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第987話 謝罪する中村

「中筋の妹ちゃん……すまなかった」

「え、ちょ……え?」

 中村君が本気で謝罪をするなんて思ってもいなかった美奈ちゃんが、すごく動揺してうまく言葉が出てこなくてキョロキョロとしている。

 私も……最初は美奈ちゃんの質問に否定すると思っていたから、中村君の行動にはちょっとだけびっくりした。

「キミの親友に手を出そうとしたのはマジだから、謝ることしかできない。それに俺はもう西蓮寺に特別な好意は抱いていない」

「え、えっと……お、お義姉ちゃん、どういうこと、なの?」

 真人に聞いていた中村君と、今の中村君がかけ離れすぎていて、どうしていいのかわからずに美奈ちゃんは私に助けを求めてきたので、私は美奈ちゃんの隣に並んだ。

「中村君はね、変わったんだよ」

「み、みたいだけど……ど、どうして?」

「中村君を変えたのは真人なんだよ」

「お、お兄ちゃんが!?」

 美奈ちゃんが驚きすぎて大声を出したから、周りの人がこちらを見てくる。

「……ま、きっかけは西蓮寺の強烈なビンタだけどな」

「あ、あはは……」

 中村君は自分の左頬をさすっている。

 私が何か言っても、前みたいに『あれは自分が悪いから』と言うと思ったから、苦笑いだけしておいた。

「今の俺はもう西蓮寺を狙っていない。信じられないかもしれないけど本当だ。あんな暴言を吐いたのに普通に許してくれた中筋の……キミのアニキの恩を仇で返すようなことはしないよ」

「お、お兄ちゃんが、中村先輩に恩を……?」

「真人と中村君はお友達なんだよ」

「そ、そうなの!?」

 美奈ちゃんは本当に驚いているみたいで、すごい勢いで首だけを回して私を見て、私が頷くと、表情はそのままでゆっくりと中村君を見た。

 真人から中村君のことを色々聞いて、美奈ちゃんは中村君を警戒していたのに、まさかふたりがお友達になっていたなんて聞いたら……うん、私もびっくりすると思う。

「まぁ、アイツが俺をダチと思ってるかはわからないけどな」

「きっと思ってるよ。じゃなければ中村君と連絡先の交換はしないと思う」

 真人はたまに自分を『陰キャ』なんて言うけど、言いたいこと……言わなければいけないことは言う人だし、その場の雰囲気に飲まれる人でもない。

 あの時真人は、中村君と連絡先を交換してもいいって思ったからそうしたに違いないよ。

「へっ……だといいけどな」

 目を閉じてそう言う中村君の口角は上がっていた。


 美奈ちゃんの中村君に対する警戒心が薄れた頃、私はどうしてゲームセンターの前にいたのかを聞いてみることにした。

「中村君はここで何をしてたの?」

「……」

 地雷なのは間違いなかったけど、中村君の答えにくい質問なのもわかっていたけど、聞いてみたいと思ってしまった。

 中村君も沈黙していて、喋り出す気配がない。

 や、やっぱりちょっと踏み込みすぎた……よね!?

「ご、ごめんね中村君、忘れ───」

「今日な、ダチがここで遊ぶって言っててな……」

 私が取り消そうと思った瞬間、中村君が重い口を開いてくれた。

 だけどやっぱり語るのは少し辛いみたいで、中村君は俯き自嘲気味に笑っている。

「俺も誘われたんだけどな。出禁食らってるから行けなくて、適当な理由つけて断ったんだよ」

「……」

「ここはガキの頃からよく通ってた……思い入れのあるゲーセンでな。自分のせいだとわかってるけど、ここで遊べないのも、ダチと来れないのも、今さらになってちょっとメンタルに来ちまってな……」

 このアーケードは、この辺りに住む人なら誰もが利用する場所。そしてこのゲームセンターは、このアーケード内で唯一のゲームセンター。

 私は真人にボディーガードをお願いする以前には来たことがなかったけど、ほとんどの男の子たちはここに足繁く通っていたはず。

 中村君もそのひとりで、ここは中村君の思い出の場所のひとつなんだ。

 そう思うのと同時に、私は美奈ちゃんの手を握ってゲームセンターへと走った。

「中村君、ちょっとここで待ってて!」

「お、おい西蓮寺……!?」

「お、お義姉ちゃん!?」

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