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王立ヴィルム魔法学園入学式。
日本の9月と同じ時期、風の月1週目に行われ15〜18才の子女が3年間通います。
1年目は一般教養を学び、2年目からは日本の大学のような講義を受け単位を取る形になり、クラス外の授業受ける事も出来、外国留学、各単位を修めれば飛び級制度で卒業出来ます。
文武両道スペシャルS、魔術専門M、文官専門A、領地経営経済学&社交E、騎士Kの5クラスです。
ヴィルム王国では魔力があれば平民も入学出来、能力主義で爵位なくとも高位の役職につく事が可能、かつて平民から文官そして宰相まで上り詰めて叙爵された方もいたそうです。
反対に爵位持ちでも能力なければ高位役職にはつけません。
いよいよ明後日になり、先週届いた時も着てみたのですが、馬車に積む荷物に梱包される前に何となく新しい制服着たい気分になりました。
因みに制服、ブーツ、鞄、教科書などは国から支給されサイズが変わればお直し新調も学園御用達の店で可能。
貴族が高い授業料を払いそれが学園運営費になり、優秀な人材確保の為に平民は授業料も免除されています。
そして皆様聞いてください!!!王立ヴィルム魔法学園の制服は軍服デザインなんですの!!!二度言わせて貰います!!!ラノベの定番軍服〜〜!!!
前世でJKだった時セーラー服だったので、かなり萌えます。
上衣は男女共通で女子はロングスカート、日本のJKみたく膝下を見せるのはしたないとされてますの。
スカートは基本共布無地ですが、くるぶしが隠れない程度と規定に合えば個人的に刺繍などの装飾やデザインは有料で変える事が認められています。
靴は素敵なデザインの編み上げブーツ、男子はトラウザーズにロングブーツです。
わたくしの場合スカート装飾は上衣と同じ銀の刺繍、隠しポケットを多め、切り替えスリットが入っているデザインにしています。
魔法訓練出来るよう、高位貴族の娘の常としていざと言う時に乗馬、戦える事を重視し細工しています。
制服が届いた時に見守りくん部隊に回収されてましたが、身を護る物とはいえ学園に暗器の持ち込みは出来ませんよ?
「本当に良くお似合いです。…ヴィー様やっぱり私が付いて行った方が…」
「ハンナ、話し合ったじゃない?タウンハウスと行き来出来るとはいえ家族が離れて暮らすのやっぱり駄目よ」
ハンナ連れて行く予定でしたが、タウンハウスでマッサージの予約がポツポツ入るようになり負担をかけない為に学園寮にはラウラを連れて行く事にしました。
わたくし付きになって5年目ですし、予約の度にハンナが学園とタウンハウスを往復、その間ラウラと代わるのなら初めからラウラで良いと思ったからです。
「アナもまだ母恋しい年齢だもの。そうでしょ?」
「ヴィー様に従います。
お休みとかで帰って来られた時はお仕えさせて貰いますね」
ハンナと執事補佐エーリヒの娘、アナことアンナは5才、まだまだ甘えたい年頃。
シュナウザー家は従者も王立ヴィルム魔法学園の卒業が義務になっているので、いずれアナも入学します。
ラウラが卒業生で学園の内部に詳しいので助かります。
「ふふっ。ハンナのマッサージ目当てで試験明け休みの日にとかも帰ってしまいそうだわ」
「お待ちしています。でもラウラが何かやらかしそうな…ヴィー様にちゃんとお使え出来るか心配で心配で心配で」
ハンナとラウラは従姉妹なので辛辣です。
「まぁハンナ姉さま。最近はちゃん出来てます」
ぷくーと頬を膨らまし拗ねていて可愛いですわ。
「ラウラ入寮の準備出来てるの?後で私と再確認しましょう」
「はいハンナ姉さま。ヴィー様、今回の入寮にあたり普段お使いの物も全て新品を用意しています。
明日の夜、寝る前に身の回りでお気に入りの品など選んでいただきます」
「…わかったわ。ところで母上はどこにいるのかしら?」
折角制服着たので見せに行く事にしました。
「先程王城から御主人様が戻られ執務室に居られます」
そう言えば明日いよいよ聖女様の召喚儀式でしたわね。
執務室まで出会った使用人達に制服姿を褒めて貰いながら歩いていき扉をノックしようとした瞬間…
「どうしてそんな事になったんだ!!!」
バン!!!扉越しでも聞こえる大きな音、普段穏やかな父上が机を叩き大声出すなんて、何があったんでしょうか?
「そう言われても仕方ないじゃない。…あら来たのね」
気配で扉前にいるのがバレてますが礼儀は大切です。
コンコンコン。
「ヴィーです」
「入れ。どうした?」
ガチャ。
一瞬でいつもの穏やかな笑みなのは流石ですわね。
執務室には母上にセバスじいも居て込み入った内容になるかもなので、念の為にラウラは扉の外に控えて貰います。
「明後日入学式ですので制服着てみましたの」
「なんて可愛いんだ私のヴィー!!!」
両手広げ思い切りハグされそうになるのをサッと躱します。
おにゅーの制服しわくちゃにされたくありませんわ。
「なにやら不穏な雰囲気でしたけど何かありました?」
「いやヴィーには関係ない」
えぇ…絶対にわたくしに関係ありそうですけど。
ここは空気を読みスルーします。
「編み込みして白のレースリボン可愛いわね。ラウラにして貰ったの?」
「はい。制服似合います?」
くるりと回ったらスカートがふわりとなり…。
「ヴィーちゃん!!!とても似合ってるわ」
デザイン相談してたので出来上がりに満足のようです。
「えっ?!そんなに深くスリット入れてるのか‼?」
父上どこ見てるんですか。今更変更出来ませんよ?
「いざと言う時の為に色々細工しております」
セバスじい冷静過ぎです。
見守りくん部隊が制服にどんな細工をしたのやら…後で詳しく聞かねば。
セバスが内鍵をかけ振り向き、父上がさり気なく防音魔術発動させました。
「明日聖女召喚儀式がある。
シャルとヴィーが広間で立ち会う事は出来ないが、学園でのお世話係として儀式後聖女様に引き合わせる予定になっているので共に控えの間にいるように。
ヴィーが前世持ちだから話も合うだろう。あれからどの位思い出したんだ?」
「はい父上。どんな死にかたか覚えてないのですが、16才までの記憶しかないのです。思い出すのもポツポツで、頭に靄がかかった感じで、まだ曖昧なんですの」
「まぁ…ヴィー。そんなに若かったの?」
母上がうるりと涙目でふわりと優しく抱きしめてくれました。
「…そうか。前世は残念だったが、私達がいるよ」
父上が母上ごと後ろから優しく抱きしめてくれました。
前世では16才で死んだけれど、その後を異世界で生きていけるのですからわたくしは幸せです。
「聖女様…家族から引き離されますのね…」
聖女召喚…転生して生き直すのではなく、無理矢理帰れない異世界にたった1人で連れてこられるのです。
コレって拉致誘拐と変わりません。
「なるべく身寄りのない方になる筈だ」
ここはラノベやゲームの世界でなく、現実の世界。
もし自身がその立場だったら…と、その重みを深く考えるのでした。
☆☆☆☆☆☆☆
お世話係の詳しい内容を聞き、部屋に戻り制服から部屋着に着換えました。
「ヴィー様。お疲れさまでした。」
ソファーに座ると同時にラウラがお茶を置いてくれます。
「…あらこの香りはセーロンティーかしら?」
ハンナとラウラは一番美味しい紅茶の入れ方を研究していて、どこからか珍しい茶葉を持ってきます。
「そうです。まだ飲んでないのに流石ですね」
よく見ると淡い水色、わずかにフルーティーな香りで飲んでみるとかすかな渋みをもったエレガントな紅茶。
ホゥと息がこぼれリラックス出来ます。
「実はこの紅茶、先日王家に献上されたものなのです。
聞いたところによると今年はわずか50キロしか収穫されてないそうで、今回ヴィー様が聖女様のお世話係されるので特別に分けて貰えたと奥様が」
後から来たハンナからの説明に驚きました。
そんな稀少な茶葉を頂いたなんて!!!
先程揉めてたのは聖女様か殿下関連…?後で高くつきそうな予感します。
「味わって飲まないとね…」
いよいよ明日ヴィルム王城にて聖女召喚の儀式が行われます。
夕食後間をあけ、ハンナのスペシャルマッサージでリラックスして眠りにつきました。
宜しくお願いします。