第23話 討伐者ギルド
昼食の後、俺達は討伐者ギルドに到着した。一ヶ月ぶりの訪問になるが、此処の所色々あり過ぎて妙に久しぶりな気分になった。俺、種族変わっちゃったしなぁ。・・・まあ、何とかなるだろ、多分。
気を取り直して、俺を先頭に四人でギルド内に入る。俺は迷わず、ある受付嬢の下に向かった。
「よぅ。久しぶりだな。元気にしてたか、レミリア?」
俺は馴染みのというか俺担当の受付嬢のレミリアに声を掛けた。討伐者ギルドでは、ギルド入会時に『担当』の受付嬢がそれぞれ付く事になっている。で、担当した討伐者が功績を上げる毎に受付嬢も評価され、査定が上がり給与も増える、という事で積極的にサポートしてくれるのだ。レミリアも同じで、俺は現在Aランクなので彼女も高い評価を受けており、結構な高給取りだったりする。ちなみに彼女の容姿はなかなか可愛らしく、そして何と言ってもお胸様が凄いのだ!もう、たゆんたゆんしているのだ!素晴らしい!!
「はい!?・・・え?・・もしかして、レオニス君!? ど、どうしたのその頭!?」
・ですよね。・・・なんかもう答えるの面倒くさくなってきたなぁ・・。まあ、仕方ないか。それにレミリアは、俺の『固有スキル』を知っているからな。
「・・・固有スキルを解放したんだよ。」
「!!ッ・・・そ・う・・なんだ。 で? 大丈夫なの!?」
「ああ。髪と眼の色が変わった以外は特に変化無いよ。・・・それより、今日は魔獣の素材の買い取りとパーティ登録をお願いしたい。・・・・・それと、その、入籍の手度続きも頼む!」
「あ、ハイハイ。魔獣の方は、裏の解体倉庫に出してもらって・・・パーティ登録・・・と、入籍ィ!!!!??? だ、誰と!!!!!???」
「声がデカい!」
いやいや慌てすぎだろ?・・・いや、驚くか、そりゃ。これまで半分世捨て人みたいな生活してたしな。それとあまりデカい声出すんじゃない。俺のプライバシーはどうなる。
「ご、ごめん! つい。・・・で、パーティは後ろの三人と?・・・お嫁さんはどの人?」
「私がお嫁さんです。アリアレーゼと申します。よろしくお願いしますね。 パーティは彼と私、それからこちらの女性の三名でお願いします。」
すかさずアリアが発言する。さらにパーティメンバーについても俺と自分、そしてミリアナであると説明した。 あれ? 別に俺が言えばよくない?・・・言いたかったのかな?お嫁さんって。ハハハ、なんか照れるな。
「わぁ・・凄い美人・・こんな綺麗な人見た事無いよ・・ハッ、済みません! 畏まりました。すぐに手続きしたいと思いますので、こちらに必要事項を記載お願いします。」
と、入籍用の書類を差し出して来た。実は、婚姻の手続きなどの諸手続き等もギルドが取り扱っている。本来は町の管理運営を執り行っている領主旗下の役場で行うのだが、ギルドで代行もしているのだ。で、討伐者や探索者としてギルドに登録しているメンバーは大概、ギルドで済ませるのが通例だ。面倒が減るし荒事稼業の討伐者などは一般市民からすると物騒に感じるようで、あまり役場に立ち寄る事は無い。
まあ、日頃から武装して出歩いてる事が多いから危険視されるのは仕方無いのだが、実際にギルドのメンバーが悪事を働くケースは非常に少ない。ギルドが責任をもって管理・監督してるし、実際に悪事を働こうものなら、ギルド総出で捕らえられ、厳罰に処せられるからだ。当然ライセンスもはく奪されるし、ライセンスが無ければ数々のギルドメンバー特典(各購入品の割引や低ランク者には金銭援助など)も受けられない。・・・中には勘違いした馬鹿もいるが少数派といっていい。
ともあれアリアは書類を受け取り、サラサラと綺麗な筆跡で必要事項を記載していった。字も綺麗だなぁ、アリア。俺は癖字が強いのでちょっと羨ましい。・・・まあ、アリアがほとんど書いてくれたので俺はサイン書くだけだけどね。
「これでよろしいでしょうか?」
「・・・・はい! 問題ありません。・・・アリアレーゼ=オニキス様・・・・あのぅ・・もしかしなくても『聖女』様、ですよね?」
「元、ですねどね。よくご存じですね? ここは聖王国から随分離れているのに。」
「いやいやいや、当然ですよ! 『史上最強の聖女』様のご高名は大陸全土に広まっていますから!」
・・・へ?何、史上最強の聖女って!? それ回復職の通り名としてどうなんだ? で、言われたアリアはどうなのかと言えば・・・
「・・・・・・・」
アリアが羞恥に堪える様に俯いている。・・・うん、やっぱり不本意だよね、そんな通り名。まあ、大猪を錫杖投げつけて仕留めるし、見た目に反して大分武闘派だとは思っていたが・・。
「・・なんです、レオさん?」
ええぇ!?俺かよ!?笑顔なのに眼が笑ってない!大体俺が言ったんじゃないぞ!
「い、いや、アリアって有名なんだなぁって思っただけだよ?」
「はぁ、・・・まあいいんですけどね。 私は回復職だからといって近接戦闘出来ない事は無いだろうと考えたに過ぎないのですが。・・・結果、少々不愉快な呼ばれ方をするようになってしまいましたね。」
「そ、そうだよな。確かに強い回復職がいるとパーティも安定するしな。 でも、君の事は俺が守るから、あまり無茶な事はやめてくれよ?」
「!!ッ はい!もちろんです。」
今度は満面の笑みを彼女が俺を見つめてくる。くぅ、やっぱり可愛い! 暫く俺達がそうして見つめ合っている間に、
「・・・お二人さん、パーティ申請の手続きも終わったよ。」
と、ミリアナに声を掛けられて、「ハッ!」として二人してそちらを振り返る。・・・なんか恥ずかしい。頬が熱くなるのを感じる。ついつい見つめ合ってしまったよ。アリアが素敵なのがいけないんだ。
『全く・・・いちゃいちゃも大概にせえよ。 いい加減胸やけがしてくるわい。』
と、外見少女な年寄が苦情を言ってくる。俺達はすかさず詫びを入れる。
「あ、ああ。悪い悪い。」「す、済みません、つい。」
「ハハッ。仲が良いようで何よりです! ・・・ホント良かったぁ、レオニス君、おめでとう!! 私、ずっと心配だったんだ。だって、以前の貴方ってずっと過去を引き摺ってる感じがしてたから。」
「ありがとう。・・・まぁ、その通りだったな。・・でも、彼女の、アリアのおかげで前を向ける様になったんだよ。」
レミリアは本当に嬉し気にしきりに頷きを繰り返す。当然、彼女のたわわに実った二つのものがたゆんたゆんする訳で、俺はついつい眼を向けてしまう訳で、アリアの冷たい視線に我に返る訳で・・・いやぁ、あの揺れは反則だよね。・・・はい、済みませんでした!!
「はぁ、全く。そういうのセクハラですよ?・・・それで、レミリアさん、でしたか。ギルドマスターに面会したいのですが、可能でしょうか?」
男の本能に抗えない俺に呆れつつ、レミリアにギルドマスターへの面会をお願いするアリア。対するレミリアは、
「は、はい! アリアレーゼ様の申し入れなら問題ありません! それにレオニス君の事もありますし、こちらからも是非お願いしたいところですので。・・ ご一緒頂けますか?」
俺達はレミリアに連れられて、ギルドマスターの執務室に向かった。
執務室の扉の前で、レミリアが扉をノックすると、「どうぞ」と返事があったので入室する。その艶やかな声だけで扉の奥に美人が居るのを予感させる程。 そして扉を開いた先にいたのは・・・。
それは一人の森人の女性。そのやや目尻の上がった瞳の色は碧、豊かな髪は長く、緩くウェーブの掛かった緑色、耳は普人族に対して長く、その貌は端正そのものと正に森人の特徴を網羅している。更にスタイルも抜群で、170cmを超える長身にして、母性の塊のような豊満なバスト、深く縊れた腰の下には肉感的なピップと、所謂ボン、キュ、ボンを体現している。更に熟女特有の得も言われぬ色香が漂う、アリアやミリアナとは方向性の違う、大人の美女がそこにいた。
「どうしたの、レミリア? ん?・・・そっちの白髪頭の子は・・まさかレオニス!?」
ファイーア討伐ギルドのギルドマスター、リラ=ユーダリルはその碧眼を思わず見開いた。それはそうだろう。見知った俺の髪と眼の色が全く変わっており、しかもその原因を察するだけの知識が彼女にはあるのだから。
「ああ。久しぶり、リラさん。・・いや、ギルドマスターって呼んだほうがいいかな?」
「リラでいいわよ、いまさら。 それより・・・解放したのね、あのスキルを。・・・大丈夫なの?」
「ああ。見ての通りの変化はあるけど、他には特に影響出て無いよ。まあ、戦闘能力は大分上がったけどな。」
「そうみたいね。・・心の変化が無かったのなら一先ずよかったわ。詳細な事も話してもらえるわよね?後ろに控えたお嬢さん方についても・・。」
「もちろん。 と、いうかむしろその件で相談したくて来たんだ。」
俺はリラさんにこれまでの事を全て話した。ミリアナの件についても、だ。じゃないと、ミリアナの事を考えれば話さない方がいいのかも知れないが、あの二人の真実を知らないと、どうしてもミリアナへの悪感情が大きくなると思ったからだ。俺自身も、あの背景を知らなければ勇者はともかくミリアナの執着が理解出来なかったし。案の上、その話を出した時にミリアナの表情が曇ったのには心が痛んだがそこは堪えてもらいたい。成り行きで一緒に聞く事になったレミリアは何故が号泣しているが。
で、全てを聞いたリラさんが何に一番驚いたかといえば、・・・
「・・・なんていうか、随分濃い日々を送ったようね・・・。それにしても・・・そのお嬢さんが、『真龍族』で、あのヴォルカン火山地帯の『主』というのは本当なの?」
『うむ。誠じゃぞ。・・・なんなら少しだけ力を開放しようか?』
途端、空気の重さが何倍にもなったような重圧を全員が受けた。ヴォルカンが僅かに魔力を開放したのだ。
「おい!やめろ!もう十分だ!!」
溜まらず俺は止めに入った。 ちょっとであれかよ!・・・周りに迷惑だろうが。低ランクのやつら、粗相してなきゃいいが。
「う~~~っ、ちょっと漏らしちゃいました・・・。」
身近な所に被害者が出てしまった。・・・女の尊厳を守り切れなかったレミリアがぐすりと涙を浮かべながら呟く。 たくっ!ヴォル婆め!!
「す、済みません。・・・下着替えて来ます!」
羞恥に堪えかねたのかレミリアが部屋から飛び出してしまった。
「う~~む。 ちょっと悪い事してしまったかのう。」
「ホントだよ! ちょっと今のはやり過ぎだとあたしも思うよ。いい大人が粗相とか恥ずかしいんだよ?」
『ぬ? 何を言っとるか。儂の力に怯えて粗相かまさん奴の方が少ないんじゃ。そんなのは特に恥ではないわ。・・・儂が悪いと思ったのは、さっき女子の胎教に影響しなければ良いが、ということじゃ。』
「「「「え!?」」」」
ヴォル婆がまた凄い事を言って来た。胎教?・・・レミリアが妊娠してるってか!?
「なんじゃお主ら、気付かんかったのか?・・・まあ、まだ一月半といった所じゃから、本人も怪しいところかもしれんのぉ。・・・戻ってきたら教えてやったほうがええかの?」
「それってホントなのか?ヴォル婆。」
『本当じゃぞ。・・・なんじゃいヴォル婆って。また変な呼び方しよってからに』
いろいろ立て続けの状況に固まっていたリラさんがようやく復帰したのか言葉を発した。
「先程は疑うような発言をしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。・・・あの圧には私も覚えがありますので、貴方は間違いなく『主』様だと確信致しました。」
『まあ、分かればよいんじゃって』
見た目13歳の黒髪美少女がふんぞり返っている。何故かそれが様になってるから不思議だ。
と、そこに下着を履き替えたレミリアが戻って来た。急いで戻って来たのか息を切らしている。
「ハァ、ハァ、・・中座してしまい・・済みません。」
「問題ないわ。それよりも貴方に大事な話があるから、先ずはそこの椅子に掛けて息を整えて頂戴。」
リラさんの薦めに従い席に付いたレミリアが息を整えたところで、リラさんが話を切り出した。
「先程、こちらのヴォルカン様が教えてくださったのだけど、貴方、赤ちゃんを授かってるそうよ?もう知っていた?」
「え!? 赤ちゃん!? ほ、ホントですか!? ヴォルカン様!」
『誠じゃ。 おめでとう。で、いいんじゃよな?』
「ハイ! 教えて頂き有難う御座います! 確かに最近来ないのでもしかしたらくらいには思ってましたが・・・・・・そっか、これロイに教えてれば、いい加減プロポーズしてくれるかな。」
最後の方は小声だったが、普通に聞こえてしまった。 ロイの奴、まだプロポーズもしてなかったのか!? レミリアも20歳なんだしさっさと嫁にもらってやればいいのに。
ちなみにロイというのは、俺と同じAランクの討伐者で俺とは違い、自分のパーティを組んでいる。で、2年前からレミリアと交際しているのだが、イケメンで気持ちもいい好漢なのだが、何分奥手だったので、俺達ギルドの仲間たちで半ば強引にくっ付けた経緯がある。元々両想いだったからいいだろう。
まあ、どうやら俺のほうが先に結婚する事になったが、ロイもいよいよか。こういっためでたい事こそ連鎖してほしいよな。・・・・・・・・なんて甘い事を思っていたのがいけなかったのだろうか、
突然執務室のドアが勢い良く、バンッ、と開かれて、顔面を蒼白にした受付嬢が飛び込んで来た。
「マスター!! た、大変です!!・・・街の内部に、発生した迷宮の件なんですが!!!」
「何? その迷宮については、確かロイ達のパーティが対処に向かってる筈だけど・・・?」
「そ、それが、突然、迷宮内部に魔族の魔力反応が! それも、魔王クラスの反応なんです!!!!」
「え?・・・」
・・・なんだよ、それ?・・・『魔王』だって? 最悪にもほどがあるだろ。くそったれが!!!!!




