第974話 盛り上がるアプリでのトーク
自室に行き、グラスをローテーブルに置き、ベッドに座ってメッセージアプリを開く。
リビングでみんなに麻里姉ぇの妊娠の報告をしている時にも断続的に通知が来ていたのだが、俺たち仲良しグループのメッセージの通知だ。
綾奈か千佳さんが麻里姉ぇの妊娠報告をして、それからトークが盛り上がってうるだろうな。
俺がグループトークを未読から読むと、綾奈がみんなに麻里姉ぇの報告をして、事情を知っている合唱部メンバーが綾奈に『おめでとう』を送り、何も知らない杏子姉ぇ、茉子、香織さん、雛先輩は相当びっくりしているようだった。
茜は一哉から事前に聞かされていたのか、リアクションは普通で『おめでとう』を送っていた。
トークを読んでいくと、何周目なのか、そして性別はどっちなのか等の質問に変わっている。やっぱりみんな最初に思うのはそこなんだな。
そして途中から俺と美奈の既読が付かないことを不思議に思っている話題に変わっている。そういやさっき美奈はスマホを持ってなかったな。部屋に置いて充電でもしてるのかな?
きっとみんなは既読がひとつ増えたのを既にわかっているだろうから、とりあえず何かメッセージを送ろうか。
【風呂入ってた。みんなずいぶん盛り上がってるな】
既読を付けなかった理由と、当たり障りのない会話への参入だ。
そしてすぐに複数の既読が付いて、最初にメッセージを送ってきたのはやっぱり綾奈だった。
【おかえりなさい真人。疲れは取れた?】
【うん。いいお湯だったよ】
本当はシャワーで済ませたけど、『お湯』なのは変わりないので大丈夫だろう。
もしこれがリビングで、もしも綾奈がいたら、きっと冷たい飲み物でも用意してくれているんだろうな……なんて想像していると、茉子と雛先輩からも同じようなメッセージが来ていたので、お礼と、綾奈と似たようなメッセージを送っておいた。
一哉【よ、叔父ちゃん】
茜【叔父ちゃーん】
「こいつら……!」
いきなり叔父ちゃんイジりをしてきやがって! 似たものカップルめ。
【叔父ちゃん言うな! まだ生まれとらんわ!】
叔父ちゃんになるのはまだ半年以上先だ!
【そういや、坂井先生がみんなに麻里姉ぇの妊娠の件を伝えたんだよな? どんな感じだった?】
うちの合唱部のみんなにももうその情報は耳に入っているだろうけど、やっぱりびっくりしたんだろうなと思いながら、一哉と健太郎に聞いてみた。
一哉【北内さんたちと同じようなリアクションだったぞ】
健太郎【うん。僕たちもだけど、本当にびっくりしてみんなで声を大にして驚いたよ】
さっきも読んだけど、トーク履歴を遡ってまた見てみると、香織さんも杏子姉ぇも、あの雛先輩でさえめちゃくちゃびっくりしているのがわかるメッセージを送っている。
まぁ、そうだよな。驚かない方がどうかしている内容だもんな。
一哉【お前は明日、他のみんなから色々聞かれると思うが、まぁ頑張れ】
俺【まぁ、そうなるとは思っていたからなんとかなるだろ】
いきなりだとしどろもどろになるけど、わかっていたらちゃんとみんなに説明できるだろう。
健太郎【僕もできる限りフォローするよ】
俺【ありがとう健太郎】
さすが健太郎。こういう優しさを前面に押し出すのが健太郎の美点のひとつだよな。
一哉も他人事のように言っているけど、いざとなったら助けてくれる心強いヤツなのは十分に理解している。
雛先輩【健ちゃん。真人君が困らないようにしてあげてね】
健太郎【わかってるよ姉さん】
俺【ありがとうございます雛先輩】
雛先輩は、きっとまだ風見高校在学中だったら、率先して俺のフォローに入ってくれそうだよな。文章だけでも本気度が伝わってくる。
だけど、みんなからの質問攻めは綾奈だって同じことだ。いや、実の妹だからこそ、俺以上に高崎の生徒に取り囲まれそうだよな。
俺【綾奈も週明けには気をつけてね】
綾奈【心配してくれてありがとう真人】
千佳さん【いざとなったらあたしもいるから、そんなに心配しなくてもいいよ】
俺【うん。お願いね千佳さん。大丈夫だとは思うけど千佳さんも気をつけて】
頼れるのは千佳さんしかいない。心強いけどもみくちゃになったら綾奈と一緒にケガをしない程度に逃げてほしい。そんなちょっと大げさな心配をしてしまう……。




