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五話、世の中ではぶりっ子は嫌われる。だが私は彼女らを『女の武器を理解した上で戦う誇り高き戦士』と称賛したい。

言い忘れておりましたが、更新は一日二回になります。

溜めた分が尽きるまでは、一日二回ですわよ。

◆◇◆

 翌日。メリーは早期治療のおかげで毒が抜けた……十分の一ほど。

 だが満身創痍だろうが立ち上がり戦う少女、メリーは平然と行動をしだす。


「休め」

「(´・ω・`)」


 アルスターからの言葉である。メリーはベットに移送された。


「(なんか紫色の土で育った作物はダメ……ということを前提にすれば何の問題も無かった、俺の注意不足、か……だが、食べてくれたということは俺のことが好きなのでは……)」


 アルスターは脳裏に決して浅くない教訓とかなり底が浅い恋愛観を刻み、その場を後にした。

 そして――――。


「ふむふむ……! こりゃあ、鈴木の出番ということですね!」


 メリーの部屋、扉前にて笑みを深める少女が一人。



 メリーは貸し与えられたベットで横になる。身体から毒が全く抜けず、今も苦痛が耐えず襲い掛かる。


「(仕事も出来ないとは……奴隷、失格です……兎に角、御主人様は、休めと……休、め?

 もしかし、て休むこと、が仕事……!? いえ、休めと、気遣われた……! もしかして、私の、ことが……!?)」


 メリーは熱のせいか、かなり馬鹿になっていた。頭上をヒヨコが回るぐらいには混乱していた。


「くぅ……」


 ひょこ、視界の端にアホ毛が二つ。


「やっ、元気元気?」

「アホ毛、しゃべった……!」


「誰がアホ毛じゃーー!」

「わあ」


 アホ毛が生えていた個所から女の子が一人登場する。


「鈴木はね! ちゃんと鈴木って名前があんの!」

「ああ、なんか、すみま、せん……」


 鈴木。なんだか名前がおかしい気がしたが気のせいだった。鈴木は全国探しても二位ぐらいには多い名前のような気がした。


「うがぁ……素直に謝られると調子が」

「なんだか、アホ毛オーラが漂って、いて……」

「うがーーーー!!」


 激昂するアホ毛。息切れしてから椅子に座る。


「むーっ、えっと、あなたがメリーちゃんかな? というかこの城にいる知らない娘ってメリーちゃん以外心当たりがないよ」

「はい、メリー・バットエンド、です。昨日、から、この自称魔王城で、暮らすことに、なりました」


 メリーはとりあえずの自己紹介をする。するとアホ毛はニコォォッと笑顔になり、手を握る。


「そっかそっか! そんな気がしてたけどそっか! よろしくだよメリーちゃん!」

「はい、初対面なのにも拘らず、このような格好で申し訳ありません……それで、あなたは?」

「おぉぅ! 礼儀正しいね!? それで鈴木の自己紹介だね!」


 アホ毛は自己紹介をしながら胸に手を当てて自慢げに語り始める。かなりテンションが高かった。


「鈴木の名前はシャバウォック鈴木! 昨日、あなたと上司を運んだ竜種なのです! あとね! 四天王の一柱だよ!」

「シャバウォック鈴木さん、ですか……その…個性的な、名前……ですね」

「ありがと! あ、鈴木が名前でシャバウォックが姓だよ!」


 本名:シャバウォック鈴木


 姓:シャバウォック

 名:鈴木


 メリーは考えるのを止めた。


「メリーちゃん。 毒、だいじょぶ? アホ毛あげるから元気出して」(ぶちっ)

「わあ、いらない」

「あ、ごめん、なんか付いた」

「付いた!?」


 メリーの頭にはアホ毛が差さっていた。あと色がメリーの髪の毛と同じになってた。


「鈴木のアホ毛、どうよ!」

「わあ」

「着脱可能だよこのアホ毛。それとこのアホ毛、感情を表現しだすから気を付けて」

「着脱可能のアホ毛とは」


 メリーは可愛くされた。


「けど……着脱可能なら、いっか……可愛いですし。シャバウォックさん、大切なアホ毛ありがとうございます」

「ううん、すぐ生えるからいいよ! あ、生えた」


 鈴木のキャラが大体つかめてきた所で、彼が戻ってきた。

 あとメリーはアホ毛を引っこ抜いて、机に置いた。


「……シャバウォック、何してる」

「う゛ぇ!?」


 背後に登場する魔王アルスター。

 鈴木の脳天に拳が叩き込まれる。


「いちゃい……」

「怪我人を前に騒ぐな」

「うぅ……じゃあね、メリーちゃん」

「はい、また今度」


 シャバウォック鈴木、退出。


「(鈴木さん、かなり騒がしかった、ですが……楽しかった、な)」


 鈴木はかなりのウザ絡みだったが、それはメリーにとっては全く不快ではなかった。

 それもそのはず、鈴木はああ見えて全て計算した上でのお節介を行っている。


 野生の勘、とも呼ぶべき能力なのだろう。

 野生の勘を持つ鈴木は〝相手が不快か否か〟を見極めることに長けていたのだ。


「……? 気分が、楽になった……?」


 メリーは己の体調がよくなっていることに気付く。試しに立ち上がりアルスターの頬を引っ張る。


「(毒が、抜けた……?)」

「認めたくないが……アホ毛の力、だろう」


 ※アホ毛は解毒作用を齎します。


「(アホ毛ってそんな効果あったのですね……知りませんでした)」


 ※アホ毛には解毒能力があるのは一般常識です。


「……?」


 メリーは自分の掌を見てから、アルスターへと上目遣いをする。破壊力は凄まじかった。


「っ!?(可愛い、なんだこの子は……! 新種の生物!? 凄い、すげええええ!!)」


 知的な眼鏡をくいッと押し上げる。凄まじい眼力に胸が痺れる!! 知的な眼鏡素敵だった!! これには全人類が喝采するしかない!! さぞかし素晴らしい頭脳を持っているのだろうと分かるほど知的な佇まい!! 正に魔王!! さすまお!!!! なお女性耐性カス!!!!


「……お仕事、ください」


 メリーはアルスターの服の裾を摘まむ。自分の武器を扱うメリー、その姿は戦場に佇む戦乙女の出身の街で娼婦をやっている村娘の如く!!


「……お仕事……くだ、しゃい」

「……わか、った」


 アルスターは敗北した。メリーの上目遣いに負けたのだ。


「じゃあ運ぶぞ」

「ふぇ……? っ、ひゃぁっ……」


 メリーは敗北した。アルスターのコアラ抱っこに負けたのだ。

 頬を赤らめている気がするがメリー曰く、気のせいである。


「まず仕事内容だが……【世界貢献に繋がる行動】だ。

 それに類する行動なら何でも構わない」


 アルスターは移動しながらそんなことを語る。それはメリーの仕事内容に関することであった。

 それを理解しているゆえ、メリーは黙して聴く。


「まず前提が違う。普通の会社の目的は【利益の追求】。

 だが魔王は何故か産まれた瞬間から使命、というものが与えられている。

 俺の場合は【魔王城の維持】【世界貢献】となっている。

 ――――質問はあるか?」

「特にありません」


 普通の会社:利益の追求

 魔王の場合:魔王城の維持/世界貢献など


「行動の度合いにより、まおまおポイントを与えられる」

「ネーミングセンス」


 仕事:まおまおポイントを貯める


「まおまおポイントを使えば食材とかコタツというアイテムとか水道ガス代金の代わりと交換できたりする」

「まおまおポイント、すごい」


 そして辿り着く仕事場――――魔王城、裏庭。

 地面には紫色の土が退かされ、茶色の土が敷かれていた。


「一つ目の仕事、毒素を含んだ土を普通の土に変える作業」

「ボランティアのレベル」

「土を変えても変えても、数日で毒素が侵入する……まおまおポイントは入るが、精神がガリガリ削れる仕事だ」

「切ない……」


 メリーは紫色の土を見て、首を傾げた。そしてアルスターの問いかける。


「御主人様、二つほど質問があります」

「聞こう」

「一つ、この紫色の土に、何か利用、方法はありますか?

 二つ、浄化された土、と紫の土、どちらがあれば嬉しいですか?」

「前者、利用方法はない。強いて言えば魔物が勝手に栽培されるぐらいだ、そして魔物使役できないし増やしてもまおまおポイントは増えない。

 後者、浄化された土で育つ植物。この土で育つのはだいたい毒物だ」


 ――――要約:この土要らん。


「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 簡潔に答えるアルスター。メリーは少しだけ好感を持つ。そして次の問いを投げる。


「――じゃあ、この土、浄化しても構いませんか?」

「???????????? 構、わ……ない?」


「聖剣/下水道浄水器 を召喚」

「えっ――――」


 空が割れて~キュイイイイイイイイィィィィッッ!! 

 聖剣が大地にパアァァァァンッ!! 

 紫色の土がアピャアアアアアアアアアアアァァァァッッ!!


「わあ、まおまおポイントがピロピロ言ってる」


 まおまおポイント:5200

 まおまおポイント:7031

 まおまおポイント:12029

 まおまおポイント:18218

 まおまおポイン――――通知拒否。


 メリー、奴隷としての初仕事終了。


「……聖剣所有してる、ということは勇者か……」

「? 奴隷です」


 名前:メリー・バットエンド

 ジョブ:勇者+魔王の奴隷

種類:聖剣

名前:下水道浄水器。




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