第17話 ミリアナの回想~奪われた絆~
「さて、国王陛下。そろそろ二人を例の部屋に移動させようと思いますが、関係者が揃ってますから、今後の方針について説明させて頂いてもよろしいですか?」
「うむ。よろしく頼む。」
陛下の了解を得た聖者カイルはおもむろに話を始めた。
「まず、アシュレー殿のご実家の件ですが・・・ご当主様には、去勢の上で隠居させてください。性癖というのは早々治るものではありませんし、跡取りが健在ならあの罪人には不要ですので。そもそもアシュレー殿を歪ませた原因ですから容赦はしないで頂きたい。
次に、アシュレー殿に当主の座を譲る際に、元々女性であったと公表してしまいましょう。アシュレー殿は元来女性と見紛う程の美貌の持ち主で体の線も細い方ですから、まあ、市井の方を騙すくらいは出来るでしょうし、どちらにせよ今後隠し通せるとも思えません。貴族方には箝口令を敷いて頂き、破れば厳罰、という事で。
これは我ら聖王国としてもメリットがありまして、我が国の『聖女』が勇者に強姦されて離脱、よりも女性同士のソレにした方が大分外聞も良くなりますし、勇者は女性ですからね。・・・まあ、大分強引なのは承知してますが、勇者の遊び相手達に相応の対応をすれば何とかなるでしょう。
で、先程言った通り、これから例の部屋を使わせて頂き、3日間お二人を私の自由に扱わせて頂きます。その後は、前線に赴きたく思います。」
カイルの要求に対し、陛下は全面的に承知した。聖王国との関係を保つ為、致し方無いのであろう。
「では、お二人共、お楽しみの断罪タイムの始まりです。」
と、カイルが満面の笑みをこちらに向けて来た。先程の話だけでもあたしは限界だったのに、これ以上何をされるのか?アシュレーはどうなってしまうのか、恐怖と不安で押し潰されそうだった。
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そして、『例の部屋』での監禁生活が始まった。そこからの3日間はあたしにとって、まさしく地獄だった。
まず、初日、部屋に連れて来られたあたし達が目にしたものは、大きなベットが二つだけという実に簡素なものだった。しかし、部屋の中に入った瞬間、全身の力が抜ける感覚と魔力操作が一切できないという状態異常に陥る事になった。
「この部屋は特別製でね。私が自らの能力を駆使して、強力な弱体化術式を発動させているんだ。この中では『勇者』も『剣聖』も唯の非力な人なんだよ。・・・もちろん私は除外されてるよ。
で、何をするかといえば、あ~、端的に言えば、アシュレーちゃんにアリアレーゼ様と同じ目に遭ってもらうだけです。で、ミリアナ殿には、一部始終を視てもらう、それだけですよ。どうですか?実に簡単で、効果的な罰だと思うでしょう?」
あたしはカイルが言った内容に激怒して、思わず殴りかかったが力が封じられた状態では如何ともしがたく、あっけなく制圧され、そのままベッドのひとつに放り投げられた。
すかさず起き上がり、再度カイルの方に駆け寄ろうとしたその時、
『動くな』
カイルの一言で、あたしは全く動きが取れなくなった。これは『言霊』!言霊を使った強制術式だ。ごく一部の強力な魔導士にしか使えない術式だが、平時のあたしであれば抵抗は容易だ。唯、この部屋では一切の魔力が使えないので抵抗も出来ない。・・・あたしは歯噛みしながらも言いなりになるしかなかった。
カイルは次にアシュレーをもう一つのベッドに放り投げた。そして『服を脱げ』と強制術式を使って、アシュレーを裸にした。アシュレーは意志に反した辱めを受けて、羞恥に肌を赤く染めていた。あたしはそんな状態でもアシュレーの事をひどく美しい、と感じていた。
「フフフッ。なんとも見事に『女』ですねぇ。それも極上と来ている。罰を下す目的とはいえ、役得ですねぇ。・・・じゃあ、早速始めましょうか。『仰向けになれ。』 」
命令されるまま、屈辱極まりない姿勢を取らされるアシュレー。
「やめて!!アシュレーに酷い事しないで!あたしがあんたの相手をするからーーーー!!!!」
あたしの叫びに対し、カイルは、
「いやいや、それじゃあ『罰』になりませんねぇ。貴方は『黙って見ていなさい』」
またしても、動きを封じられてしまう。しかも声すら出せない。その間にもカイルは自らの衣服を脱ぎ棄ててその鍛え上げられた肉体を露わにした。
「い、いやだ・・・やめて・・くれ。・・・やめて!」
アシュレーの懇願もカイルには届かない。むしろ怒気すら孕ませた声音で答えた。
「やめて、と言いましたか?・・・では、貴方はアリアレーゼ様が同じ台詞を言った時に止めてあげたのですか?そうではないですよね?・・・だったら、甘んじて受け入れるべきでは無いのですか?」
「!!」
その言葉にアシュレーの心は折れてしまった。そう、アリアに同じ屈辱を与えてしまったのだから。
「では、頂きましょうか。・・・大丈夫ですよ?すぐに気持ちよくしてあげます。そう、女の悦びを教えてあげましょう。」
そういって、カイルはアシュレーに覆い被さる。そして行為が始まってしまったが、あたしは文字通り視ているだけしか出来なかった。
何時間にも及ぶ凌辱の中で、アシュレーの様子に変化が出て来た。最初は、必死に拒んでいたものが何時しか抵抗は弱まり、最後には与えられる快楽に屈したのか自分からカイルを求める様になっていった。
あたしは、そんなアシュレーの姿から目を逸らす事もできず、ひたすら見続けるしか出来なかった。あたしの眼からは悔しさ、悲しさ等の負の感情で一杯の涙が止めどなく流れ出ていた。
二日目も初日と同じ事を強要された。もっともアシュレーは既に抵抗する事無く、むしろ積極的にカイルを求めて・・・。。いやぁ!いやぁ!!もうこんなのあたしに見せないで!!!頭がおかしくなってしまう!!!あたしの一番大事な人がが違う人になってしまう!!!!あたしから離れていってしまう!!!!!!
そんな絶叫も声に出す事も許されず、ひたすら心の中で叫ぶだけだった。・・・もうやめて。もうやめて、こんなの酷いよ!!・・・なんでこんな事になったの。・・そうか、あたしがアリアを裏切ったから、あたしが全部悪いんだ。――――だったら、あたしを犯しなさいよ!!!なんでアシュレーだけ虐めるの!?・・・・・・もう、やめてよ・・・。
そして、三日目が来た。・・・今日もあの光景を視なきゃいけないの?あんなふうに他の人を求めるアシュレーを見たくない!もう嫌だよ!!・・・・あたしの心は壊れる寸前だった。
だけど、今日は少し違った。カイルはベッドに寝ていたアシュレーに声を掛け呼びつける。そしてこういった。
「さあ、アシュレー。今日、君の口からはっきり、ミリアナ殿に伝えるんだ。今の君の本心をね。じゃないと、今日は君を抱いてあげないよ?」
「そんな!・・・・・・分かりました。伝えます。」
「うんうん。何事も言葉ではっきり伝えるのが大事なんだ。・・・さあ。」
カイルに促されたアシュレーがあたしのベッドの脇迄やって来た。あたしは今日もカイルの『言霊』に縛られて声も出せない。・・・ただ、黙ってアシュレーを見つめる事しか出来なかった。
「ミリアナ・・・・・僕は、騎士学校で最初に君に出会った瞬間に君を好きになったんだ。君の笑顔がとっても好きだった。・・・だから、君の笑顔を奪う奴が許せなくて、君の義父を手に掛けて・・・父の束縛から逃げる事が出来なくなって・・・それでも君の笑顔が守れればいいって思ってたんだ。
でも、やっぱり無理だっだ。・・・あとはカイルさんの言った通り、段々僕の中の黒い感情が抑えられなくなって、最後には君まで巻き込んでしまった。・・・本当にごめん。。」
違う!違うよ!全部あたしが悪いんだ!!あたしが・・・アシュレーの辛さに気付けなかったから。
だから、そんな事言わないで!・・・そう返事をしたいのに何も声に出せない。あたしに出せるのは情けない事に涙だけだった。
「それで・・・僕は・・身体が女性になった事で、今まで感じていた想いがどんどん変わっていくのを感じてた。全部の感情がじゃない、多分、僕が『男』して感じていた部分への実感が無くなっていったんだ。・・・君への想いも。」
!、な、なんて言ったの!?・・・あたしへの想いの実感が・・・無くなった?
「・・・もう、僕は君を愛する事が出来ない。もう、何も実感出来ない!まるで他人事みたいに!君だけじゃない。もう僕は『女性』に気持ちを向ける事が出来ない。・・・もう、僕の心は・・・女なんだ。
・・・だから、もう別れよう。勝手な事をいってごめん。でも、僕はもう君を満足させられないし、満足もできないんだよ。」
いやぁ!!!やめて!そんな事言わないで!あたしはアシュレーがいればいいの!男でも女でもあなたが居ればそれだけで満足なの!!!・・・なんで、そんな事言うの?お願いだよ、一緒にいてよ!!!
いやぁ!!いやぁ!!いやだよぉーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
アシュレーの別れの言葉にあたしは涙が止まらず、心ではいやいやと絶叫するばかりだった。
気が付くと、アシュレーもまた泣いていた。
「本当にごめん。ミリアナ。・・・魔族を殲滅して・・・全て終わったら、この命は君に差し出すよ。君が、殺してくれていい。・・・でも、今はまだ・・、今の僕にはカイルさんが必要なんだ。このおかしくなった心を壊さずにもたせる為に・・・彼が与えてくれる快楽が、必要なんだ。・・・だから、さよなら、ミリアナ。」
その言葉を最後に、アシュレーはカイルの下に戻っていき、彼の要求する仕草に従って熱く唇を重ね合った。・・・・・・奪われた。・・・大事な友達を・・・アリアを・・裏切ってでも、離したくなかったのに・・・・・。じゃあ、あたしには何が・・・何が残るの?・・一体何が!!!!?
「はい。この三日間お疲れ様でした。これで、私から貴方への『罰』は終了です。
どうですか?『大事なものを奪われた』感想は?・・・貴方がアリアレーゼ様から『貴方自身』を奪ったのと同様の事をする為に、結構頑張ったんですよ。主に精力面で。・・・アシュレーさん、女性になっても流石勇者、というか、体力ありましてねぇ。満足させるの実はギリギリでしたよ、ハハハ。
でも、頑張った甲斐がありましたね。貴方の絶望の表情が見れましたから。
私はね、貴方の事が一番許せなかったんですよ。身勝手な思いでアリアレーゼ様の信頼を裏切った貴方がね。・・・それにアシュレーちゃんは、アリアレーゼ様の『呪い』を受けた時点で罰は終了って思ってまして、この三日間、彼女を抱いてたのは、罰じゃなくて、私的には愛情でして。
そういう訳ですから、アシュレーちゃんは私が今後、しっかりお守りしますからご安心ください。
そうそう、私とアシュレーちゃんはこの後、前線基地に移動しますが、貴方に関してはしばらく自由行動にするように国王にお願いしてまして、了解をもらっています。しばらくご旅行にでも行かれたら如何ですか?・・・・・・・・・アリアレーゼ様に謝罪に行かれるとか?」
「!!!」
こいつ・・・今なんて言った?・・・アリアは無事なの!?
「アリアは・・・無事・・なの?」
「はい。ご存命なのは確実ですよ。なにせ『聖女』の職業が戻って来てませんので。おかしな話でしてね、確かに件の日に、彼女は『聖女』位の返上を宣言して大聖母様は受理された。なので、返納されてないのが異常なんですが、翻って考えれば、アリアレーゼ様が生きてるって事でもあります。聖女が無くなれば必ず返納され、即座に次の『聖女』が誕生するシステムですので。・・・おっと、口が滑りました。今のは内緒でお願いしますね。・・・この情報は、貴方へのサービスです。ちょっとやり過ぎちゃったかなって思ってね。・・・・・それでは、お元気で。」
そう言って、カイルとアシュレーは部屋を後にした。
あたしは、いまだ流れる涙もそのままに、なにをすべきか考えていた。・・・もう答えは出ている。
「アリアに会いに行こう。大丈夫。あたしには『ラース』がいるし、アリアの匂いを追える。
アリア・・・。あなたに会って、謝るよ・・・だから・・・あたしを・・・殺してね 」




