三話、中学の時、覚えたばっかの四字熟語を使いたくなる病にかかった。
本日最後の更新!! 次の更新は明日の9時~10時です!!(午前)
◆◇◆ ミリッジ視点
オレは今、とても気分が悪い。最悪だ、アレもコレも、全てオレ以外の全てが悪い。
『ミリッジよ、聖剣を取りに戻りましたか! さあ、彼の輝きを見せなさい』
『いえ、あの……あー、っと』
『? どうしたのです? ミリッジ』
――聖剣は機嫌が悪かった。
当たり前だ、聖剣も気分ぐらいあるだろう。
何せこのオレが触れたら、少ししか軽くならなかったのだから。
――だが、聖剣はオレを認めていないとかは絶対にありえなかった。
何せ、少しだけ軽くなったのだ。オレじゃなければ気付かないほどの誤差だったが、気のせいかと思えるほどだったが確かに! 軽くなったのだ!!
※気のせいと思えるというか気のせい。
しかし持ち帰れなかったのもまた事実、オレは謙虚だからその事実は認めてやった。
「あー、くそっ……」
オレが城下町に視察にいつものように来た。
「食い逃げやぞ君」
「金払えカス」
「お前出禁な」
城下町で歓声を浴びながら視察していると――――衝撃を受けた。
「…………おんな」
女だ。恐ろしいほど可愛い女だ。
すごく可愛かった。婚約者よりも、国一番の美姫よりも可愛かった。
――――オレが抱き締めてやらねば。
オレは声を掛けた。
女はカスみたいな男に攫われてしまった――――許せねえ! なんて悪い奴なんだ!!
※カス↑。
待っていろ、オレが助けてやる!!
オレは疾風の如く、走り男を追いかける。
そして疾風の如く、声を掛けて、疾風の如く、引き留めた。
姫は疾風の如く、オレに感動した。疾風の如く、オレが救い出してやる!
このオレ、ミリッジ・ドスコイマッスルは疾風の如く、疾風の如くして、疾風の如くだった。
◆◇◆ メリー視点
怖い、怖い。これはダメだ。これは敵だ。
「……何の用だ」
ご主人様が低い声で、唸るように呟く。その声で、少しだけ正気が戻った。
「オレの女を何処へ連れて行く気だ!」
「お前は何を言ってる」
「…………」
この人は、何を言っているのだろう。
「さあ、手を伸ばせ! 助ける!」
「あれ、コイツ頭大丈夫か」
「…………(ころそう、かな)」
①殺すか、②殺すか、③殺すか。さて殺そう。
「落ち着け」
「…………! ……」
私は無言で頷いた。少しだけ心の漣が弱くなる。
うん、私は、大丈夫。この御主人様が傍にいる限り暴走n――――
「さあ、オレの手を掴め! あと名前教えてくれ!」
私はえがおをうかべた。
「メリー・バットエンド、です。
――――【エル ノ 十三番 ニ 接続】」
「っ!?」
私は驚いた。それは私の能力が過去最大の親和性を発揮していたから。
これなら過去最大の効果を発揮できる、そう確信できる――――さあ、これを殺してしまおう。
「【是、汝ヘ終焉ヲ刻ムモノ】
【是、我ガ渇望ニ及バヌモノ】
【是、原初ト終焉ヲ喰ラウモノ】」
「待て、落ち着け」
「な、なんだぁ!?」
私の願いは徹底した■■。これはダメだ、これは排除しないと――――今すぐ来い。
「【魔装顕現――――終焉ガ喜劇ヲ齎ス】ッ!!」
「命令する、固有魔法を止めろ」
「ぁぅ゛っ」
私の固有魔法、消されました。
体力が一気に減るのが分かる。発動直前に消されたことが原因だと考えられる。
「命令する、五分ほど眠れ」
「ぁ、…ぅ…ぅ……」
急激な眠気が発生する。これは首輪の効果でアドレナリンを調節されている。私はそれに逆らえず、そのまま意識を失った。
◆◇◆
アルスターはメリーが眠ったのを確認する。右腕でメリーを庇うように支える。
「(判断ミス、か。これ以上騒がれれば面倒だと止まったが……この場合は相手に対する認識不足、あたりか)」
アルスターは目の前の青年へ敵意を向ける。起こしたミスの反省は起こしたミスの尻拭いをしてからだという考えからである。
「すまないが失礼する。この子は体調が悪い」
「オレの女を返してもらうぞ!!」
「会話しろ」
「しかも足を斬り落とすなんて……! 男として恥ずかしくないのかお前は!! お前など男じゃなければ人間でもない!! このウンコ!!」
「俺じゃない。あと鏡という道具を知ってるか?」
激怒するウンコ。彼の記憶力が素晴らしい、彼ほど優秀な記憶力を持っている人間はこの世界に存在しないだろう。
「それに女の子のことを奴隷として扱うなんて……! 許せない、オレはお前を許さない!! このゴミムシ!!」
「奴隷制度に関して怒るならこの国の王族やらに異議申し立てろ。この国は賛成派だと聞いた」
奴隷制度に怒るゴミムシ。彼は己の立場や役職に関係なく間違えてるものを間違えていると叫べる素晴らしい漢のようだ、これにはアルスターも賞賛するしかない。
「そういう話をしてるんじゃない!!」
「そういう話じゃなかったのか」
邪知暴虐の王子が何か言っていた。
「お前は犯罪者だ!」
「人の奴隷を奪うことは犯罪だ、君は俺の奴隷を奪おうとしている、よって犯罪者は君である」
邪知暴虐のウンコは拳を握りしめる。
「うおーーーーーーーーー!」
「おうマジか」
アルスターが三段論法を使うも会話してくれない。
会話が通用しない相手は初めてじゃないが、ここまで酷いのは珍しい。アルスターはそんな感想を抱いた。
飛んでくる貧弱な拳。
ていっ、アルスターは足払いで転ばせ封じる。
「くぅ……! なんて強さ、さ……! オレ達の力が通じないなんて……!」
「達どこだよ」
アルスターは『無視して帰ろうか』と思い始める。それだけ目の前の手合いは酷すぎたのだ。
だが。
「――――君たち、何をしているんだぜ!」
「なんか来た」
唐突に現れた男に、それは阻まれた。
キラキラな白銀の鎧、煌びやかな装飾がされた白銀の剣、それなりに整った顔を持った青年だった。
「お前は……! 隣国の王子オーサー! いや、もう王位を継承したのだったか……? 確か、一ヶ月前、だったか」
「隣国の王か」
「お前は王国の王子ミリッジぜ……」
「王国の恥だろ」
オーサーはやれやれと首を振る。妙に演技臭かった。
「僕はもう、王を辞めたぜ。この剣を見ろ」
「一ヶ月で王が退位」
オーサーは腰の剣を引き抜き、見せつける。ミスリル製の剣だ。剣には刃毀れどころか汚れすら付いていない――――まるで新品のようだ。
「それは……! 聖けn」
「そう、聖剣ミスリスブレードだぜ!! 名を必殺究極聖王覇王斬・スーパースーパーアルティメット神デラックス、と言うんだぜ。
この剣で屠った敵は数知れず、中には魔王さえも含まれているぜ」
「それ翻訳したらホーリーブレードミスリスブレードになるけど大丈夫か」
――まるで、新品とすら思える綺麗さだった。
何という凄まじい剣への愛情だろうか、汚れどころか使った形跡すら感じさせない刀身は輝いていた!! 愛情!! 剣への愛情!! これぞ剣士の鑑!!
彼の覇王も舌を巻くに違いないほどの新品さである。
「そう、我が国に伝わる聖剣だぜ……僕は気付いたんだ、勇者にしか救えない人々が、この世界には沢山いるってな……ぜ」
「王にしか救えない人々いることをご存じない……?」
頭が痛くなる光景が目の前で繰り広げられる。その反応速度は凄まじく、ボケがアルスターのツッコミを越え始めようとしていた。
「ちょっとオーサー、また新しい女の子?」
「待ってください~」
「なんか増えた――――流石に失礼する」
女が二名、近寄る。状況は更なるカオスへ。
もう限界だ、とアルスターは背を向けて走り出した。
「(と、言うか何で俺は話そうとしたんだ……)」
逆に一度話しただけでここまで酷い状況になると、誰が想像できようか。
この場合、アルスターは悪くない。寧ろ〝話し掛けられたから対応する〟という人として当たり前の判断を取っただけだ。
ゆえに原因を上げるならばこうだ――――コイツらが異常すぎただけ。
◆◇◆
アルスターの胸で眠っていたメリーが目を覚ます。
「ん……ぅ……」
「……おはよう」
とりあえず挨拶。
「…………?」
「…………」
メリーはアルスターの頬へ手を伸ばす。アルスターは特に拒まず様子を見る。
「(疲れて、る……?)」
アルスターは確実に疲れていた。表情は変わらず固いが、メリーはその変化を確実に気付く。
だが、その気付きもすぐに吹き飛ぶことと成る。
「――――シャバウォック、あとどれほどで着く」
「…………ふぇ?」
――――竜種。
メリーとアルスター、竜に乗る。
「(わー、おっきー)」
竜種。幻の存在、現状最強の種族、伝説の武器を守ってるアレ。
それに、メリーとアルスターは乗っていた。
「…………ぇっ」
読者の皆さんが気になっているであろう〝名前の由来〟を話します。
~サナライオの由来~
サナライオ→サヨナライオン→さよなライオン。
!!!さよなライオン!!!
以上。読んでくれてありがとウサギ! 魔法の力ァ!!