第990話 矛盾だとしても
「……それが、西蓮寺さんが中村君の肩を持つ理由?」
「はい」
私の理由を静かに聞いていた店長さんは、鼻を鳴らしながらその大きな両腕をまた組んで言った。
「西蓮寺さんが言うのだから本当に中村君が言ったんだろうね。ここを思い入れのある場所と言ってくれたことは、経営者としては素直に嬉しいよ」
「じゃあ───」
「でも、そんな思い入れのある場所のゲームに蹴りを入れたり台パンしたり文句言ったり……店に迷惑をかけたり問題行動を起こすかな? 西蓮寺さんを疑うつもりはないが、やっぱりにわかには信じられないな」
そう、だよね。人伝に聞いた話じゃ、私と同じ気持ちを感じたりするのは不可能。お店にいっぱい迷惑をかけてきた中村君を信じられない気持ちもわかる。
「中村君自身、店長さんに出入り禁止を言い渡されるまではそんな風に思ってなかったと思います。これから先も、地元を離れない限りは大人になってもたまにここで遊べるものとばかり考えていたはずですから」
物語なんかでよくある、失ってから初めて大切な存在だと気づいた……そういうキャラクターの心情を、今の中村君は抱えているんだと思う。
あんなに寂しそうな表情をしたのは、ここが自分の大切な場所のひとつだと、ここを利用できなくなって初めて気づいたからに他ならない。
「仮に俺が彼の出禁を取り消したとして、彼がまた迷惑行為をしないという保証はないよ。西蓮寺さんは俺に、その彼を信用しろと言っているのはわかってるね?」
店長さんの言葉……その一言一言が私に重くのしかかってくる。
だけど、自分から言い出したことだもん、簡単に膝をつくわけにはいかないよ。
「はい。情に訴えるというわけではないですが、今の中村君はここで迷惑行為をしていた頃の彼ではありません。心を入れ替えましたし、中村君とあんなことがあったのに、真人は中村君をお友達だと思ってます。私も……完全には許せなくても、お友達と思ってます」
矛盾していることはわかってる。だけど、今の中村君を放っておけないと思ったのも、紛れもない事実だから。
「中筋君と中村君が、友達……? 本当に……?」
「本当です。中村君は今、このお店の外にいます。私の言葉が信じられるのかどうか、今の中村君を見て店長さんが判断していただけたらと思います」
伝えたいことは大体伝えることはできた。
それに、私たちがここに入ってからそろそろ十分くらい経とうとしている。アーケードの中とはいえ、真夏に外で待たせ続けるのは申し訳なさすぎるから、早く店長さんと会わせて確かめないと。
「……わかったよ。ちょっと中村君と話をしてくる」
「あ、私も行きます。美奈ちゃんはどうする?」
「わ、私も行くよ!」
私は、店長さんの大きな背中を追いかける形で、美奈ちゃんと手を繋いでゲームセンターの外に出た。




