占い師
良い返事が聞けることを期待してギルドを出てから、サラボナさんから教えてもらった占い師の店へと向かう。
実際には自身の店ではなく、酒場の一区画を借りているそうだ。
なんでも、本人はあまり有名になりたくないそうで、家族が困らない程度に稼げればいいらしい。
酒場にはまだ昼間だということもあり、数人が飲んだくれているだけだった。
奥に黒いカーテンで仕切られた場所があり、多分あそこが占い師が借りている区画だろう。
聞いていたとおり有名になりたくないのか、看板の一つも置かれていない。
「見ない顔だな。席は好きなところに座れ。注文は何にする?」
カーテンで囲まれているところに入っていいのか迷っていると、酒場の店主らしき人に話しかけられた。
「ここで占いをしてもらえると聞いたんですが……?」
「ネロの客か。あいつは出掛けている」
「いつ戻るかわかりますか?」
「夜には戻るだろうが、急ぎなら孤児院に行ってみろ。どうせ今日もあそこだ」
孤児院か。
魔法学院に通っていたわけだからまだ子供というわけはないし、孤児院出身なのか?
いや、孤児院に通っていたら魔法学院には通えないだろうし、ボランティアでもしてるのだろう。
「ありがとうございます。次は食事を食べにきます」
「おう。そうしてくれ」
「まてー」「はははは」「こっちだよ」
孤児院に着くと、中から子供達の笑い声が聞こえてくる。
この孤児院は困窮していなさそうだ。
「すみません、ネロさんという方がこちらに来ていると聞いたんですがいらっしゃいますか?」
院長らしき女性がいたので確認する。
子供が好きそうなお婆さんだ。
「あなたは?」
「クオンといいます。ネロさんに占いをしてもらいたくてきました」
「私は当孤児院の院長をしています、グランマです。クオンさんはネロくんのことをどこで知ったのかしら」
占いをしにきたと言った時に、一瞬顔が強張った気がしたけど気のせいかな?
「以前、魔法学院にお世話になっている時に、学院長からスカルタに的中率の高い占い師がいると聞きました」
「それなら、ネロくんが魔法学院でどのような扱いを受けていたのかもご存知ということよね?」
院長の顔がまた強張る。
「いえ、知りません。僕はほとんど授業には参加していませんでしたし、在籍していたのも短期間ですので。ネロさんのことは学院を去る時に小耳に挟んだ程度です」
「そうなのね。それならいいわ。今のは忘れてください。ネロくんは裏庭にいるわよ」
魔法学院で何かあったということだろうけど、教えてくれる気はなさそうだし、聞かなくてもいいか。
裏庭では、歳がバラバラの子供達と、大人の女性が駆け回って遊んでいた。
あの子供の面倒を見ている女性がネロさんか。
男だと勝手に思っていた。
「僕はクオンと言います。ネロさんに占いをしてもらいたくて来たんですが、お願い出来ますか?」
ネロさんが近くに来たタイミングで手を上げて呼び止めて、用件を伝える。
「たまに勘違いされる方がいらっしゃいますが、私はモネです。ネロくんなら、あの赤いシャツの男の子ですよ」
確かに鑑定するとこの人はモネさんで、あっちの少年がネロくんだった。
まさか、子供だったのは驚きを隠せない。
魔法学院は短期の魔法を習得する方のコースだったということかな。
「失礼しました」
「ネロくんだね。僕のことを占ってもらいたいんだけど、いいかな?」
赤いシャツの少年に声を掛ける。
少し年下かな。12歳くらいだ。
「仕事なら夕方に『サザンカ亭』に来てよ。見ての通り忙しいんだ」
確かに営業時間が夕方なのであれば、言っていることは間違っていないが、どう見ても遊んでいるだけで忙しそうではない。
先程のモネさんは子供達が怪我をしないか監督しているという感じだったけど、ネロくんは一緒になって遊んでいるだけにしか見えない。
「夕方に酒場に行けば、何かを降臨させてくれるってことでいいかな?」
「……誰かに聞いたの?もしかして、まだ僕に……」
ネロくんの顔が曇る。
「いや、詳しくは何も聞いてないよ。魔法学院の学院長に君のことを教えてもらったとさっき院長先生に言った時に、何か酷い目に遭ったんだろうなと思うような言い回しをされただけで、君が子供だということもさっきまで知らなかったくらいだからね」
「ネロ兄ちゃーん!何やってるんだよー」
他の子供がネロくんを呼ぶ。
僕がネロくんを呼び止めたせいで、遊びが中断しているからだ。
「すぐ行くよ。なんでお兄さんが僕の秘密を知っているのか知らないけど、ここでは院長先生以外にはそのことを内緒にしているんだ。何か勘違いしているみたいだけど、占いなら店で待っててくれればするから、もう帰って」
ネロくんを鑑定した結果、占いに関係ありそうなのは『依り代』と『契約』というスキルだけだった。
そのどちらか、または両方を使って占いをしているのだろう。
しかし、それは孤児院のみんなには内緒にしていると。
「邪魔して悪かったね。それじゃあ夕方にサザンカ亭で待ってるよ」
夕方まで時間を潰して、予定が入ったから夕食は各自で食べるように既にギルドに来ていたケルトさんに伝言を頼んでからサザンカ亭へと向かう。
サザンカ亭でみんなで食べれば良い話ではあるけど、そうすると僕だけ先に占いをしてもらったことがバレるので、別行動させてもらう。
「ネロくんは来てますか?」
昼間もいた店主らしき人に聞く。
店内は昼間と違い、かなり賑わっていた。
「呼んでくるから、あそこの中で待ってろ」
「ありがとうございます。その後食事もさせてもらいます」
「おう。席を空けといてやる」
「……占う前にお兄さんが何者なのか聞いてもいい?」
黒いカーテンで囲まれた場所で少し待っているとネロくんが入ってきて、僕の正体を聞かれる。
「僕が何者か……ね。どうせだからそれも占ってもらえるかな?君の腕が確かかどうかわかるから。もちろん、その分も追加でお金は払うよ。いくら払えばいい?」
「お代は銅貨1枚と、結果を聞いて払ってもいいと思える額を上乗せして払ってください」
王都の占い師に比べて、銅貨1枚というのは格安だけど、それは上乗せされると自信があるということかな。
「わかったよ。少なくとも2度占ってもらうから、最低でも銅貨2枚は払わせてもらう」
後払いでよさそうな雰囲気だけど、銅貨2枚を机の上に出しておく。
「それじゃあ、占うよ」
ネロくんはポケットからカードを取り出してシャッフルした後、机に並べていく。
タロットカードみたいなものかな。
詳しいわけではないけど、あの絵柄を見たことはないから、僕の知っているタロットとは別物のようだ……。
「占いの結果を伝えます。お兄さんはたくさんのお金を持っています。お兄さんを慕う人も少なからずいるみたいですが、お兄さんを恨む人もいるようです。お兄さんには裏と表の顔があるようです。二重人格……に近いけど、なにか根本がそれとは違うのかな」
「なるほど。それで、僕の正体は?」
的外れなことは言ってないな。
普通に暮らすには困らない程度にはお金を持っており、騎士団長だから当然団員もいる。田中君や狩谷君には恨まれているだろうし、ゲームと現実という意味で裏表があるともいえる。
「当てはまるのを考えると…………高ランクの冒険者のリーダーというところかな」
「残念。冒険者だけど、僕はCランクだよ。ただ、占いの結果は当たっていたね。そのカードを少し見せてもらえるかな?」
「汚さないでね。大切なものだから」
占いに使っていたカードを借りて、鑑定する。
『<×→4^×♯』
なんだこれ?文字化けしているな。
ゲームのシステムと考えると、バグだよな。
正式アップデートの前に無理矢理、次回実装アイテムを入手すると文字化けすると聞いたことがある。
そう考えると、このカードはこの世界に本来ある枠の外のアイテムということなのか?
「ありがとう。君の占いはそのカードによるものなのかな?」
「そうだよ。お兄さんは僕のスキルのことを知ってるみたいだったけど、あのスキルは僕の意思によって発動しないから、占いとは関係ないよ」
ネロくんが言っているのは依り代の方のスキルかな。
依り代にはなれるけど、憑依させるものを自身で選んで呼ぶことは出来ないのだろう。
なんとも不十分なスキルだけど、僕としては当初の目的である占いをしてもらえるなら、やり方は関係ないか。
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