を送ってきているだけだから、現実には喋っていないのだが............)を此処数日間過ごしてきた中で一度も聞いたことがなかった。

初めて聞いたものだから、驚くに決まっている。


 僕は驚いて身体を起こす。


 カツンと言う良い音の余韻が聞こえる。

どうやら僕の頭に何かがぶつかったらしい。


 それに気がついた途端、僕の頭は脳に響き渡るように段々と痛くなっていく。

 「......ったいなッ」

吐き捨てるように言った。


 その時だ。

不思議と僕が知らないマルクス以外の声が頭の中に流れ込んでくる。


 僕は目を開く。

目の前には不思議な色の背景に、あの、“謎のファイル”が宙に浮いている。


 状況が呑み込めない。

どう言うことだ?


 「どうもこんにちは。」

この声の発信源は一体何処なのだろうか。


 「(わたくし)の名前は『ミュランディーア=マトロッツァ』」

 「以後、お見知り置きを。」


 「その声を聞くな!!」

マルクスが叫ぶ。


 「大丈夫ですわ。」

 「さあ、どうか(わたくし)の話に耳を傾けて頂きたいのです。」


 「駄目だ___!」

 「そいつの言う事を聞くな!」


 「あら。(わたくし)のお邪魔をしてくださるのね?」

 「なら、仕方ありませんね。」


 「駄目だ。そいつの言う事を聞いたら_______ッ」


 ズガンと言う大きな音が聞こえる。

と同時に、マルクスの声も途絶える。


 僕の左耳を掠ってマルクスが吹き飛ぶ風が聞こえる。


 ほんの一瞬で風を切るヒュンと言う音から、また、ものが破壊される音へと変わった。


 僕は怖くなってきて、震えでうまく動かない首をどうにか動かして、目を最大限に後ろにやる。

信じられないのだが、現実だ(現実か?)マルクスが不思議な色の壁に打ち付けられ、形状を保っていない。

そのことだけは理解(わか)った。


 僕はパニックになった。

座った状態のまま、後ろへとジリジリと後退りを始める。


 “謎のファイル”からは大きな翼の生えた美しい女性がでてきていた。

片手には魔法の杖みたいなものを持っていて、マルクスを打った後だからであろう。煙が上がっている。


 僕はここまで分析せずとも、わかっていた。

此奴(ヤツ)だ。

マルクスを吹き飛ばしたのも、さっきからずっと聞こえているこの声も。

その正体は全て彼女(アイツ)だ。


 僕は、今日こそは気絶しまいと思い、気を引き締める。

いや決断したのだ。


 僕は震える自分の脚を駆使して、どうにか立ち上がる。

ただでさえ怖い。

なのに、まだやることがあるのかと思うと、残念な気分だ。

 

 僕は一つ、マリアナ海溝並みに深く深呼吸をする。

そして、自らのキャラメイクに専念する。


 「やあやあ、“天使さん”」


 せっかく頑張ったのに、自分でもはっきりとわかる程にボソボソと喋ってしまった。

勿論、マトロッツァは聞こえていないよう.........じゃない!


 そう、僕はすっかり一対一の対人戦だとでも思っていたのだが、そうか。

相手は“天使”。

声の大きさなんて気にする事なかれというか。


 僕はもう一度深く息を吸い、大きく吐く。


 「僕目当てで来たのに、それはないなあー」

 「マルクスを吹っ飛ばす必要ないでしょ。え?」


 「それは、“話し合い”にはお邪魔だったからですわ」

 「そんなことすらわからないのね。」

 「いい前世をしているのに、“人”は変わるものなのねぇ............」


 予想通りの回答だ。

前世の話は前々から気になってはいたのだが、まあ確認してもするだけ無駄だ。


 「はは。笑わせてくれるな。」

 「弱いものいじめはそんなに楽しいのかよ。」

 「しかもだ、1人の(神だから、“人”で数えるのはおかしいのか............?)邪魔者が増えたところで、お前は太刀打ちできないのか。」

 「神様ってもんは、みんなひ弱なんだな。」


 僕はわざと嗤って見せる。


 マトロッツァは“()”を的確に撃たれたようだ。

よし、いけると思った。

(もっとも、僕が小さな声で話している事実は変容していないのだが。)


 「よーくぞ耐えてくれたね」

 「マルクスんとこの優秀な少年」


 よく知らないが、落ち着く声が聞こえる。


 「あぁ、自己紹介が遅れたね。」

 「僕の名は、メランディーア=サンフューネ。マルクスの先輩に当たる、死神サ。」


 何処となくかっこいい素振りとは裏腹に、矢張りマルクスのように天使の金輪が浮いてるし、うさぎのぬいぐるみのようだ。


 「まあ、その辺に座って見てな?後はボクがなんとかするから」


 そう言ってメランディは空中から綺麗なフォームで片足ずつストンと着地............いや、舞い降りた。

そして、マトロッツァの方へ姿勢を崩さず歩いてゆく。


 途中で、人間の姿に変わった。


 その姿はまるで神のようだった。

(いや、死神だから間違ってはいないのだろうが...)


 その姿を眺めると僕は、安心して腰が抜けたかのようにその場でへたり込んでしまった。

僕はその後もボォーッとしてはいたが、気絶しなかったことは我ながらに素晴らしかったと思う。

 神は、あなたの周りでぬいぐるみとなって隠れ潜んでいるかもしれません。

ってね。

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