模擬戦 2回目
僕はアリオスさんと訓練場に移動する。
「部下には出て行ってもらった方がいいだろうか?」
訓練場で衛兵の方々が訓練をしており、アリオスさんにどうするか聞かれる。
「危なくないように近づかないようにしておいて下さい。それから見学してもらっても構いませんが、もしカラクリに気づいた方がいたら、他言しないようにしてくれれば、僕の方に問題はありません」
「それなら模擬戦を見るのも訓練になるから見学させることにしよう」
アリオスさんは訓練中の衛兵に声を掛けて、訓練を中断させて場所を空けてもらう。
「これから私とこちらのクオンとで模擬戦をおこなう。戦い方として参考になることもあるかもしれない。心して見るように」
「「はい!」」
「クオンの攻撃には秘密があるようだ。もしカラクリに気付いたとしても、他言無用とする。私にも言わないように。わかったな」
「「はい!」」
「これでいいだろうか?」
「大丈夫です。ルールは前回と同じでいいですか?アリオスさんからは攻撃しない。僕はアリオスさんに一撃入れたら勝ちということで」
そうしてくれないと一瞬でやられて終わりだし、勝ち目が全くない。
「ああ、それで問題ない」
「わかりました。それでは休憩を挟んで2回やりましょうか」
「いいのか?」
「大丈夫です。それから、もしも僕がまたアリオスさんに一撃入れることが出来たら、必要になった時に第1騎士団団長に推薦して下さい」
「……いいだろう。私に決定権はないから、なれなくても恨むなよ」
「それはもちろんです。1度目は使い方は変えますが、前回と同じ方法でやらせてもらいます。2度目は僕自身の腕試しとしてもやらせてください。あれからダンジョンに潜っていましたので、やれることも増えてます」
「了解した。君の好きなタイミングで掛かってきてくれて構わない」
「ファイアーボール、ウォーターボール」
僕は火球と水球を10発ずつ放つ。
もちろん、前回と同じことをすると宣言してあるので、幻影を混ぜている。
幻影も含めれば40発程の同時攻撃だ。
前回と同じことをすると宣言している以上、アリオスさんは避けずに斬って対応しようとするだろう。
今回は本物の魔法の後ろに幻影を付けてみたり、幻影で本物の魔法を挟んでみたりとバリエーションを多くしている。
さて、どうやって対応するだろうか……。
アリオスさんは本物の水球と火球だけを全て斬った。
幻影で作った水球と火球はアリオスさんに当たるが、水が滴り、燃えているように見えるだけで、実際にはダメージの1つも与えていない。
自身の体が燃えているわけだけど、アリオスさんが慌てる様子もない。
慌てているのは見学している衛兵達だけだ。
「流石に同じ手は通用しませんね。降参です」
僕は幻影を解いて負けを認める。
当たったように見せていたのは、見学している衛兵の人達に幻だと悟らせない為だ。
全て斬ったのであれば、言い訳の付けようもあるけど、これは完全に負けである。
こうなるだろうとは思ったけど……。
「やはり推測通りだったな。だが、初見でこれを見抜くのは至難の技だ。前回のことがなければ私は一撃くらっていただろう」
「兵長、お怪我は無いのですか?」
見学していた衛兵の1人が聞く。
あれだけ燃えていたのだ。普通の人なら怪我どころか死んでいる。
「問題ない」
衛兵達はアリオスさんが攻撃に耐えたと思ったのかもしれないな。
「少し休憩させて下さい」
疲れているわけではなくリキャストタイムが切れるのを待ちたいわけだけど、幻影のカラクリとは違い、これは絶対にバレるわけにはいかない。
同時にいくつものファイアーボールを放てるのに、実は連射が出来ないとか弱点以外のなにものでもない。
「大丈夫です。整いました」
リキャストタイムが切れるまで休憩した後、アリオスさんに2戦目にいけると伝える。
「こちらはいつでも大丈夫だ。好きなタイミングで掛かってきてくれ」
「次は本気でいきます。先程が手を抜いていたわけではないですが、今度は本気でアリオスさんを倒して……いえ、アリオスさんに傷を負わせてみせます」
さて、アリオスさんにどこまで通用するか……。
「……ああ。それは楽しみだ」
「ストーンバレット、ファイアーボール、ウォーターボール」
火球と水球の他に、石礫を飛ばす。
先程と同じく幻影も使っているが、他にもさらに他のスキルを使う。
先程と同じようにアリオスさんが剣を僕の目で追いつかない速さで振り、火球、水球、石を斬る。
そして、アリオスさんが濡れ、燃えて、石が砕ける。
「アリオスさんは本当に人間ですか?」
僕は幻影を解いてから、何事もなかったかのように平然と立っているアリオスさんに聞く。
石礫は確かにアリオスさんに直撃した。
なのにアリオスさんに傷を付けることなく砕け散った。
ベアーウルフくらいなら軽く貫通するのに……。
僕が何をしたのか……仕掛けは石礫にある。
火球と水球に関しては1戦目と同様に幻影を混ぜて放っただけだ。
だけど石礫は違う。
僕はあらかじめストレージに入れてあったたくさんの石をストーンバレットと唱えるのと同時に取り出し、圧縮した魔力を指向性を持たせて解放することで射出した。
魔力の圧縮は魔力操作を取得することで使えるようになる。
本来の使い方は魔力を圧縮することで魔法の威力を上げるというものだが、リキャストタイムに関係なく雑魚敵を蹴散らすのにこの方法はゲーム内でよく使われていた。
結果として魔法の水球と火球の中に、ただの石が混じることになる。
だからなんだという話だけど、もちろんこれだけではない。
射出した石の半分には魔力操作で魔力を乗せ、残りの半分には幻影を被せた。
被せたのは本体よりも一回り大きい石の幻影だ。
魔力の乗っている石と幻影を被せた石。
アリオスさんが何を基準に本物の水球や火球と、幻影で作った偽物とを見極めているのかは知らないけど、魔力を感知しているか、幻影を感知しているか、又は目に見えるものと感じる気配の違いを違和感として判断しているのであれば、引っ掛かる可能性は十分あると思った。
アリオスさんは狙い通り魔力を乗せた石は剣で斬り、幻影を被せた石は無視した。
幻だから無視しても問題ないと判断したのだろう。
結果としてアリオスさんには幻影を被せた石が直撃したわけたけど、鋼鉄の壁にでもぶつかったかのように砕け散った。
「人間以外の何かに見えるのか?それで、今度は何をしたんだ?」
アリオスさんが聞く。
「秘密です。真剣勝負でなければアリオスさんを翻弄出来ることがわかったのは収穫ですが、攻撃が直撃して擦り傷一つ負っていないことにはショックしかありません」
「これでも王国最強だと自負している。不覚をとったとは思っているが、このくらいで怪我はしない」
「ちなみに魔法学院のダンジョンの10階層までの魔物は今の攻撃で即死でしたよ」
「私と比べるには相手が少し脆弱すぎるな」
「そのようですね」
「しかし、今回のルールでは私の負けだな。約束だから、君が第1騎士団の団長になりたいと望むなら私は君を推薦しよう」
「お願いします」
「よし、全員訓練に戻れ。何か身になると思って見学させたが、ベクトルが違いすぎて参考にならなかったな。こういう特殊な相手もいるとだけ覚えておけ」
「「はい!」」
ひどい……。
「では、僕も失礼します。この街を離れる時にまた寄りますので、さっきの答えがわかったら教えて下さい」
「正解だったら教えてくれるのか?」
「もちろん教えますよ。そしたら今度は僕が違う方法を考えます。当分真剣勝負での相手は務まりませんから、そのくらいはやらせてもらいますよ」
いつかは圧倒したいものだな……
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