第996話 やってみる?
「お疲れ様、美奈ちゃん」
ゲームを終えてこちらにやってきた美奈ちゃんを労った。
「どうだった? お義姉ちゃん」
「うん。面白そうとは思ったけど、このゲーム……すごく難しいよね」
最初は鍵盤に見立てた所をタイミングよく叩くだけのゲームだと思ったのに、長押しする所もあったし、その長押しも同じところを推し続けるんじゃなくて、ぐにゃぐにゃ曲がっていてそれに合わせて押す場所も移動しないといけないし、それが二本同時に降ってきて交差してる箇所もあって、思わず「どうなってるの!?」って言っちゃった。
それに上矢印がついているのもあって、美奈ちゃんはそれに合わせて勢いよく指を離していて、簡単そうに見えてすごく奥が深そうなゲームだと思った。
「けっこう難しい難易度でやったからね。簡単なのだとノーツが降ってくるのもゆっくりだし、ノーツの種類もタップと長押しのふたつだけだから簡単だよ」
「そ、そうなんだ」
簡単だったら、もしかしたら私でもできたりするのかな?
「お義姉ちゃん、やってみる?」
まるで見計らったかのようなタイミングで私にそんなことを聞いてくる美奈ちゃん。
「ち、ちょっとだけ……」
このゲームに興味が出ていた私は、やってみることを決意した。
「そうこなくっちゃ! あ、先にこのカード買う?」
美奈ちゃんはこのゲームの情報を保存できる、あのカードを財布から取り出して私に見せてきた。
あのカードを最初に筐体に読み込ませて、美奈ちゃんの保存してあったゲームの情報が出てきたんだけど、プレイヤー名が『ミーナ』ということ以外はよくわからなかった。
「買った方がいいの?」
「長くプレイするなら絶対買った方がいいよ。イベント走る時には絶対に必要だし、スキンも変更できるし」
「う~ん……」
どうせなら長くプレイしたいとは思うけど、イベントがどんなものかわからないし、スキンって、プロフィールのアイコンみたいなものだよね? それも変えても───
「プレイヤーレベルを上げると猫のスキンも手に入るよ」
「買うよ美奈ちゃん!」
私はお財布から三百円を出して発券機に入れると、カードがゆっくり出てきた。
「行くよ美奈ちゃん。頑張って猫のスキンを手に入れるよ」
はやる気持ちを抑えられなくて、早足でRYTHENISTの筐体へ向かった。
「……お義姉ちゃん、やっぱりチョロすぎない? お兄ちゃんか猫を出した時の食いつきがハンパないんだけど……」
筐体に百円を入れると、このゲームのマスコットキャラ、リスのリズリーが出てきて、「カードを持ってる人は読み込ませてね」と言ったので、私はそれに従って、読み取り位置にカードを置いた。
すると、さっきの美奈ちゃんの時みたいにプレイヤーデータが出なくて、プレイヤーネームを決める画面が出てきた。
「プレイヤーネーム……どうしようかな?」
自分のハンドルネームみたいなのを決めたことがないから迷っちゃうなぁ……。
アヤナ……は本名だから避けた方がいいよね? ん~……。
私は迷いながら文字を打ち込んでいく。
「……ナカニシ? お義姉ちゃん、なにこれ?」
「私たちの苗字を合わせてみたんだけど……」
美奈ちゃんや真人の苗字が『中筋』で、私が『西蓮寺』だから、その頭文字を合わせてみたんだけど、それを見た美奈ちゃんが「うーん」と唸っている。
「私も、きっとお兄ちゃんも見たら嬉しいけど、女の子っぽくはないよね。それに、お義姉ちゃんだけの名前になるんだから、変に私たちを入れない方がいいかもね」
私だけの名前……難しいよ。
だったら……。
私はナカニシの文字を消して、新しい名前を入力した。
「アーヤ?」
「うん。これなら私だけの名前だし、女の子っぽいよね?」
「私のパクリじゃない?」
「じ、時間ないからいいじゃない!」
時間制限はないみたいだけど、いつまでも考えるわけにはいかないし、早くしないと他の人を待たせてしまうからプレイヤーネームはアーヤにした。スマホで公式サイトとリンクすれば名前もスキンも変えれるみたいだから、とりあえずはこれでいこう。
プレイヤーネームも決まって、次はいよいよ曲選択の画面へと移った。




