第29話 リラの魔人化
アリアとリラがベッド上で熱戦を繰り広げている頃・・・・
連れだって居なくなった二人を待っている間、俺は残った面子といろいろと話をしていた。
「なあ、二人共。ギルドマスターのリラ殿についてなんだが・・・、あの方はもしかして、『弓聖王リラ=アールブヘイム』様なのか?」
と、なにやら聞き慣れない言葉をリリーナさんが発した。なんだ?『弓聖王』って。『聖職』のひとつなんだろうか?すると、ミリアナが、
「うん。あたしもそう思ってた。生まれる前の話だから、うろ覚えだったけど、堕龍ファフニルを単独討伐したっていうなら間違いないよ。」
と答える。・・・リラさん、実は高名な討伐者だったんだな。しらんかった。しかも娘までいたとか、余り他人の過去には触れない様にしてたからなぁ。
「で、レオ様達は今後はエルフィリアを目指すのか?」
「う~ん、どうするべきだろうな。現状手掛かりも無いし、多分その方向になるかと思うけど・・・」
「・・・あたしはその前に一度、聖王国に顔を出したほうが良いと思う。あたし個人としてもあの国の方達にちゃんと謝罪しないと・・・」
俯きがちな様子でミリアナがそう言ってくる。・・・しかし、大丈夫だろうか?アリア自身はもう気にしていないだろうが、聖王国の面々はそうではないだろう。そうなるとミリアナの身が心配になってしまう。いろいろあったがミリアナはもう俺達の仲間だ。種族も同じ魔人だし、ミリアナが迫害されそうなら当然、俺は守るつもりだし、アリアも同じだと思う。でも聖王国の人達と敵対したい訳でも無いから何とも悩ましい。
「ミリアナ殿の気持ちは分かるが・・・相応の反発や中傷は覚悟すべきだぞ?大丈夫なのか?」
「大丈夫、かどうか不安もあるけど、やっぱり目を背ける訳にはいかないよ。今後、償っていくつもりだけど、犯した罪が消える事は無いし・・・。」
「そうか・・・。よし!であれば私も同行しようではないか! これでも勇者としてそれなりに信用もあるし、多少の緩衝材にはなるだろうしな! そもそもレオ様との仲を進展させて子種を提供頂く必要もあるしな!」
いい事言ってるのに最後に欲望ブッコんで来たな。・・・流石にさっきのアリアの激昂の後だから無茶な事はしないと思うけど。リリーナさん、なんていうか一見クールな美人風なのに喋ると残念な感じがちらほらする。所謂残念美人という奴だろうか?
「む!? レオ様? 何やらよからぬ事を考えていないか?」
「へ!? いやいや、そんな事無いぞ!」
それでいてアリア同様にこちらの心を見透かしてくるとは・・・、なんと厄介な。
「・・・・レオは基本顔に出やすいよ?内面とかいろいろと。」
「そうなの!?」
知らなかった!俺って顔に出やすいのか。・・・世捨て人生活長かったからなぁ。対人スキルが育ってないのかな? ま、まあ、その辺は今後修正していこう! それよりも今後の方針だな!
「オホン! まあ、ミリアナさえよければ一度聖王国に行くのも有りだと思う。アリアさえいれば転送門で一気に向かえるし。・・・そういや、ミリアナ?お前はどうやってあの短期間で此処まで来れたんだ?」
「え? ああ、あたしは『精霊街道』を使えるからね。転送門程では無いけど、普通に移動するよりはずっと速く移動できるんだ。」
「精霊街道?なんだそれ?」
また知らない言葉が出て来た。・・・う~ん、俺も勉強が必要かなぁ。
「ミリアナ殿、その精霊街道とはどういうものなのだ?私も初めて聞くのだが?」
とリリーナさんも質問してきたところをみると別に俺が不勉強だった訳では無さそうだ。よかった。
「あぁ、ごめんね。そうだね。精霊契約者じゃないとそもそも縁が無いものね。えっと、二人は『霊脈』とかは分かるかな? この世界を巡っている特別強い霊素の流れの事なんだけど」
ああ、それは知っている。霊脈とはこの『地星』の地中や空、あらゆる所に張り巡らされていると言われる霊素の流れの事で、『星の血管』とも言われている。
「精霊街道ってのは霊脈の中でも比較的おおきなラインを指してしてね。精霊達はそのラインを利用して世界を巡っているんだよ。で、精霊契約者、それもある程度精霊との親和性が高ければ同じく街道を通る事ができるんだ。あたしは、アリアの捜索をラースにお願いして、見つかってから改めて精霊街道を使ってこの地に来たんだ。その後は、以前話した通りだね。」
なるほど。超長距離転移門を使えないミリアナが短期間で来れたのにはそういう理由があったんだな。
「じゃあ、アリアが戻ったら改めて確認するつもりだが、とりあえずはミドランド聖王国に行くって事でいいかな? で、『神の企み』や『魔人化』関連を調べさせてもらうってことで。・・・あ、でも二人は、魔族との戦いについてはどうするんだ?二人共最前線の戦士だろ?急に抜けたら不味いんじゃないか?」
今更ながら二人が『特級戦力』である事を思い出したので、聞いてみる事にした。この件は現状俺だけの都合だし、下手に巻き込むのは気が引ける。ミリアナはまだしもリリーナさんはパーティメンバーでも無いし。
「あたしは大丈夫だよ。勇者パーティから正式に離脱する事は受理されたし。・・・新しい『聖者』様のお計らいでね。あたしも・・・今のアシュレーとは一緒にやっていけないと思ったから、丁度よかったし。それに家と領地の管理は元々家令に一任してたし、今でも時折は連絡はしてるから、ブレイブヤード王国でも現在のあたしの動向はある程度把握していて、その上で特に戻れとも言われてないから問題ないよ。」
そうなんだ。まあ、変に捜索されても困るが、ミリアナ程の戦士を放逐しても戦力的に問題ないとか、凄いなブレイブヤード王国。流石『勇者量産国家』とか言われるだけある。あの国はどういう訳か優秀な勇者や剣聖などの戦士職が他国より多く誕生する、不思議国家だったりする。・・・なにかあるのだろうか?
「私も、レオ様のおかげで当面の大敵討伐が出来たからな!パーティの皆も無事だったと連絡も受けてるし、暫く別行動を取る事も了解頂いているから大丈夫だぞ。流石に一人で行動するのは駄目と両親には言われたが、レオ様と一緒だと言ったら、「最低でも種付けしてもらうまで帰国しなくて良い」とお墨付きを頂いているぞ!」
おい!!それでいいのか大公家!!!自分の愛娘を会った事無い奴に捧げるとかどういう神経してんだよ!!?
「ハッハッハッ、問題ないぞ!両親にはレオ様の映像と共にその武勇をとっくりと説明済みだしな!レオ様が我が国に来訪される頃には立派な銅像が建っているかもしれんな!もちろん盛大に歓迎させてもらうとも!」
「ハァ!? 銅像とか勘弁してくれよ!?」
「でも仕方ないと思うよ。公国からしたら、サブノックスは正に仇敵だった訳だし、その打倒は悲願だたんだしね。まあ、甘んじて公国民の大歓迎は受けるのね。・・・銅像は断ってもいいと思うけど。」
そうだよね!銅像はマジで勘弁して!行った事も無い国に自分の銅像建つとかあり得ないでしょ!?
「むぅ。そうか。では仕方無い。銅像建立計画については白紙撤回するしかないか・・・」
け、計画って、そんなもんに金使ってないで、孤児院とかに寄付とかしたら?
「まあ、そうだな。うむ、両親とは話をしてみよう。」
ほっ。とりあえず銅像は無くなったようだ。よかった!ホント良かったよ!
などと、俺達が途中からしょうもない話で盛り上がっていた時に、丁度アリアとリラさんが俺達が居る会議室に戻って来た。
?アリアの様子がちょっと変だな。なんか顔を赤くして俯いている。しかも少しふらついている?対して、リラさんはなんかスッキリした表情でにこやかな笑みを浮かべている。
そして、その右脚は・・・治っている!!!魔人化が上手く行って欠損部も回復できたようだ!
その他の変化点というと、髪の色だな。元々は森人に多い明るい緑色だったのが、赤色のメッシュが入っている。それに何となくだが若返っているようにも見えるが、元々森人は成人してからの老化が非常に少ない種族なのでこれまでも若々しい雰囲気だったが、それを鑑みても更に若返っているように見える。だが、目の色は碧色のまま、肌色の変化も見られない。
「お待たせ。見ての通り賭けには勝てたわ。 これもアリアちゃんのお陰ね!」
と、意味ありげにアリアにウインクを飛ばすリラさん。アリアは、「ハハハ」と曖昧な笑いを返していた。
「え、えっとですね。こちらがリラさんの新しいステータスになりますね。」
半ば無理やりに話題を変えたアリアがリラさんの魔人としてのステータスを提示してきた。まあ、同じ魔人仲間になったんだし変に隠す必要は無いしな。
氏名:リラ=アールブヘイム
年齢:これを知ろうとする者には断罪の矢が刺さるだろう。
種族:魔人族
魂の位階:Lv.10
職業:魔弓聖(攻撃、防御、魔防、敏捷が大幅上昇、集中が極大上昇、弓使用時に威力補正大)
所属/ランク:討伐者ギルド/SS
【汎用スキル】
・弓術…弓に関するスキルの強化。本スキルを習得する事で『弓術士』の職業が選択可能
・剣術…剣術に関するスキルの強化。本スキルを習得する事で『剣士』の職業が選択可能
・魔導術(火、風、水、土、闇、特殊)…括弧内の属性魔導術の強化。
5属性の術を習得する事で『大魔導士』の職業が選択可能
・身体強化法…魂魄力オドを用いた身体強化が可能となる。魔導術による強化と併用可。
【固有スキル】
・精霊召喚…契約した精霊を召喚
・精霊矢…精霊の力を宿した矢を作成できる。
・無限魔導矢…魔力を用いて魔導矢を作成可。矢は魔力に分解、
吸収することで尽きる事無し。
・魔導矢加速…魔力を消費することで魔導矢、精霊矢を加速させる。
・召喚『神弓』…神弓『シャランガ』を召喚可能。
・絶対貫通…解放条件未達につき使用不可。
・魔人連鎖(1)…真に愛する者を魔人化する。
と、こんな感じになった。・・・年齢欄に不穏な文章が記されているがそっとして置こう。なかなかにぶっ飛んだ固有スキルがあるようだ。一部未解放状態だが。・・・どうしても魔人を増やしたいのか?
それにしてもランクSSの討伐者だったのか。。そんなランクの人がいるとは知らなかったな。魂の位階も俺の倍だし、リラさんて滅茶苦茶強かったんだな。脚が治った上に魔人化での強化も考えるとマジでとんでもない戦士が復活した感じだ。遠距離物理攻撃ができるのも良い。俺のパーティに入ってくんないかな?
「・・・どうやら、私も闇属性が使えるようになったみたいね。やっぱり『魔族』と何か関係あるのかしら?・・・まあ、随分能力面も強化されたからいいか。魔導矢加速なんてスキル増えてるけど、結構使えそうね、これ。」
うん。元々速い弾速を更に加速させるとか、近接職からしたら悪夢だな。それに未解放ながら絶対貫通とか訳が分からん。唯でさえ回避しづらいのに防御無効とか反則じゃないだろうか。ま、まあ、俺だって限界機動とか新スキル生えたしね!負けてない!・・・筈。
「良かったな、リラさん。これで『娘さん』を取り返す一歩が踏み出せるな。もちろん付き合わせてもらうぜ、俺も。」
「それを言うならあたし達だよ、レオ。」
「当然、私もですよ。そもそも魔王討伐は元々の使命でもありますし。」
「それならば私も手を貸すべきだな!これでも勇者だしな!」
皆も俺と同じ気持ちだったらしい。嬉しい限りだ。俺達の言葉にリラさんは一瞬眼を見開いた後に嬉し気に笑みを浮かべた。
「皆・・・ありがとう。じゃあ、私もレオニスの手助けをしないとね。どうかしら?私もパーティに入れて貰える?」
「大歓迎だよ!マジで助かる!・・・しかしパーティリーダーの俺だけAランクだとカッコが付かないなぁ。リラさんなんてSSランクだし。」
「あら?レオニスには話してなかったかしら? 貴方は今日からSランク討伐者よ。」
「はい!!?・・・どういう事?」
「実績面からすれば当然でしょ。貴方はあの魔王サブノックスを単独撃破したのよ?そんな人をAランクのままにはしておけないから、私の権限でSランクにしたわ。これでもSSランクですから、ギルド本部に対してそこそこ融通が利くのよ。」
「おお!良かったではないか、レオ様!」
「「おめでとう!レオ(さん)!」」
「ほっほ、良かったのう、坊主。これで収入アップすればわしへの食事も更に豪華にできるのう。」
なんといきなりSランクに昇格してしまった。・・・周りがSランクばかりだから錯覚しがちだがSランク討伐者なんて世界をみても二十人は居なかった筈だ。やったぜ、これで依頼報酬もアップするし、ギルドへの要求も通しやすくなるからいろいろ捗りそうだ。それはともかくヴォル婆は何で俺にたかる前提なんだろう?




