プロローグ
とある世界の、とある時代にて…
見渡す限り白一色な、凍てつく大地。
植物は皆枯れ、動くものといえば風に吹かれて転がる岩くらい。
そんな荒涼とした不毛の大地で、一箇所、そのような場所には不似合いな大きな卵があった。
その大きな卵は美術品のような繊細な模様を持ち、光沢があり、おとぎ話の世界に住むドラゴンの卵だと言われると信じてしまいそうな迫力があった。いや、事実そうであった。
そう、その卵はドラゴンの卵だったのだ。
豊かな森林は無く、あるのは厳しい寒さのみ。どんな事情があったのか、愛してくれる母は居らず、自分を守ってくれる強い父もない。ああ、卵に亀裂が入った。もうすぐこの不幸な孤児は、見る者の胸を打ち、世を嘆きたくなるような悲劇をこの世界に残すだろう。さあ、もうすぐ彼のドラゴンが産まれてくる。そして、愛する親を求め、この世界への憎しみを込めた、この悲劇の幕を上げる最初の産声。この不毛の大地に木霊するような、大きな大きな産声。そんな産声をとうとう、とうとう、あげ――――…‥
―――なかった。
「あぁ、少し寝すぎたかな」
そんなことをボヤキながら、俺は感覚を頼りにベッドから飛び降りる。
それにしても、今朝はやけに変な寝相だったな。そろそろストレッチでも始めてみるか。
「あれ、おかしいな?」
そんなことを考えながら歩いていると、いつもは冷蔵庫があった場所に、何もないことに気がついた。
いや、それどころか壁もないし。……一体どうなっているんだ?
俺は意を決し、目を開けてみることにした。
「な、なんだよこれ!?」
そこには俺の部屋はなく、それどころか洞窟のような場所になっていた。
驚いた俺は思わず尻もちをつく。
「うわっ!?」
すると自分の手足が見慣れた物ではなく、大きな鉤爪のついた化け物のような姿になっていた。
どうやら俺は朝目覚めたらドラゴンになっていたらしい………え?
暫くして、ようやく今の状況が分かってきた。
俺の体は本当にドラゴンになっていたようだ。頭を触ったら角があったし、試しに口から炎を吐こうとしたら本当に吐けた。そのおかげで、貴重な洞穴水はすべて干からびたわけだが。
あと、俺がベッドだと思っていたのは巨大な卵の殻だった。俺はこの卵の頂上から産まれた後、無意識に滑空して地上に降りたらしい。あ、ちなみにちゃんと翼もある。漆黒の禍々しいやつ。
……どうせなら、赤とかが良かったんだけどな。この如何にも悪そうな色だと人間と会ったときに色々勘違いされそうだ。今のところ俺以外の生き物は見つかっていないが。
そもそもここはどこなんだ?俺みたいなのが居るってことは、少なくとも地球じゃなさそうだが……
探索に行こうとしたら猛吹雪でビビったし、その雪が止んだから外に出てみたら、石以外に何もない土地が延々と続いていてこれまたビビった。
まあ、取り敢えず今日は寝ようかな……




