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第978話 信頼の結果

「……え?」

 ある程度は、そういう答えが帰ってくるとは予想していたけど、まさか本当に?

「……あれ? ……あんまり嬉しくない?」

「い、いや! すごく嬉しいんだけど……驚きの方が強いというか……え、マジで明奈さんがそう言ったの?」

「そうだよ。もちろんお父さんもいいって言ってるよ」

「マジかよ。弘樹さんまで」

 というか、高校生の娘が彼氏《婚約者》と同じベッドで寝るのを肯定してもいいのか? 弘樹さんは葛藤して許可をくれたイメージがあるけど、明奈さんはにこにこしながら秒で『いいわよ』って言ってそうだ。

「おふたりはなんて言って許可してくれたの?」

 まぁ、それはあくまで俺の勝手なイメージだから、実際にどうだったかを綾奈に聞いてみないことにはわからない。

「お母さんは概ね賛成だったんだけど、やっぱりお父さんに聞いてみないとってなって、それでお母さんがお父さんに聞いたら、すぐに『いいよ』って言ったって言ってたよ」

「マジで!?」

 明奈さんは概ね予想通りだったけど、弘樹さんは予想外だった。

「うん。お父さんがね、『真人君は約束を破る子ではないのはもうわかりきっているから、綾奈と真人君のしたいようにやればいい』って言ってくれたんだって!」

 綾奈は本当に嬉しそうに俺の腕に抱きついた。

 それを見て俺も歯を見せて笑った。

 ひとつは綾奈が抱きついてきたのが嬉しかったから、ふたつ目がさっき弘樹さんのモノマネをしていてちょっと似てるなと思って面白かったから。

 そしてもうひとつが、義両親が俺にほぼ全幅に近い信頼感を俺に抱いてくれていることへの嬉しさだ。

 あのおふたりにここまで信頼されているって思うと、やっぱり嬉しくって表情も保っていられないって。

 これからもあのおふたりの信頼を壊さないようにしないと。

 というか……。

「まぁ、そもそも約束を破る気なんてさらさらないし、家族勢揃いのあの家で綾奈にいつも以上のことをする勇気は俺にはない」

 綾奈の部屋の向かいは麻里姉ぇの部屋だし、弘樹さんたちの部屋も近い。防音もそこまで効いているわけじゃないのだから、そんな状況で綾奈にエッチなことなんてできるわけがない。

「うん。私も……さすがに困っちゃうかな」

 綾奈は苦笑いをしながら俺の腕を離して、手を握ってきた。


 綾奈と楽しくおしゃべりをしながら駅を目指し、そろそろ歩道橋が見えてきたが……。

「幸ばあちゃんたちはいないね」

 辺りをキョロキョロと探してみたが、今日は幸ばあちゃんと銀四郎さんは近くにはいないみたいだ。

 あのおふたりがいないとこうやって探すのが既に習慣づいている。

「この暑さだからね。おばあちゃんたち、お散歩の時間を早めているみたいだよ」

「そうなんだ。それを聞いてちょっと安心したよ」

 既にクソ暑い時間帯に歩いて、万が一熱中症にでもなったらシャレにならないからな。まだ朝の涼しい時間帯に散歩しているのなら安心できる。

 俺は綾奈を連れて歩道橋に近づく。

 なんで歩道橋に近づいているのかわからない綾奈から「真人?」と呼ばれるが、それには応えずに歩道橋に行き、手すりに触れる。

「あっつい!」

 予想した通り、手すりが太陽の熱でなかなかの熱さになっている。触れないこともないが、長時間触れていられない熱さだ。

「だ、大丈夫真人!? なんで手すりに……!」

 ちょっと綾奈に心配をかけてしまった申し訳なさを感じながら、俺は綾奈を見る。

「いや、幸ばあちゃんたちは手すりを掴みながら歩道橋を上ってるからさ、確かにこの時間は無理だなと……」

 改めて再認識した。あのおふたりが今の時間に散歩をすれば、いろいろリスクが増すし散歩の難易度も増す。

 綾奈が手を離して、俺が手すりを掴んだ方の手を両手で優しく包み込んだ。

「手すりを掴むなら最初に言ってね。真人の手がやけどしないか心配になっちゃうよ……」

「ごめんね。大丈夫だと思って……。これからはちゃんと言うから」

「……うん」

 綾奈は数拍間を開けてから信じてくれて、俺の手をゆっくり離し、逆の手を握ってきた。

 心の中でちょっと反省しながら、また楽しくおしゃべりをしながら駅に向かった。

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