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二話、布団が吹っ飛んだ!……言ってみたかっただけです、ごめんなさい。

◆◇◆

 私は自分の足へ、視線を向けた。

 右脚……具体的には膝から先が無くなっていた。髪も汚れてて元の色も分からなくなっている……正直、こんな姿、誰にも見てほしくない。


「固有、魔法……」


 だから、男性の視線に思わず顔を逸らした。体力もあまり残ってないし意識も薄いため動きはほんの僅かだった。けれど、動けたこと自体奇跡だと思うことにした。


「……?」


 と、言うか、彼は今、何といったのだろう。

 私の耳には『固有魔法』と呟いたように聞こえた。聞き間違いでなければ……だけれど。

 確かに私は固有魔法を所有している、だけどそれを知っているモノはほとんどいないはず。

 ――――なら、見抜いた? どうやって?


「店主、この子にする」

「へっ!? このガキを、ですかい? ええっと~でも~」


 男性は、私を見てそんなことを言い出した。

 この子にする? どういう意味なのか、分からないため首を傾げてしまう。


「商品、なのだろう?」


 次いで聞こえた声に、私は終わりを悟った。

 私は酷い幻覚に囚われているようだった。可能ならもう少し綺麗な走馬灯が見たかったけれど、見せてもらっただけでも感謝します。


「え、えぇぇえぇっと……」

「買える、な」

「……へい」


 店主様が観念したように言う。私はこの男性に買われる願望でもあったのだろうか。私は男性へ目を向けた。

 男性は一言で表現するなら〝強者〟だった。


 何処かの商会勤めなのかワイシャツとネクタイに黒いコートを纏い、眼鏡をかけていた。

 ――だけど、この人は間違いなく強いと分かる。


 体軸、動きの癖、独特な呼吸――――恐らく暗殺、もしくは拳の一撃で敵を消滅させる技を持ってる。


「君、名前は」

「め、りー……ばっと、えんど」


 あと、顔立ちが整ってた。

◆◇◆

「……はい、これで契約は済みました」

「ありがとう」


 契約は滞りなく済み、メリーは男性に購入された。

 奴隷商人に連れられ、四つん這いのままメリーは歩を進ませた。


「この子は、何故、四つん這いなんだ」

「へ? あぁ、このガキ、右脚が斬り落とされた状態で来たんですわ。んで、まともに歩けねーから四つん這いなんでしょう」

「右脚が……」

「へい……まあ、ここまで酷い状態の奴隷も、珍しいですが……いないわけじゃ、ねえですし……昔とかなら」


 一瞬、男性は瞳に悲痛の色を宿す。メリーの姿を見て痛まし気に思ったのだろう。

 だが、即座に無感情な瞳に戻った。


「へへ、毎度あり」


 男性は鎖を受け取り、呟く。


不幸な結末(バットエンド)……か」


 メリーのファミリーネーム。それを小さく呟いてからメリーへと跪く。


「初めましてだ、俺はアルスター・サナライオ。君の主人になる男だ」


 男性、アルスターは手を伸ばす。下から差し出された手は彼女に対する配慮だろう。

 メリーは彼の手を……


「…………」

「……そうだよな」


 ――握れなかった。アルスターは残念そうに手を戻す。メリーは彼の手を切なげに見つめた。


「(さわ、れない……てぶくろ、よごれ、ちゃう……ダメ、……)」


 だが、それは彼を警戒したからではない。むしろその逆である。

 ――――いい人だと分かったから触って汚したくなかったのだ。

 メリーは、伝えることすら出来ない自分に歯痒さを覚える。


「ぁ、っ、…………」


 次の瞬間、メリーは浮遊感に包まれる。自分の太腿に手が回されてアルスターの顔が目の前に来る。

 分かり易く言おう――――お姫様抱っこされた。


「…………」

「……すまない」


 困惑するメリーに、アルスターの声が聞こえる。突然抱き上げたことに対する謝罪だった。


 アルスターの行動理由は単純、必要だったゆえだ。メリーは右脚がない、ゆえまとも歩くことすら出来ない。

 ならば当然、選択は二つ。四つん這いにさせるか抱き上げるか、である。この場合、アルスターは後者しか選ばない、ゆえにこの状況となっていた。


「(……次からは、事前に言おう)」


 アルスターは反省をする。必要とは言え、情報の共有は怠るべきでは無かったな、と。


「っ、だ、め…………」

「!?!?(やっぱりいきなり抱き上げたのは失礼過ぎたかっ!?)」


 メリー、反省。先ほどの失敗を生かせていないことに深い反省をした。

 ゆえに遅れは取り戻そうと声を出した。


「おめし、もの……汚れ……ます……」

「……む?」


 アルスターは声を聞いて、安堵した。

 なんだ、そんなことか……と。


「やっぱり、手袋の、時に……言えば、綺麗な服、汚れなかった。

 ……要点、情報の、共有、認識不、足……改善、策、情報の文章、化にて、整理を図る……あとは……」

「気にするな……と、言っても難しい、か。

 ならアプローチを変えて……洗えばいい、と……?

 洗えば済むこと、だがこの子はそれも気にする可能性が……なら、洗濯に対する認識(ハードル)を下げて……」


 互いに、間抜けな癖が出始める。メリーとアルスターは共に深く考えると声に出す癖があった。

 共に似た思考、共に似た癖に両者は気付く。そして。


「「……?」」


 顔を向ける瞬間、同時だった。

 ――――結論、お互いがお互いに遠慮していた。


「…………」

「…………」


 沈黙。どちらから動き出したかは分からないが、声は一人分だけ。


「…………」「……これから、よろしく頼む」


 その後、互いの溝がほんの少しだけ深まった。

 具体的には〝とても警戒している相手〟から〝かなり警戒している相手〟ぐらいである。


「……風呂、か」

「……?」

◆◇◆

 同日、王都内 ミリーアの湯(銭湯の名前)にて。


「…………」

「…………」

「www」


 眼鏡をかけた美丈夫アルスターは戸惑った。彼には目の前に光景が衝撃だったのだ。

 目の前にいるのは一言で表現するなら美少女、二言ならすごく 美少女だ。接続語込みなら傾城の美少女だった。

 ――――結論、美少女が目の前にいる。


「はい、おにーさんっ。洗い終わったじぇ?」

「へあっ!? あ、ああ……はい」

「へへっ、チップあざっす~可愛い子に仕上がりましたな~」


 アルスターは少女にチップを渡す。少女は銭湯で働く店長であり、有料で客の身体を洗ってくれる。

 アルスターは少女に多めの料金を払い、メリーを洗うように頼んだ。

 ――――結果、美少女が時空の狭間より召喚された。


「……?」

「(誰だっ、だだだ誰なんだっ!? 奴隷どこいった!? いや、待て、何だこの状況、落ち着け、落ち着いて餅つこう。ああちがう! 心臓よステイ! この子はバットエンド、恐らくの恐らく、おk? ああああああああああああああああああっ!!)」


 イケメン、バカになる。だが彼は優秀な漢、即座に精神を整える――――精神干渉系の魔法(ずる)を使って。


「……? …………」

「…………服を買いに行くか。あと食事も必要だろう」

「……わた、し……?」

「? ああ」


 メリーは困惑した。何故なら彼女の生において施しというものは皆無だったゆえだ。いつも底辺、いつも戦場、いつも蔑まれる。

 ゆえに、彼女は服を買ってもらえるという経験が本当に違和感でしかなかったのだ。


「(服? 服? ふく、フグ? ふぐ!! フグ、毒! うあ!)」

「さっきの俺みたいな反応するな」

「ふぇ」

◆◇◆

 翌、宿屋にて。


「……今日から、君を買った本来の目的を達成しようと思う」

「…………」


 メリーは頷く。無感情の瞳は何も語らない。


「……と、言うわけでまずは王都を抜けよう」

「…………」


 メリーは頷く。無感情の瞳は何も語らない

 そしてアススターの左腕に乗っかる。


「…………ぅ」

「喘ぐな」


 男性の腕に乗ることになれないのか、メリーは頬を染める。

 メリーはアルスターの肩に手を置いた


「ぅっ……」

「喘が、ない、で……」


 女性の体温に慣れないのか、アルスターは頬を染める。

 アルスターは右手で宿屋の扉を開けた。


 メリーはアルスターの右腕に乗っかり、肩に手を添えて身体を預ける。この体勢は昨日、何度かの試行錯誤を経て出した『最も安心できる運び方』だった。なので仕方ない、仕方なかった。


 城下町を歩き二人で歩く(片方は腕)。その際、二人は周囲の注目を集めていることに気付いた。


「なあ見ろよ、あの子……滅茶苦茶可愛いぞ」

「うぉ……何だありゃ、どっかの貴族令嬢よか可愛いなオイ……って首輪あるぞ……!? 奴隷か」

「やぽーい」


 男は頬を緩ませ、女は首輪に同情し、マサイ族は跳んだ。


「…………」

「…………」


 共に無言。周囲の視線が恥ずかしいのだろう。

 アルスターは早歩きして、メリーは能力を発動しかけた。


「――――おい、そこのお前!」


 アルスターは早歩きをして、メリーは能力を発動しかけた。


「待て! 無視するな! お前だよ、お・ま・え!」


 アルスターは早歩きをして、メリーは能力を発動しかけた。


「はぁ、ちょ、はや、げほっおぇっ、ま、て」

「「……?」」


 アルスターはは早歩きをして、メリーは能力を発動しかけた。

 何故、アルスターは早歩き止めないのだろうか。メリーは不思議に思う。だが、自分の状態を見て察しがついた。


「(わた、し、手が……震えて、る……?)」


 彼女は自分の手が震えていることに気が付いた。アルスターはそれの原因を背後の男の可能性が高いと判断して早歩きを止めないのだろう。


「(背後のアレが原因か……分からないが距離を取れば分かるな。もしくは、この区画に何かがある……? そうじゃなければ持病か何かだろうか……この状態はストレスによって引き起こされてるとしたら……カフェインか、何処かに茶葉などの店は……)」


 アルスターは頭は良いがかなり天然だった。ゆえに時より、ミスをする。

 例えば――――目的の店を見たせいで歩を止めてしまう、など。


「お、お゛い! 待て!! オレがぁ、止まれとぉ、言っているん、だ、ぞ!!」


 そして背後の男――――ミリッジ・ドスコイマッスル君が辿り着いてしまった。

 リョナを求めて三千里の読者様へ、本作ではリョナ描写は書きません。そのことをご報告いたします。

 理由は二つ。


 一つ目は秘密。

 二つ目なのですが……実は作者、自分の脚を斬り落とされたことがないのです。そのため、リアルな描写を書くことが出来ませんでした。

 そしてリアルな描写じゃないリョナなど、私のラブコメ系物書きとしてのプライドが許しませんでした……! ゆえにリョナを求めて遥々いらっしゃいました乳首の輝きブラザーズ、並びに読者様はブラウザバックを推奨いたします……。

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