第七話 (4日目) 「友達の定義」
僕は明日さんに押されて、半ば強引に学校の敷地内に入る。
僕は、自分のことを知った生徒等に冷めた目で見られるものかと思い身構えて居たが、生憎、僕のことを皆、記憶から抹消してしまって居た様だ。
自分でも自分の影が薄い事ぐらい自覚して居たから、別にどうとも思わないわけだが。
「俺にはよく解らんが、今、寂しいって思っただろ。そんな顔してたぞ。」
............は?
「もしかして、当たり..................
核心ついちゃった感じぃ?
これはこれは。」
何なんだ。
マルクスの鬱陶しさは、日に日に増してゆく。
しかし、そんなことを言って(考えて)いても時間が無駄になるだけだ。
どうせ、僕は直ぐに死ぬ。
願望も欲望も要らない。
うん。
そして今何より、僕を見守ってくれる明日さんがいる。
その事は、僕にとって大きな事だった。
そんなこんなで階段を上がる。
途中、明日さんは僕に話し掛けてくるが、地球温暖化のぐんぐん進んで行く初夏が暑いせいか、最近、色々なことがあってバテ気味なせいか、その話も頭に入ってこないでいた。
が..................
「、、、、、、ん!」
「あ、、、、、、る、、、く、、、、、、」
「あいる君?!」
「わっ。」
なんだなんだなんだ。
「大丈夫?」
「う、、、、、、ん。?」
「私たち昨日来て、自分たちの教室がわからないねーって話をした、、、と、思うの。」
「それで、それでね。
今から先に職員室に寄るのはどうかなって。
そうしたら、先生がいると思うから、分かる筈と思ったんだけど、、、、、、」
「あいる君も一緒に来る?」
僕はさっき驚いて返事をして詰まった喉が苦しかったから、黙ってちょっと大袈裟に頭をコクリと動かす。
が、いざ職員室前に立ってみる、脚がすくむ。
朝っぱらからこんなに熱々にして昼間になってバテてしまうのではないかと心配してしまう程に、暑い廊下で棒になる。
そんな僕を見兼ねた明日さんは、じゃあ自分が行くから、といって職員室の扉の中に姿を消した。
大人気ない。
いや、尤も、僕は子供なんだが。
こう言う時はせめて、ついて行って、何もしないにしても、、、、、、
「もう、うだうだ考えるなって。」
「俺様もな、流石にお前を甘やかすつもりは無いんだ。」
それなら、尚更、、、、、、
「もう1ヶ月ないんだし、やれる所だけでいいんじゃないか。」
ぁああああああああ。
だからっ!
僕はーー
「お前がどうしたって?」
「いつも思うんだがな、お前はいっつもいっつもこう言う時に、続きがないんだ。」
「もうウンザリなんだよ。その馬鹿ゝしいのは。」
「なんだよ!」
今まで中々ひらいてこなかった口が急に動き、僕にしては大きな声が出てしまう。
(と言っても、他の人にとってはこの声は普通の声なのだと思うが。)
周りから僕が氷漬けになるかの様な冷ややかな目が送られてくること怖くて、更に、力尽きてしまったこともある。
よって、僕はその場で足の力が抜け、座り込んでしまう。
ガラガラという音と共に明日さんが帰ってきた。
バタバタという音と共に彼女が此方へ来る。
その後のことは、殆ど覚えていない。
熱中症だろう。
次に僕の意識が確かになった時には、教室にいた。
、、、、、、。
普通は保健室、、、に連れて行くのでは?
可笑しくない、、、のか?!
と、教室を見回すが、明日さんは居ない。
、、、、、、違うクラスだったのだろう。
取り敢えず探そうと、と言うよりかは無心で、廊下の方に目を遣る。
「よっ。」
わっ。
お前は誰だとでも言うように、その声は僕に向けられている。
が、然し。
僕の脳はその何処からともなくやってきた音声にいきなり対応出来てしまう程精巧には出来ていないから、僕は椅子を道連れに、背後へと一気に倒れ込む。
、、、、、、と、思われたのだが、何とその声の人が、軽々しく僕を持ち上げる。
そして、僕を椅子ごと机の前へと引き戻す。
ああ、そう言えば、、、、、、
コソコソとそいつは僕に耳打ちする。
「、、、、、、何でおま、ここん、学校きてんだよ。」
「中学なってから来なかったから、転校でもしたんだと思ってたんだが。」
そう、そうだ。
コイツの名前は御剣 怜
通称:ゆーれい
そう呼ばれていた。
、、、、、多分。
小学校の頃、僕が普通に学校に行っていた頃、影が薄い仲間だった奴である。
そして、コイツは知らないのか。
親の事情だかで小学校の間は殆ど海外だった。
だから忘れていた。
と言うか、中学同じなんて聞いてないのだが?!
「何で来てなかったんだ。」
「友達だろ。相談には乗ってやる。」
友達、、、、、、
とは何だろう。
第一、6年も7年も会っていないんだ。
なのに、、、、、、
友達の定義があればいいんだがな。
人生に答えがないように、こちらの答えもない方が良いのかもしれない。
「ああ。」
誰かに否定されて、認められることが無く生きてきた。
然し、今度こそはーー。
だからーー
“その時”が来る時までは、やってやろうじゃないか。
例え、僕に味方がいなかったとしても。
例え、大多数が僕を非難したとしても。
例え、どんなに現実味が無いとしても。
昼を訪れんとする朝日は、教室のホワイトボードに反射し、教室全体を映し出した。




