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1ヶ月後消える僕の全て  作者: 桜井 雪
第二章 友達
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第九話 (4日目) 「敵はいつまでも敵」

 「体調が優れない」

と虚言した僕は、先生の許可を得て校庭の隅のベンチに誘導され、書くつもりもない見学用紙を先生に突きつけられる。


 僕には、別に必要のない物なのだが、それを受け取ろうとそれに手を出した。

が、然し先生が強く摘んでいて、僕には到底受け取れそうにはない。


 仕方なく別に欲しかった訳じゃなかったし、そこからパッと手を離して、頬杖をつく形に座り直し、今度は先生では無く生徒の方に体を、目を向ける。


 別に詰まらないから、1分も経たないうちに目を閉じて、睡眠をとる準備をする。


 先生は困った様な顔をした後、僕にとある話を持ちかけた。


 返事は明日の授業前までに、とのことである。

..................更々乗る気なんぞないんだがな。


 そうこうしている内に、断りそびれてしまった。

そうして、いつの間にやら寝ていた様で、授業終了のチャイムに起こされた。


 ベンチの下には空欄で埋め尽くされた紙が風で煽られ、雑草に倒れ込んでいた。


 「まるで君の様だ。」

こうやってマルクスは皮肉を言う。

僕は立ち上がってそれを拾うと教室に戻って書き始めた。

勿論、出さないが。


 今日、朝のホームルームの時にたけしに呼ばれていた事に気がつき、職員室に行くと、たけしは出張で居ないのだと職員室の中で小さな笑みを浮かべる人等が続出した。


 これはわざと..................だろうな。

僕の今までの経験がそうだと訴えかけている。


 そんな都合よく生徒を呼び出した日にたまたま出張になるなーんて事、“普通”はないだろ。


 不本意なわけがない。

意図的にやった確信犯だ。


 まあ、そんな事を言いながら(考えながら)僕はそのうち奴を殺った確信犯になる訳だが。


 そう、僕に無駄足運ばせた事、後できっちりと後悔させてやる。


 「そーんな事言うくせに、君は何も行動に起こせないんだ」


 そう言ってマルクスは、僕の言葉に笑う。

なんだって?


..................いや、よく考えたら..................そうだな。


 いやいや、“悪く”考えてもそうだ。


 うん。

いつ聞いてもマルクスの言葉は正しかった。

だけど僕は、このままじゃいけない。

このままどんな時でも何もできない様な弱いままでは行けない。


 そう、1歩踏み出さなくては。

どうせ死ぬなら、この世をめちゃらくちゃらにしてから消えてやる。


 やっとこさ、家に帰ろうと下駄箱で靴を取ろうとする。


 ふと、出口の硝子を除くと、沈みかけた夕日の影に明日さんが立っている。


 よく見えないから、靴を履き替える時に目を凝らす。

 

 おおっと。明日さんじゃねぇじゃねえか。


 でも知っている顔立ち、横顔から来る不思議な魅力、同学年。

知っている気がしないが、警戒する事に越したことはないだろうな............


 無視してそろりと1人で帰る。

が、目の前には先回りしたさっきの人影がある。


 齋藤(さいとう) 凛廻(りんね)

虐めのリーダー格だった女だ。

顔は直視できないほど美しい。

と思うと、その下も素晴らしい。

かといってもっと下を見てもグレートだ。

いや、僕は興味ない。

そう、興、味、なし!!!


 だがな。

僕と違って他の奴らはあの魅力に騙されていった。

だから僕ばかりが、彼女の容姿端麗さをものともしなかった僕だけが、貧乏籤を引いたみたいになってしまったんだ。

そう、95%以上あいつが悪い。


 危ないから近づかない様にしていたいんだが。

危険だし面倒だしで、彼女の右をまわって先へ進もうとする。


 「はあ?」

っとお?

僕が彼女の横を通ろうとする瞬間、左腕を掴まれた。


 「今日一日中見てたけど、なんなの?」


 なんで一日中僕を見てるんだよ。

ストーカーかよ。


 おかしいにも程があるだろ。


 「おかしすぎるw」

そう、斎藤がいった。


 いや、お前の方がおかしいんだよ。


 思わず吹き出しそうになるのをやっとのことで堪える。


 「なんであんたが来てんのよ。」

「何様だと思ってる訳?何年か経ったからって許してもらえると思う?このクズ」


 そういって蹴られる。

まあまあ痛いのは彼女のスポーツテストなるものがいつもAと言う最高ランクだからでもある。


 そう、“昔”はすんごく痛かった。

泣いて叫ぶほど痛かった。

でも............ん?


 「いた、くない?!」

背後から迫り来る足音に彼女はパッと手を離し、スタスタと早足で立ち去る。

と同時に僕にとって途轍もなく不都合な言葉が耳打ちされ、飛び込んでくる。


 酷すぎだろうが。


 意味がわからねえ。


 “はあ?”と言う彼女の口癖が僕の頭の中で僕の言葉として鳴り響く。


 数秒後、息が切れ、はぁはぁと息を整える音が聞こえてくる。


 今度こそ、本物の明日さんだ。

明日さんの声だ。

 

 胸を撫で下ろしながら、さっき見間違えそうになった事に頭の中で何度も謝罪した。


 僕は内心わくわくしながら後ろを振りむく。


 違う。


 .......................いや、おまけで短距離走っただけじゃあ息の切れない怜もいる。


 そう、その隣には明日さんが凛々しく立っている。


 今の一瞬でさっきまでのアイツの汚い空気が空気が綺麗な明日さんを纏う空気へと入れ替わった。


 ............が、なんで2人がいるんだ?


 気になるセットである2人がいた事と遅い時間なのに2人がまだ帰っていなかったことにまさかと言う事、さっきの訳ワカメな言葉で頭がパンクしそうになって倒れかけた僕を2人は支える様に手を添えた。


 夕日と共に放課後の道を自転車を押してゆっくりと歩いた。


 僕の前にはもう、あの誘惑的な不吉の象徴なる、姿はなかった。


 明日さんが輝いて見えたのは、夕陽に照らされたからであろう。


 僕には今の、この空間が特別に心地よく暖かかった。


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