表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
999/1000

第999話 エアホッケー義姉妹対決

 美奈ちゃんは手でゆっくりとパックを前に出し、マレットで思い切りサーブを放った。壁に当たり、私のゴール目掛けてなかなか速いスピードで飛んでくる。

「えい!」

 だけど私は、落ち着いてパックをはね返し、パックは美奈ちゃんのゴールに向けて一直線に飛んでいく。

「え、ちょ……速っ!」

 美奈ちゃんは私の打ち返したパックの速さに驚きながらも、なんとかゴールを死守。パックは速度を落としながら二度バウンドしてて私の元に戻ってきた。

 私はそれをダイレクトに打ち返すけど、ゴールの少し右に当たってまた戻ってきた。

「ちょっとお義姉ちゃん速くない!?」

「エアホッケーは元々得意だし、筋トレもしてるからね」

 美奈ちゃんがすっごく驚いているけど、私がエアホッケーできるイメージはなかったのかな? 初めて私と会った時に真人といい勝負を繰り広げていたのを見ていたはずなんだけど、覚えてないのかな? なんか私を見てびっくりしてたから、それどころじゃなかったのかな?

「……なんか、お義姉ちゃんが脳筋になってる」

「の、のうき……!?」

 今まで言われたことのないことを言われてしまって、美奈ちゃんが打ち返したパックへの反応がわずかに遅れてしまったけど、ギリギリで当てることができたのでゴールには入らなかった。

「み、美奈ちゃん。私って脳筋かな?」

「いやだって、お義姉ちゃんが打つパックのスピードがめちゃくちゃ速くて、打ち返すこっちの手にけっこうな振動が来るんだもん!」

「そ、そうなの?」

 筋トレを始めたあとだと……真人と杏子さんとしかやったことはないけど、言われたことないよ。

 美奈ちゃんが真人はもちろん、杏子さんよりも背が小さいし筋力もないからじゃないのかな?


 それに私……まだ本気出してないし……。


 と言っても、七、八割は出しているからほぼほぼ全力ではあるけどね。

 美奈ちゃんとの試合が始まって三十秒が経過してまだスコアレス。美奈ちゃん、反射神経良くてこっちの攻撃を全部防いでいるし、緩急をつけて攻撃してくるから私もゴールを入れられないかちょっとヒヤヒヤする。

 まだまだ試合時間はあるけど、この辺りで一点は取っておきたいからそろそろ全力でやろうかなって思い始めた時、美奈ちゃんがある人を呼んだ。


「あ、お兄ちゃん!」


「え! まさ───」

 私がマレットを持って後ろを向いた直後、私のゴールにパックが吸い込まれるガコンという音が聞こえた。

 そして振り向いた先には誰もいなかった。

「…………」

 そうだよね。真人は今、部活中だからここにはいない。もしかしたらと思ってここに来てくれたのかもと思ったけど、合唱コンクールが近いこの時期に午前中で部活中だかが終わるなんて……ないよね。

 また正面を向いて美奈ちゃんを見ると、美奈ちゃんは大きく息を吐きながら額の汗を腕で拭う素振りを見せていた。

「お義姉ちゃん、お兄ちゃんが今ここにいるわけないじゃん」

「そうだね……」

 私は静かにそれだけ言った。

 今、真人はここにはいない。ちょっと考えればわかることかもしれないけど、好きで好きで大好きで愛している人の名前を急に出されてなんの反応も見せない人なんていないよ。

 拮抗した状況を打開しようとしての作戦だったのかもしれないけど、まさか美奈ちゃんがこんな手を使ってくるなんて……。


 美奈ちゃんが……真人を利用して私に騙し討ちをするなんて……。


 私はしゃがんで落ちたパックを拾う。

 多分、真人じゃなくて猫ちゃんだったら、「もぅ、美奈ちゃんひどいよ!」ってちょっと怒るだけだったのかもしれない。

 けどそれが真人だったのは……やっぱりダメだよ美奈ちゃん。

 私は立ち上がり、パックをゆっくりと台の上に起き、下からの空気でゆっくりと右に動くパックを───

「ふっ!」

「……え?」

 全力で打ち、パックは一直線に、ものすごいスピードで美奈ちゃんのゴールに吸い込まれていき、美奈ちゃんはパックが入っていった自分のゴールを半ば放心状態で見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ