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第991話 サシでの話し合い

「ん? ……!?」

 お店の外に出ると、中村君は待っていてくれたけど、突然店長さんが出てきたことにすごくびっくりして、自然と身構えていた。

「……久しぶりだね。中村君」

「……う、うす。お、お久しぶりッス」

「ごめんね中村君。暑い中お待たせしちゃって」

「あ、あぁ……ってか西蓮寺、なんで店長がここに……?」

「えっとね、中村君の出入り禁止を取り消してもらおうと思って店長さんとお話をして……」

「……え?」

「それで、今の中村君を見てもらおうと思って、店長さんを連れてきたんだよ」

「な……!」

 そういえば中村君には何も話さないまま、ゲームセンターの中に入っちゃったから、中村君すごくびっくりして私を見てる。

 そしてゆっくりと店長さんの顔を見上げていた。

 真人よりも身長が高い中村君……よりも背が高い店長さんが腕を組んで中村君をじっと見つめているから、圧がすごい。中村君が緊張で唾を飲み込んでいる。

 店長さんが私に挨拶をした時に優しい笑顔を見たはずの美奈ちゃんは、またちょっと怖がって私の後ろに隠れちゃったし……。

「……ふむ、西蓮寺さんと友達ってのは本当なようだな。あんなことがあって、西蓮寺さんがキミに普通に話しかけているし……それに態度もちょっと柔らかくなったか」

 店長さんは厳しい目つきで中村君をじーっと観察しているようで、時折ぶつぶつと呟いている。

 聞こえた限りだと、悪い印象は持っていないみたい。だけどまだ信じられないようで、店長さんは判断を迷っているみたい。

 私の完全な独断で店長さんにお願いに行って、こうして数ヶ月ぶりに顔を合わせたふたり。

 もしかしたら中村君にはいらないお節介だったかもしれないけど、でも、思い入れのある場所にまた入れるようになって、今度は真人と中村君がここで一緒に遊んでいる所を見たいと思った。

 私にできるのはここまで。これからどうするのかは中村君次第。

 私は店長さんの後ろに下がり、中村君が私を見たタイミングで、口パクでこう伝えた。

「(がんばって)」

「っ!」

 中村君にちゃんと伝わったみたいで、中村君の目の色が変わって、私に向かってわずかに頷き、そして店長の顔を見て一歩下がった。

「……て、店長! 今までいろいろ、迷惑かけてすんませんでした! 許してくれなんて言いません。今後は店に迷惑をかけることは絶対にしないッス! だから……俺にチャンスをくれませんか!? お願いします!」

 中村君は一気に言い終わるのと同時に頭を下げた。

 去年、出入り禁止を言い渡された時は、店長さんに悪態をつきながら出ていった。

 あの姿を見ているから、今の中村君があの時のことを心から反省しているのがわかる。

 美奈ちゃんを見ると、中村君の本気の謝罪を聞いて、これから店長さんがどんな判断を下すのかを固唾を呑んで見守っているみたい。

 そういう私もすごくドキドキしてる。一体どうなっちゃうのか、今、私の頭の中はほとんどそれでいっぱいだった。

 残った部分で、真人部活頑張ってるかな? と旦那様を想いながら店長さんの言葉を待つ。

「……西蓮寺さんに聞いたが、ここはキミの思い入れのある場所、なんだって?」

 中村君はゆっくりと頭を上げてから言った。

「……そ、そうッスね。ガキの頃からしょっちゅう来てたから」

「そんな場所を……そして俺の一番大切な場所を傷つけた。そのことは理解してるね?」

「は、はい……」

「そしてキミは中筋君と西蓮寺さんも傷つけた。この夫婦がもう気にしていないとしても、その事実は変わらない」

「そ、そうッスね……」

 中村君が苦い顔をしている。事実を事実として認めているんだ。

「あの時のキミは、傷つけられる側の痛みというやつを理解していなかったように見えるが、今はどうだ?」

「……今は、マジで反省してます。ここに入れなくなって、このゲーセンが俺の大切な場所だって理解して、今はダチと思ってるヤツを一方的に見下し、ひでーことを言っちまったこと……自分がとんでもなくバカでガキだったと……後々になって思い知らされました。中筋は俺に散々言われたのに、全然言い返さなくて、それどころか西蓮寺の心配ばかりしてて……スゲーヤツだなって、思い知らされました」

 あの時、真人は怒っていた。だけど理由は自分が一方的に悪口を言われたからじゃなくて、私のことを心から心配してくれたから……。

「中筋君も西蓮寺さんも、誰かのためにしか怒らないふたりだからな」

「……ッスね。俺も、そんな風になれたらなって思います」

「……さっきの、そしてその言葉に、二言はないか?」

「……はい!」

「……」

 店長さんはしばらくの沈黙のあと、組んでいた腕を下ろし、体を後ろに……私たちの方に向けて言った。

「その言葉に偽りはないか、ここでしばらく見させてもらうよ」

 それだけ言うと、店長さんはゲームセンターの中に入っていった。

「……ありがとうございます!」

 中に入った店長さんには聞こえていないと思うけど、中村君はまた頭を下げ、ありったけの感謝を店長さんに伝えていた。

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