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第10話 『主』との戦い

 現在俺とアリアは、自宅から100km程離れた場所にある火山地帯に来ている。たしか『ヴォルカン火山帯」とか言われてた気がする。火山地帯なので非常に熱い。俺もアリアも既に汗だくで日頃から薄手の衣装を着ているアリアなんで汗で服が透けてしまい下着がモロ見え状態だ。誘って・・・いる訳ではないだろう。


 何故、こんな所に来ているかと言えば、俺とアリアの『初セッスク』記念日の時に俺が発言した事が原因となる。俺は自分の固有ユニークスキル:魔人変化デモニアック・チェンジを解放する事を宣言した。


「本気ですか!? だって一度解放したら元には戻れないんですよ!?・・・それにお姉さんの事で、あのスキルをあんなに怖がっていたじゃないですか!?」


「ああ。怖かったよ。姉さんをあんな風に変貌させちまったスキルと似たスキルだし。・・・でも、よくよく考えてみると、魔人化した姉さんは姿も変わったし、街を灰にしちまったけど、別に狂人になった訳じゃないんだよな。意志は感じられたし、それに姿も髪や眼の色は変わったけど顔の形や体形に変化も無かったし。翼生えたけど。・・・まあ、そういう事考えてたら、何か心の拠り所さえ持っていれば正気を保ったまま『魔人』てのに成れるかなと、そう考えているんだ、今は。」


「・・・心の拠り所ですか?」


「ああ。君の事だよ。俺は君と共に居たい。君を守りたいって思っている。その気持ちを強く持てば正気を失う事はないんじゃないかと思っている」


「!ッーーーウフフッ、ありがとうございます。」


 アリアが照れたのかニヨニヨと緩んだ頬を両手で押さえて悶えている。やっぱ超可愛い。抱き締めたい。だが、話が進まないので我慢する。


「でだ。スキルを使うのは決めたけど、魔人化した時の強さとかは正直未知数な訳だ。なんせ初の経験だし。・・・だから、『火山地帯の主』の下に行って力試しをしようと思っている。」


「・・・山の主さんですか?」


「ああ。以前挑戦した時はボコボコにやられて逃げ帰ったんだが、奴と渡り合えれば、あるいは倒せればSランク討伐者並みの力は証明できるかと思ってる。・・・なんせ討伐ランクSSの魔獣だし」


 それを聞いたアリアの顔が今度は真っ青になった。討伐者ランクSSは実質ランク外の強さを持つと言われる超級戦力を誇る文字通りの化け物だ。通常なら勇者パーティを含む100人規模で討伐できるか否かというレベルの魔獣に、俺はソロで挑むと言っているんだから、そりゃ、青くもなるか。


「な、何を言っているのですか!!そのような危険な真似を認められません!それで死んでしまったら本末転倒です!!」


「普通ならそうなんだけど、あの主の場合、ちょっと事情が違っててさ。何故かこちらからの挑戦は受けるんだけど、ギリギリ死ぬ寸前くらいで攻撃をやめてくれるんだよ。だから俺も今生きてる訳で」


「・・・どういう事ですか?人族を殺さない魔獣なんて聞いた事が無いのですが」


「まあ、どんな奴なのかは見てのお楽しみってことで。早速明日から向かいたいんだが、一緒に来てくれるか?・・・君がいてくれれば、最悪の事態に陥っても死なずに済むし」


「当然同行させて頂きます!そのような場所にお一人で行かせはしません!!」





 と、いう訳で3日程かけて漸く目的地まで到着した俺達なのだが、先ずは戦闘前の準備をしないとな。

『主』のいるフィールドは分かりやすく、半径1km程の円状に広がる不自然衣に整地された広場があり、そこに踏み込む事で相手は姿を現す。で、広場から出たものを追う事は決して無い。都会で流行りの魔導映像遊戯テレビゲームの設定の様だ。


 さて、愛用の刀や防具の点検を改めて行いつつ、どのタイミングでスキルを解放するかを考える。

 早々に解放して、いざ戦う時に体力切れとかは勘弁願いたい。じゃあ、来る前に試せってのも、何か周囲に悪影響が出るかもしれないと遠慮した次第だ。・・・もう『主』が顔を見せてからでいいか。まあ、前回も逃げ帰る事は出来たのだから、死ぬ事は無いだろう。


「じゃあ、いってくるよ。・・・アリアは此処で見ていてくれ。」


「本当にお一人で臨むつもりですか?その『主』が本当にSS級ならどう考えても・・・」


「なら回復術士の君には余計に後ろに控えていてもらわないと。前にも言ったけど、殺されはしないよ、多分。」


「多分!?死ぬ可能もあるというのですか!!?」

「いや、大丈夫だって!じゃあ、行ってきます!!」


 アリアが止めに入る前に広場の中央目掛けて走りだした。此処まで来てビビる訳に行くか。俺は長年自身を苛んで来たこのスキルの可能性を見極める為に来た。その為に普人族ノーマを捨てる覚悟で来たんだ。あの時、変貌した姉さんは、当時素人だった俺が見ても異様なプレッシャーを感じたくらいだ。『魔人化』は間違いなく強力なスキルの筈。なんせ種族を捨てるんだから相応の力は得たい。


 広場中央に到着した俺は、大声を上げて『主』を呼び出す事にした。


「おーーーーい!!!!! 主さんよーーーーーーーーーー!!!!!!!!こないだのリベンジに来たぞー――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 すると、俺の正面の空間が急に歪み出し、歪んで黒くなった空間から『主』が這い出てきた。


 相変わらず超デカい!!全高は20mを超え、長い尾を含めた全長は優に100mを超えている。その首は長くしなやかで先端には凶悪な牙を生やし、頭部には一対の雄々しい角を頂いている。背中には蝙蝠の羽のような形状の巨大な翼が一対、全身は黒く輝く硬質な鱗で覆われている。足は4本、四足歩行の態を取っている。所謂ドラゴンがそこには居た。久しぶりに見たが相変わらず凄まじい迫力であり、保有魔力もとんでも無い。漏れ出る魔力だけで耐性の無い者は魔力酔いするんじゃないだろうか?


『グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッーーーーーー!!!!!』


 『主』の大咆哮があたり一面に響き渡る。この咆哮には『威圧』のスキル効果があり、耐性が無いと、一時的に麻痺状態に陥ってしまう。まあ、俺は鍛えてるので平気だが。


「へへへっ。今日は俺のとっておきを試させてもらおうと思って来たんだ。悪いけど付き合ってくれよな?」


 俺は気合を入れ直し、この18年間一度も唱えた事の無いスキルを解放する。


「スキル解放!!! 魔人変化デモニアックチェンジーーーーーーーー!!!!!!!!」


 瞬間、俺の全身から真っ黒な光が立ち上がり、俺を包み込む。暫くすると黒光が収まり、『魔人』となった俺のお披露目となった。


「見た目はどうなったか分かんないが、精神的な変化は特に感じないな。・・・だけど、なんだよこれ!スゲー力が漲ってくる!!!これが魔人化なのか!・・・確かに凄いな、これ。」


 俺が自身の身に溢れる力に慄いていると、広場の外にいたアリアから声が掛かった。


「えぇぇとですねーー!、見た目の変化点はーーー!、髪の色が黒から白に変わってますねーーー!。羽とか角は無さそうですーーーーー!!!少しこちらを向いてもらえますかーーーー!?あっ!眼の色が赤くなってますねぇーーーーーー!!!」


 とご親切にも俺の見た目の変化点を大声で解説してくれた。別に後でも良かったのだが、ちょっとズレたこういう所もなんだか可愛く感じてしまう。やはり俺はアリアの事好きすぎる。後はステータスを軽く確認しようか。何がどう変わったか簡単には把握しておきたい。


 氏名:レオニス=アーカイン

 年齢:18歳

 種族:魔人族

 魂の位階:Lv.5 

 職業:魔刀聖(攻撃、敏捷が極大上昇、刀使用時に威力補正極大)

 所属/ランク:討伐者ギルド/A


 【汎用スキル】

  ・刀剣術…刀、剣に関するスキルの強化。本スキルを習得する事で『刀剣士』の職業が選択可能

  ・魔導術(黒炎、術式破壊)…括弧内の属性魔導術の強化。3属性の術を習得する事で『魔導士』の

               職業が選択可能

  ・身体強化法…魂魄力オドを用いた身体強化が可能となる。魔導術による強化と併用可。


 【固有スキル】

  ・召喚:ゴッドスレイヤー『神断の大太刀』…ゴッドスレイヤーが召喚可能。

  ・召喚:魔神鎧装『アモン』…現在、解放条件未達につき召喚不可。

  ・魔人転化デモニアックシフト(4)…条件を満たした他者を魔人化する。必要条件は以下。


   〈必要条件〉

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 なんか職業が『魔刀聖』って見た事ない職業に変わってる。補正効果が凄いけど、防御力補正無しとか回避専門の攻撃職か。他には、魔導術が火から黒炎に変更されているが、よく分からんな。後、眼を引くのは、固有スキル欄で、『神断の大太刀』とかいう物騒な名前の武器が召喚出来るらしい。でも魔神鎧装とかいうのは条件未達らしい。・・・如何にも不足している防御力の向上が図れそうなのに残念だ。

 もう一つ、いかにも怪しいスキルが増えているな。なんだよ『魔神転化』って?なんかこれも条件がありそうだが、説明が長そうなので今はいいや。早速、物騒な武器を召喚してみるか。


「召喚!!神断の大太刀ゴッドスレイヤー!!!」


 いきなり俺の右手の中に漆黒の大太刀が出現した。刀身から柄から全て真っ黒なのだが所々に金色の文様が描かれており、綺麗な刀だと思った。・・・が、この刀、刀身から激しく黒雷のようなものを発しており、物騒極まりない。それと刀を手した時から、身体能力、魔力共に大幅に増強された感触がある。なんだか凄い武器だ、さすがゴッドスレイヤー!!?


「さてとっ、わりぃな、待たせてよ。・・・じゃあ、始めっか!」


 俺は『主』に向けてゴッドスレイヤーを構える。それまで本当に待っていてくれたのか『主』も腰を落として臨戦態勢に入った。

 

 しばらく互いに睨みあっていたが、『主』がその口を開き、火炎ブレスを放ってきた。

俺は当然回避しようとしたのだが、その時、ゴッドスレイヤーから送られてきたイメージのようなものが頭の中に弾けた。俺はそのイメージに合わせる様に、大太刀を大上段に構え、ブレスを迎え撃つ体勢を取る。


「!?何してるんですかーーー!!?回避してくださいーーーー!!!!」


 アリアから悲鳴のような声が届けられるが敢えて無視して、俺はブレスを迎え撃つべくゴッドスレイヤーを一息に振り下ろした。


「うおおおおおおおおおおぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」


 振り下ろした大太刀から放たれた極太の黒雷はブレスを掻き消したのみならず、そのまま『主』に直撃し、大爆発を起こした。結果、『主』の巨体が数百メートル程後方に吹き飛んでいた。

 その圧倒的な威力に驚愕していたのだが、俺を突如眩暈を感じてふらついてしまう。


「なんだ?・・・これは、魂魄力オドを急激に消費したのか?」


 どうやら、ゴッドスレイヤーの大火力の源は俺の魂魄力オドらしい。そういうのはやる前に言って欲しい。いきなり昏倒したら死んじまうだろうが!・・・今後は使い方に注意が必要だな。


 気を取り直した俺は、大ダメージを受けて藻掻いている『主』に肉薄すべく足裏に爆炎術式を展開して急加速を行ったのだが、ここで大きな誤算が発生した。・・・俺のイメージより速すぎたのだ。


「わわっと!?―――うりゃあ!!」


 予想を超える超加速の為に、『主』の手前の予定が背中まで一気に肉薄してしまったので、次いでとばかりにゴッドスレイヤーで背中の翼を斬り落としてやった。


『ガ、ガァアアアァ!!?』


 どうやら加速感のズレは爆炎術式が黒炎に変わった事によるパワーUPによるものだった。原因を掴んだ俺は、爆炎術式改め黒炎術式による加速をモノにして、空中を縦横無尽に飛び回りながら、『主』を何度も斬り付けた。ゴッドスレイヤーの切れ味は極上で途轍もなく硬質な筈の龍麟をバターのように切裂いていく。

 その結果、『主』は全身傷だらけ、前足は左側が欠損し、血達磨になっていた。このまま一気にトドメを刺そうとその長い首を両断すべく飛び上がった所で、



『痛いんじゃあああぁあーーーー!!!!! いい加減にせんかーーーーーーーー!!!!!!!!!』




 突如響き渡った大音声に呆気に取られた俺は、術式の制御をし損なってあえなく地面に落下、激突する。・・・ちょっと待て?今の声って・・・


「ドラコンが・・・喋ったぁーーー!!!?」

「レオさんーーーーーーー!!!大丈夫ですかーーーー!!!?」


 いつの間にか俺のすぐ脇にアリアが現れて、俺を介抱してくれる。


「あ、ああ。・・・でも今・・・」

「え、ええ。喋りましたね・・・」



『しゃべったら悪いんかい?坊主に嬢ちゃん?』




 先程まで『主』がいた場所にはすでにドラゴンの巨体は無く、代わりに13、4歳程の見た目の少女が腕を組んで俺達に睨みを利かせていた。・・・誰?

 
















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