第997話 綾奈、音ゲーデビュー
曲選択の時間は一分間で、それまでに決めないと、時間切れになっちゃうとその時に選択された曲になっちゃうから、なんとか時間内に決めないとなんだけど……。
「本当にいっぱいあるね……」
曲が多すぎて、本当にどれがどれだかわからないよ。
「あれ? お義姉ちゃんさっき私がやってた曲にするんじゃないの?」
「そうなんだけど、どこにあるのかわからなくて……」
あの曲があるんだってことしかわからないから、それがどの辺りにあるのかを探すのが大変。一分以内に探せるのかな?
「ちょっと代わってお義姉ちゃん」
「う、うん……」
「こういう時は、ソートを変更して……」
美奈ちゃんはソート画面を開き、アニソンで絞り込みをしてくれて、何曲かスライドしていると……。
「はい、あったよ」
ものの十数秒でお目当ての曲を見つけてくれて、私は嬉しくて美奈ちゃんを抱きしめた。
「ありがとう美奈ちゃん!」
「う、嬉しいけど、早く難易度とか決めないとランダムになっちゃうよ?」
「そ、そうだね……!」
曲を選択し、曲の難易度をいちばん低いものし、ノーツスピードをちょっと遅めにしたら、いよいよゲームがスタートする。ここまでで残り五秒だった。
画面が暗くなり、筐体から歓声が聞こえてくる。
私は初めてやるリズムゲームにすごくドキドキしてる。合唱部に入っているからこういうゲームでひどい結果は出せないというプレッシャーものしかかってくる。
画面が代わったことでさらにドキドキが加速。曲名、そしてジャケットイラストがゆっくりと消えていき、イントロが流れはじめた。
美奈ちゃんの時はイントロからノーツが降ってきたけど、簡単なレベルにしてあるからまだ落ちてこないんだ……と思っていたら、前奏が終わるタイミングで最初のノーツが上から落ちてきた。
すごく大きいノーツで、これなら鍵盤の右半分くらいのところを押したら大丈夫そう。
「えい!」
そんな掛け声とともに、私は親指以外の四本の指で鍵盤の右側を叩いた。
タイミングバッチリだったみたいで、画面には『PERFECT』の文字が出た。
「やったよ美奈ちゃん!」
「それはいいから画面見て! もう次のノーツが降ってきてるから!」
「へ? あ、本当だ!」
本当に次のノーツがゆっくりと降りてきていて、今度は左側を同じように叩く。
若干タイミングがズレていたみたいで、『GRAET』の文字が出た。
こ、これは曲が終わるまで気を抜いちゃいけないみたい……!
また美奈ちゃんに声をかけそうになったけど、それを堪えて、私は画面に……ノーツに集中した。
「やっぱりなかなか難しいね」
全二曲のプレイが終わり、私は筐体から離れて美奈ちゃんの元に行き、次の人が百円を入れるのを見ながら、美奈ちゃんと話をする。
「それでもリズムゲーム初めてとは思えないスコアだったよ」
「そ、そうかな? えへへ」
私は二曲とも、あと少しのところでフルコンボを逃してしまった。リズムがズレたりしたわけではなくて、長押しのあとに上にフリックをしないといけないノーツがあって、それが難しくてフルコンボができなかった。
逆にそれができれいればフルコンボだったからけっこう悔しい。
「そうだよ。次はもっと難易度を上げてもいいかもしれないね」
「ありがとう美奈ちゃん。頑張ってみるね」
二曲とも、一番低い難易度でやったから、初めてでもあれだけの結果を残せただけかもしれないけど……うん。今度はひとつ上の難易度でやってみようかな?
真人と来た時にも、真人が『いいよ』って言ってくれたらやろうかな? もちろん毎回じゃなくてたまにね。ここに来て毎回やってたら、真人を退屈にさせてしまうから。
「頑張ってねお義姉ちゃん。頑張ったらあの人と同じくらいになれるかもだよ」
「あの人?」
美奈ちゃんが見ている方を見ると、私の次にRYTHENISTをやっている人がいるんだけど、ノーツが降ってくるスピード、そしてその人の手の動きが目にも止まらぬ速さで、一度プレイしただけの私には何をやっているのかわからないレベルだった。
「う~ん……あの人みたいには無理かな……何回もしないといけないし、真人を蔑ろにしちゃうから」
真人に寂しい思いをさせてまで上手くなりたいとはまったく思わないから、真人と一緒に楽しく遊べたらそれでいいかな。
「そっか……そうだよね」
「うん。それじゃあそろそろ次の場所に行こうよ」
「うん!」
美奈ちゃんと手を繋いで、今度はプリクラの方へと移動した。




