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2―33.詰問

 辺りは既に暗くなってしまった。

 莉子の手当てで回復した菊塵は、何とか徒歩で帰宅することは出来た。だが、久弥との戦闘で破損したスーツ姿で人目につく所を歩くわけにも行かず、早池峰家にたどり着くまでにこれだけの時間がかかってしまったのだった。

 まずは哭士の祖父、修三に報告をしなければならない。


 ふと、早池峰家の正門前に、街灯に照らされた見慣れた人物の姿を見つける。

 刑事の蓼原のようだった。だが、様子がおかしい。街灯の逆光で影になっているが、その姿が傾いでいるのである。ボロボロの状態の姿で蓼原に会うことは憚られたが、様子の違う蓼原の姿に、菊塵はそろそろと歩みを進めた。


 近づくにつれ、その影は明確な姿を結び、菊塵の前に現れた。立っているのがやっと、といった状態である。

「どうなさったんですか……? その様子は……!」 

 菊塵程の負傷ではないが、蓼原が纏っているスーツも、肩口が裂け、太腿付近が汚れている。彼の身に何かがあったことは間違いが無かった。蓼原は、菊塵の姿を見つけ、ふらりと菊塵と向かい合った。



 通常であれば、菊塵のボロボロの状態に気を留めるであろう蓼原は、今回ばかりは違った。菊塵の顔を見、にやりと笑みを浮かべた。

「よう、待っていたぜ」

 肩が上下している。所々体が痛むのか、わき腹を押さえている。いつも菊塵を探る蓼原の目は、今夜は何かが違う。


「狗石とは、何だ」

 蓼原が言い放った言葉に、菊塵は一瞬耳を疑った。だが、蓼原の言葉は止まらない。

「色把と言ったか……あの黒髪の少女は何者だ? 狗鬼とは?」

 一般人には知りえない、狗鬼、狗石という言葉、何故蓼原は知っているのだろうか。

 一度言葉を切り、蓼原は話し出す。

「……二つの事件が上からもみ消しされた。柳瀬フユの事件、切り刻みの事件。何故お前は、内部しか知らないスーツケースのことを知っていた? ……事件には、常にお前の影がちらつく。お前なら、何か知っているのだろう? そして、それは狗鬼というものに関係がある……違うか!?」

 菊塵につめ寄る蓼原。

「……」

 蓼原の目を見つめ、菊塵は口を閉ざしていた。

「答えろ!!」

 辺りに蓼原の怒声が響き渡る。


 間違い無い。蓼原は確実に、狗鬼の存在に気づき、こうして菊塵の元までやってきた。隠し通すことは出来ない、と菊塵は踏んだ。

「……まさか、ここまでやってくるとは思いませんでした。いいでしょう。お話します」


 菊塵は、早池峰家の正門を開き、蓼原を招き入れた。

 かつて愛した柳瀬 フユ、その従兄弟、蓼原 圭輔に全てを話す為……。

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