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【書籍化】ごめんあそばせ、殿方様!~100人のイケメンとのフラグはすべて折らせていただきます~  作者: 巻村 螢
第一章 ヒロイン転生したので、フラグ刈りを始めたいと思います。

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11・ラスボス登場!

 部屋は先程まで居たヘイレン国王の私室より一回り狭く、趣も随分と異なっていた。

 国王の私室は窓が多く明るく開放的だったのに対し、それに続くこちらの部屋には窓一つ無い。加え、壁一面に据え付けられた本棚には多種多様な本が所狭しと並んでおり、古紙と蝋の何とも言えぬ香りが部屋を満たしていた。


 床一面を覆う紺絨毯の上に置かれた一枚板の円卓。

 そこに彼等と彼女は居た。

 面立ちの良く似ている、自分より幾分か年上の男の子が二人。

 そして夢にまで見た、目を焼かんばかりの神々しい美しさを持つ女の子が一人。


「あれ、グリーズは居ないのかい?」

「グリーズ兄上なら、ご友人と狩りに行くとか何とか」


 ヘイレンは部屋を見回し少し残念そうに肩を落とすが、すぐに笑みを取り戻し隣に立つスフィアに「挨拶を」と促す。

 スフィアも言われたとおりに、目の前の三人向け頭を小さく下げる。

 しかし、いつもであればそつなくこなすそのお辞儀も、歓喜に手が震えスカートの裾を上げる手がぎこちなくなってしまう。


「ご、ご機嫌麗しく。レイランド侯爵家が長女、スフィア=レイランドでございます」


 スフィアの小さい身体が会釈と一緒に一段と小さくなると、円卓の方から男の子の声が飛んでくる。


「随分と小さいな。アルティナ嬢より小さくないか? 君いくつ?」


 矢継ぎ早な質問に、返礼もされていない身で答えても良いものかと、スフィアが困ったように隣のヘイレンを見上げる。


「全く。レディを困らせるもんじゃないよ、グライド」


 グライドと呼ばれた男の子――彼はこの国の第二王子だ。ゲームの攻略対象には入っておらず、スフィアにとってこの場では一番無害な存在と言えよう。


「挨拶もなしにレディに声を掛けるのは失礼だって、教えただろう?」


 ヘイレンが柔らかく嗜めると、グライドは「へへっ」と決まりが悪そうに微笑む。


「失礼致しましたレディ。では、改めまして――」


 そう言うとグライドは踵を揃え胸に右手を添え、寸分も軸を狂わす事なく綺麗に腰を折ってお辞儀をしてみせた。それはまるで紳士のお手本の様な挨拶だった。


「俺はアイゼルフォン家が次男、グライド=アイゼルフォン第二王子、貴上院の三年です。以後、スフィア嬢にはお見知りおきを」


 顔を上げたグライドと視線が合えば、彼はスフィアに愛嬌のある笑みと共にウインクをしてみせた。その姿があまりにも彼の闊達そうな黒の短髪と合っており、思わずスフィアも頬を赤くしてしまう。


「では私も……」


「来た!」と、スフィアは緩みかけた頬に力を入れ気を引き締める。


「同じく、アイゼルフォン家が三男、グレイ=アイゼルフォン第三王子です。貴幼院六年で学院と学年は違いますが、同じ貴幼院生として仲良くして頂ければ幸いです」


「レディ・スフィア?」と、視線を上げ微笑を湛える。こちらも負けじとイイ男を貫いてくる。

 灰がかった少し長めの髪に、学年は違うが同じ貴幼院生とは思えない物腰の優雅さ。大人になった時の姿しか知らなかったが、これは成程。ゲーム随一の人気キャラだけはある。

 正直、アルティナに惚れていなければ目の保養対象にしていたところだ。

 そして、スフィアは残った女の子に注目する。

 彼女は気怠げに椅子から立つと、スフィアがした時と同様にスカートの裾を持ち上げ、その白く華奢なおみ足をしならせた。


「ウェスターリ大公家が長女、アルティナ=ウェスターリですわ。貴幼院三年よ」


 にこりともせずに挨拶を終えると、アルティナはすぐに椅子に腰を下ろし、もうスフィアを見ようともしなかった。

 その、ついと明後日の方を向いて円卓に頬杖をつく姿は、どう見ても歓迎はされていないようだった。思わず見かねたグライドがアルティナの額を人差し指で弾く。


「アルティナ、そんな冷たい態度は良くないと思うぞ? 彼女はお前より幼いんだ。年長者であるお前が、そんな態度をしてどうする」


 グライドの言葉に、アルティナは不承不承と言った感じに視線だけをスフィアに寄越した。


「別に、そんなつもりはないわ。ごめんなさいね」

「お前はまたそんな風に! ほら、怯えて固まってるだろ!?」


 グライドが「見ろ」とばかりに腕を広げ、顔を向けた先に居たのは恍惚とした表情に目を細め呆けたスフィアだった。


 ――嗚呼! この冷たさ、邪険さ、高慢さ! 全てがアルティナ様だわ! 生まれた時から彼女は既にアルティナ様だったのね! 魂から高貴なのよきっと。つまり、彼女は顕界した女神なのね!?


 全く反応を示さないスフィアに、不安になったローレイが恐る恐る声を掛ける。


「ス、スフィア? その……大丈夫か?」 

「――ッ!! だ、い丈夫ですわ、お父様。ちょっと……いえ、皆様がとても優雅でしたので、見とれていただけですわ」


 声を掛けられたスフィアは慌てて呆けていた口元を手で隠し、さり気なく溢れかかっていた涎を拭う。


「それじゃあ、お互いに挨拶も済んだ事だし、私とローレイは隣の部屋に戻るから、好きなように遊んでいてくれ」


 そう言ってヘイレンとローレイが部屋を出て行くと、部屋の中は子供達だけになった。


お読みいただき、ありがとうございました。

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少しでも面白い、続きが読みたい、と思っていただけたら、どうぞ、ブクマ、評価をよろしくお願いいたします!


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[良い点] スフィア嬢つよい!
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