第26話 決着!
気がついたら、俺は勇者と思しき女性の前に立っていた。彼女を嬲っていた下衆野郎(多分魔王?)を蹴り飛ばして。・・・セーフだっただろうか?アウトだったのか? 気になるが流石に聞けない。とにかくこのあられもない格好をどうにかしてあげないと! と、思い、BOXから予備の外套を取り出して彼女に被せてやった。
「・・・遅くなって済まなかった。ここからは俺に任せろ。」
半ば放心状態にも見える彼女(勇者さんだよな?)に静かに語り掛ける。さっき迄酷い目に遭っていたのだ。声を荒げるのは良くないと思い、内心の激しい怒りはなんとか押し殺した。
しかし、『聖職』持ちの女は美人しかいないのだろうか?この人も凄い美人だ。紫色の髪をセミロングにしていて、空色の不思議な眼をした凛々しい感じの美人さんだ。・・・その人が涙で顔を濡らしている。その事実に俺は猛烈に腹が立っていた。・・・あの魔王は絶対にぶっ殺す!!!
「アリア! ここの皆の治療を頼む! 俺はあそこの下衆魔王をぶっ潰す!!!!!」
「分かりました! レオさんご武運を。」
俺はアリアに皆の治療を頼むと、先程蹴り飛ばした魔王の所まで歩を進めた。
『グヌヌゥ・・・なんだ貴様は!!!?』
「てめえの様な下衆に名乗る名はねぇよ。・・・さっさとくたばれ。」
俺は溜めこんでいた怒りをぶつける様に、神断の大太刀で斬りつける。奴も回避しようとしたが、速度が足りない為、避け切れずに胸をしたたか切り裂かれる。だが、切り裂いたはずの傷が瞬く間に再生した。・・・なんかめんどくせぇ奴だ。
『グハハッ、その程度では俺の『超再生』の敵ではないわ!今度はこちらの番だ!!!!』
今度は、魔王が大斧を振り下ろして俺を両断しようとしてくる。俺は振り下ろされた大斧の刃を左手で
掴み取った。・・・振りが遅いんだよ。 そして力任せに大斧を取り上げて後方に放り投げる。
『なぁ!? なんなのだ、お前は!!!!!????』
激昂した魔王が今度は俺に殴りかかってくるが、力はともかく速さが足りない。軽く見切った俺は、奴の拳を大太刀で防御がてら切裂いてやる。更に、斬撃を重ねて奴の全身を縦横無尽に斬りつけてやる。
再生するといっても痛みはあるのだろう。奴は溜まらず後ろに飛びのいて距離を取った。
『がああああああぁ!!! よくもこの俺に!!!!』
今度は大口を開いて火球を連射してきたので、それも大太刀で全て切り裂いてやった。
「なんだ? もう終わりか?」
『舐めるなよ!!! 『魔力全開放』ーーー!!!!!!!!!』
魔王の叫びと同時に奴の全身からどす黒い闘気のようなものが立ち昇った。その途端、凄まじい速度で俺に詰め寄り、右フックを放ってきた。――!!!、さっき迄と別人のような豪速の拳に俺は咄嗟に半身をずらして回避した。・・・身体強化の一種か? 確かに大幅に速度も力も大幅に増した様だ。しかし負担も大きいのか、早くも奴の全身から汗が噴き出ていた。
「へぇ。なるほど、身体強化系か。・・・・・・じゃあ、こっちも見せてやるよ。『限界機動』!!!!」
俺は、つい先日解放された新スキル『限界機動』を発動させた。それにより、俺の全身を漆黒の闘気が包み込んだ。
このスキルは、身体強化術式の超強化版のようなもので、全能力を大幅にUPするものだ。当然リスクはあって、兎に角魂魄力の消費が多く、長時間の発動は危険極まりない。何故なら魂魄力の枯渇はイコール死を意味するからだ。・・・だが、奴の再生を阻む為にもここで一気に木っ端みじんにすることにした。
『限界機動』を発動した俺の動きに奴は全く反応できなかった。そして奴は俺が繰り出した無数の斬撃を反応も出来ずに全て受ける事になり、結果、粉微塵と化す。
『――!!!!!!』
魔王は言葉も発せずに塵となって滅んだ。・・・『アモン』の鎧もだが、この『限界機動』も大概だな。 などと考えていたら、急に視界が真っ暗になり、俺はそのまま後ろに倒れ込んだ。
・・・・どうやら、調子に乗り過ぎて魂魄力の減少が危険域を超えてしまったようだ。
遠くでアリアとミリアナの叫び声が聞こえたような気がするが、そのまま俺は意識を失った。
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【SIDE:リリーナ】
私の前に突然現れた異形の『黒騎士』。・・・一体誰なんだろう?
でも、この人のおかげで私の『乙女』はなんとか守られたのだ。感謝に堪えない。
それにしても、不思議な鎧だ。何と言えばいいのか、一見金属製に見えるのだがどうも違う。そう、まるでこういう外骨格の生物がいるのでは?という印象で、なんとも有機的なフォルムと質感なのだ。そう、もう滅茶苦茶格好いいのだ!!
そもそも私が大ピンチの時に颯爽と現れた所といい非の打ちようの無い格好良さだ!もっと良く視たい、と体を起こそうとするも私は四肢をあの下衆魔王に杭で地面に打ち付けられており、身体を起こす事も出来ない。・・・て、いうかお股をおっ広げたはしたない姿を見られた!? もう超ショックである。お嫁にいけない!!・・・なんてことを脳内で考えていたら、黒騎士さんがこちらを振り向いた。
「・・・遅くなって済まなかった。ここからは俺に任せろ。」
と言いながら、さり気無く外套を私の身体に掛けてくれた。おぉ、なんとも紳士的だ!これもポイントが高い!もう私を嫁に貰ってくれませんか!?・・・あられもない姿見られちゃいましたし。
さっきまでは絶望感で一杯だったのに、黒騎士さんがいるだけで何故だか私の心は得も言われぬ安心感で一杯だった(手足に杭打たれて超痛いけど)。だから先程から埒も無い妄想を考えていられるんだけど。・・・まあ、任せろって言ってくれたし、今の私では戦力にもならないので、見守る事にしよう。
「暗黒完全蘇生術式!!!」
突然、術式発声の声が響いたと思ったら、私の身体を温かい闇色の光が包み込んだかと思うと、次の瞬間には、体中の怪我が完治していた。・・・どうやら声も出る様になったようだ。一体誰が、こんな凄い回復術式を?
「大丈夫ですか、リリーナ様?」
ん?・・・どこかで聞いた事のある声が・・・あ!まさか!? 私が自由になった身体で慌てて振り向くと、
「お久しぶりですね。勇者リリーナ=メルフィス様。」
なんとそこには、あの聖女アリアレーゼ=オニキス殿が佇んでいた。・・・ほ、本物!? 彼女は星の裏側の最前線の戦場にいるのでは!?なんでこんな所に!?・・・待てよ?顔と声は確かに彼女だが、髪の色がプラチナブロンドから銀髪に変わってる。そのせいなのか、記憶にある彼女より、なんというか色気が増している感じだ。 相変わらず反則級な美貌の持ち主だよね。私も結構イケてると思うのだけど、彼女を見ると自信を喪失してしまいそう。それは兎も角どういう事なのか尋ねようか。
「貴方は・・・アリアレーゼ殿? どうしてこんな所に・・・?」
「それは・・・いろいろありまして、後で説明します。それよりも御身体は大丈夫ですか?」
「あ、はい。お陰様で。・・・その、何故髪の色が変わっているのですか?・・ハッ!! そうだ!さっきの超素敵な黒騎士さんは!?」
「え?・・黒騎士?・・あぁ、レオさんですか。 彼なら、あそこに。 あ、あと髪の件も後で説明します。」
アリアレーゼ殿が指さす方向を見遣ると、そこは驚愕の事態になっていた。黒騎士さんがあの魔王を圧倒していた。・・・・・・信じられない強さだ。本当に何者なのだろうか?
「彼はレオニス=アーカイン。討伐者で・・・私の夫です♡」
「・・・・・・・ハッ!、お、お、夫ぉーーーーーーーーーー!!!!!??? ど、どういう事!? 貴方、いつ結婚したの!!?? 」
「えっと、今日・・・です。」
アリアレーゼ殿が恥ずかしそうに頬を染めつつ、とても嬉しそうに答える。対して私の気持ちは、ガーーーーン!!!!の一言だ。何故だ!?共にお一人様同盟を組んだ仲では無かったのか!!?
「そのような不名誉な同盟に参加した覚えはないですよ?」
心の叫びを聞かれてしまったようだ。・・・落ち着け。そもそも今は戦闘中なのだ。なのになんでこんなに私も彼女もまったり出来ているんだろう?
「大丈夫ですよ。彼は勝ちますから。 『精霊深化』したミリアナを瞬殺したくらいですから、あの程度の魔族なら一人で倒しきれます。」
「!?、あの剣聖ミリアナ殿を瞬殺!!!??」
またしてもびっくり発言が!・・・『精霊深化』を使用した際のミリアナさんの馬鹿げた強さは私も知っていたので、それを圧倒できるとは驚きである。・・・でも、瞬殺って、ミリアナ殿は死んだ?
「ちょっと、アリア!! あたしは別に死んで無いよ!」
またまたびっくりである。今度は剣聖ミリアナ=ヴァレンティ殿が現れた。・・・あぁ、そうか、確か二人は勇者アシュレーさんのパーティを離脱したと聞いたな。でも、なんでこんな場所に??
「そこも少々事情がありまして。 ミリアナ、負傷者の方達は?」
「あ、うん。皆ちゃんと回復してたよ。・・でも魂魄力の消費が大きくて皆気を失ってるけど。一か所に集めておいたよ。」
「そう、ありがとう。・・・ミリアナ、こちらは勇者リリーナ様よ。覚えてるでしょ?」
「うん、もちろん! お久しぶりですね、リリーナ様! レオがいれば大丈夫だから安心してね!」
ん?どうにもミリアナ殿も黒騎士様と親し気な様子。・・・でも、彼はアリアレーゼ殿と・・・ハッ、まさかの愛人関係!?
「ち、違うよ!? ただの仲間だよ、仲間!・・・・・・・今のところは。。」
と、あわわっとしながら顔を赤くしたミリアナさんが答える。私、まだ何も言ってないんだけど。
とりあえず今の所は、愛人さんでは無いらしいがなんか時間の問題って感じか?流石、黒騎士様! やはり英雄、色を好むって奴なのか?・・・私もハーレム要員に加えて貰おうかな?
などと呑気に談笑していたら、いきなり魔王の魔力圧が急上昇したので慌てて見遣ると、更にパワーアップしたようだ。彼は大丈夫だろうか? そしたら、今度は、黒騎士様までパワーアップした!! その威圧感が途轍もない事になっている。正直、距離をおいた此処まで息苦しさを感じてしまう程だ。どう見ても魔王サブノックスの比では無い。もはや勝利は確定か。・・・なんだか急に自分がとても小さい存在に感じてしまった。本当なら私がこの手で奴に引導を渡したかったのだが・・・・。
私が彼我の実力差に落ち込んでると、どういう訳か、アリアレーゼ殿が慌て始めた。
「レオさん!? 何故そのスキルを今!? 魂魄力を消費した状態でソレを使ったら――――!!!」
魔王サブノックスは、黒騎士さんの無数の斬撃により、文字通り塵と化して滅んだ。直後、黒騎士さんがぶっ倒れた。・・・・・あれ?どうなってるの?さっき迄余裕があった様だったのに!?
「レオさん~~~~!!!!!」
「レオーーー!!!?」
アリアレーゼ殿が見た事無い程慌てた様子で彼の下に走っていった。同じくミリアナ殿も慌てて駆け寄っていく。・・・大丈夫なんだろうか?
それはそれとして、私もそろそろ自分に起きた異変を無視出来なくなって来た。どうしたのだろう?なんだかとても身体が熱い。端的にいうと私は酷く欲情してしまっているようだ。魔王のせい? 違う気がする。あんなの眼じゃないくらいに発情してしまってる。もしかしてさっきの回復術式のせいなのか?
・・・まあ、こうなったら黒騎士さんに慰めてもらおう!そうしよう!




