第14話 剣聖 ミリアナ=ヴァレンティ
ヴォルカンの言葉を受けた俺達は、急いで『主』の広場まで向かった。
そして、広場の中央で立ち尽くしている一人の女と巨大な白い狼のような魔獣?(ちょっと魔獣とは気配が違う気がする)がいた。女は長い金髪を所謂ポニーテールにして束ねており、全身が埃や泥にまみれていながらも、その容姿は非常に美しく、体つきも魅惑的なグラマラスさを遺憾なくアピールしている。と言っても、胸部などの重要な部分は白銀に輝く鎧で覆われてるのだが、それでも端的に言って、凄くいい女だと思ってしまった。・・・違うよ!目移りした訳じゃないよ、誤解しないで、アリア!!
などとつい目移りしてしまった自分を戒めている中、茫然とした様子のアリアが呟いた。
「ミリアナ・・・どうして此処に?」
そう声を発した彼女の表情は、これまでに見た事が無い程、厳しいものだった。眼光は鋭く睨みつける様で口元は固く結ばれている。・・・ん?、ミリアナって確か・・・ああっ、『剣聖』の名だ!!じゃあ、こいつ、アリアを追って来たってのか!?
「アリア・・・やっと会えた。あたしは・・あなたに聞きたい事、話したい事があって・・探してたの。」
ミリアナの言葉を受けたアリアは更に表情を険しくした。目を細め、蔑む様な眼差しでミリアナを見つめている。うぉ!ちょっと怖い!・・・だけどあの眼で見られたら、俺は新たな扉を開いてしまいそう・・って、馬鹿な事考えてる場合じゃない!
「探して簡単に見つかる様な場所では無いと思いますけど・・・まあ、それはいいです。丁度良いですね。私からも一つだけ貴方に聞きたい事があります。・・・貴方は何が目的で私に薬を盛ったのですか?」
「!!!」
アリアからの質問を聞いた瞬間、ミリアナの様子が激変した。全身をガタガタ震わせて、眼からは涙が溢れ出していた。顔色も真っ青だ。
「・・・目的?・・・目的。・・・・・あなたに取られちゃうって思ったの、あたしのアシュレーを。だから・・・アシュレーがあなたを抱けるように・・・薬を盛った。・・・そうすれば・・誇り高いあなたは・・絶対にあたし達から離れると思ったから。
アシュレーを取られたくなかった!!だから!、大事な友達だったあなたに、・・・酷い事しちゃった。・・・あたしは・・・クズだ・・ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・」
ミリアナの告白を聞いたアリアは、とうとう我慢できなくなったのか激昂した。
「私がアシュレーを取るですって!? 何を見当違いな事いってるんですか!!!そんな、そんなくだらない思いで、私を、裏切ったんですか、貴方は!!!ーーーーふざけないでください!!!!!! どれだけ、私が苦しんだと思ってるのすか!!!!??」
見た事が無い程取り乱したアリアが呼吸も荒くミリアナを睨みつけていた。・・・・・・当然だよな。どういう理屈なんだよ。大体アリアは勇者と付き合う気無かったんだろ? それが、何を思い違いすれば『取られる』なんて発想になるんだ?・・・この剣聖、ちょっとおかしい奴なのか?
「だって!・・だって!!アシュレー、あなたに関してだけは、あたしに何も言ってくれなかった!!いつもは、他の女と関係持つ時でも、あたしにはちゃんと話してくれてた!!・・・あたしがいるのに他の女の子と、関係するのは、嫌だったけど・・・それでも最後はちゃんとあたしの所に戻って来てくれた!!だからそれで良かったの!・・・だけど、あなたに対してだけは・・なんにも話してくれなかった。あたしが尋ねても否定するだけ!・・・それで、あなたはアシュレーの『特別』なんだって思ったら、怖くなった!アシュレーが離れて行っちゃうって!!・・・だから、だから!!!」
涙をぼろぼろ流しながらのミリアナの絶叫ともいえる訴えに、アリアはその美しい貌をどこか辛そうに歪めながら問い返す。
「・・・だったら何故私に話してくれなかったのですか? 貴方のその不安を!そうすれば・・!」
「話したって変わらない!あなたは人族の為に最前線に立っていた!そんなあなたに其処から立ち去って欲しいと言ったって聞いてくれる筈ない!!」
「それは!・・・確かにその通りなもしれません。・・・でも!それでもあんな真似して欲しくなかった!私が一番辛かったのはアシュレーに穢された事じゃない!・・・親友だと思っていた貴方に裏切られた事だった・・・。」
そう話すアリアの瞳には感極まったのか涙が浮かんでいた。・・・アリアはこの子のことを本当に信じていたんだろうな。それがなんだってこんな事に。この子は本意では無かったようだし。
ん?じゃあ、なんでこの子は此処にいるんだ?だってアリアは実際に去った訳だし、狙った通りにはなったんだろ?・・・ああ、例の『呪い』の事かな?・・・男性機能消失とか恐ろしい効果って話だしな。完全に自業自得の逆恨みだけど、本人からすれば恨み言くらい言いたいってか?
「なあ。・・・あんたが此処に来たのはなんでなんだ?結果だけ見ればあんたの思い通りじゃないか?それとも愛しの勇者様が『呪い』で男として不能になっちまったのが不満なのか?だけどそりゃ自業自得だろ?」
つい疑問に思った事を口走った俺に対して、ミリアナが凄い目に睨んで来た。なんだこいつ!さっき迄と気配が別人なんだけど!?なんか凄まじい迄の殺気を向けてきてるんだけど!?
「男として・・不能?・・・あれは!そんな生易しい呪いじゃなかった!!! なんであんな事をしたの!? なんであんな形であたしからアシュレーを奪ったの!!!?」
「何をいっているの、ミリアナ?・・・彼が言う通り、アシュレーに掛かった呪いは『男性機能消失』の筈よ?呪いの発動条件は、分かりますよね・・。」
アリアの返答に対してミリアナは子供が駄々を捏ねる様に首を激しく左右に振り、否定してきた。
「そっちこそ何言ってるの!!? あなたが、あなたが! アシュレーを『女』にしたんじゃない!!!!」
「「・・・・・・・」」
・・・・・・・・・・・・・・・・はい?・・・何言ってんだこの子?




