◆第四部のあらすじ 登場人物
第四部のあらすじと、登場した人物の簡単な紹介です。
第四部を読んでいない方にはネタバレになりますのでご注意ください。
【第四部のあらすじ】
本家が陥落した翌日、哭士らは友禅の病室へと集まった。
修造へと一連の出来事を報告していると、桐生が病室を訪れる。
以前、苑司がアタッシュケースと共に持ち歩いていた薬品の成分が判明したという。
本家で暴れていた「紅い犬」、恒河沙へと投与されていたものと同じ薬品であることが判明した。
「狗神」を生み出す薬品、それは狗鬼の力の塊であると桐生は称した。
友禅は治癒力を失い、全く言うことを聞かない身体へ焦りを覚えていた。
かつて妹のように可愛がっていたカナエの死、神の器にされようと攫われた取那。
自身の胸に湧き出る感情のまま嵜ヶ濱村へ向かおうと、自身を作り出した「生みの親」である桐生へ自身の身体に薬品を投与するよう懇願するのだった。
一方、病院から帰宅した哭士らを待っていたのは、早池峰家で過ごしていた色把であった。
色把は哭士達の様子を見、その夜に不思議な夢を見た。
時代や場所も分からないが、島で細々と暮らす村人達の中に仁と茜という姉弟が住んでいた。
島は貧しく、皆で肩を寄せ合いながら生活をしている。
仁の姉である茜には、未来を予見する力を持っていた。
ある日、茜は村の外れにある社から黒い化物が現れ、村全体を覆い尽くす夢を見た。
仁は村人と共に姉の予見した社へと向かう。
だが、そこにいたのは一匹の黒い猫。
予見が外れたことに安堵する村の者たち。
仁も村人たちと同じように安堵しながら眠りにつくのだった。
翌朝、黒い猫は体が白く変じ、そして冷たくなっていた。
不気味に思いながらも庭先へ埋めてやっていると、仁の身体に僅かな異変が生じる。
小さな黒いシミが足首に付き、僅かな痛みを感じたのだ。
痛みとシミは時間を経るごとに大きくなり、やがて立つことも出来なくなってしまう。そしてその症状はやがて隣家へも伝染り、謎の病が村へ広がっていく。
数日間、休むまもなく痛みに苦しみあえぐ仁を見、姉の茜は胸を痛めていた。
看病で弱りゆく茜は、そこでまた予見の夢を見る。
自身が仁の腕を撫でると黒い痣が消えてゆく。茜の手のひらには傷があり、その傷へと黒い痣が吸い込まれてゆくというものだった。
目が覚めた茜は、自分と仁の手に傷を付け、そっと手を触れた。
すると、全身に広がる墨で塗られたような痣は消え、仁の痛みも消えていった。
茜は病が発症した家々を回り、治癒を施すのであった。
その数ヶ月後、仁達が住まう島へ一艘の小舟がたどり着く。
小舟から降りてきた者の中に、火傷を負った子供の姿があった。
病を治せる者がいると聞き、藁にもすがる思いでこの村へ来たのだという。
幼い子供の痛々しい姿に心を痛めた茜は治癒を施すのだった。
それからというもの、治癒の力を求めて怪我人が島を訪れるようになる。
次々と治癒を施す茜は疲弊し、倒れてしまう。
そこへ、かつて茜により治癒を施された村人も、茜ほどではないが治癒の力を持っていることが明らかになり、村人たちと茜は訪れる怪我人達へ血を与え続けるのだった。
それでも増え続ける怪我人に、村長は治癒の者たちを屋敷の奥へと匿い、治癒を施す代わりに金銭を取ることに決めたのだ。
屋敷の奥で外に出ることも許されぬ籠の中の鳥のような者たちは、やがて「籠女」と呼ばれるようになった。
やがて治療の金額を払えない者たちが増え、籠女狩りが行われる。
屋敷は襲われ、村には火を放たれた。
一番強い治癒の力を持っている茜は村長の指示で、仁と村長の息子とともに村人しか知らない地下の洞窟へと逃げ込んだ。
だが、そこに待ち受けていたのは村長と籠女目当ての狩人であった。
村長は欲に目がくらみ、籠女たちを狩人へ売り渡したのだった。
迷いもなく自分の息子をも殺し、茜を手に入れようとする村長。
茜は弟の仁に逃げるよう促し、村長の手に渡るならばと自身の胸に刃物を突き立て自害する。
地面に倒れこむ茜を目に、仁は後先考えずに村長へと飛びかかる。
仁もまた、狩人により背中を刺され倒れ伏してしまうのだった。
異変が起きたのはその時だった。
茜の胸から溢れ出たものは、血では無かった。
おぞましい黒い影のような生き物が姿を現した。後に影鬼とよばれるその生物は、その場に居た動くもの全てに襲い掛かり、命を刈り取った。
そのまま黒い影は消え、そして静寂だけが残された。
意識を取り戻した茜は、自分の身体に異変が起きていることに気づく。肌は文字通り陶器のように変じ、真っ白になっていた。体は徐々に動かなくなってゆく。
近くに倒れていたまだ息のある弟へ自身の血を分け与え治癒を施すと、海へと出でる小舟へと弟を乗せ、強く押し出した。
茜の足はそこで白く固まり、動くことができなくなった。
目を覚ました仁は、砂浜で倒れていた所を旅の商人に助けられる。
違和感を覚えた体は、何故か幼い姿へと変わっており、今まで自分が住んでいたはずの村も、五十年前に無人になったという。
混乱する中、仁は商人の厚意により、共に旅をすることになる。
ひと月程経過した頃、仁の身体は突如として激痛に襲われる。
気づけば身体は大人へと成長し、傍らの商人は怯えた目で見つめている。
仁はたまらず外へと飛び出し、闇夜へ姿を消していった。
色把の夢はそこで途絶えた。
だが、色把は気づいた。夢の中での仁や茜の住まう島。
それこそが嵜ヶ濱村であるという事に。
翌朝、集まった者たちの中に、居るはずの哭士の姿が無い。
様子を見に行った菊塵と色把は、氷漬けの部屋で倒れ伏す哭士を発見する。
駆けつけた桐生の診断によれば、寿命が一ヶ月を切ったことで、能力を統制する部分に影響が出てきたのだという。
そこで哭士が自身の誕生の日を偽っていた事が明かされる。
激高する菊塵。だが哭士は説明することはない、と菊塵を拒絶する。
ユーリと友禅の仲裁に、頭を冷やすべく菊塵は部屋を後にするのだった。
早池峰家を後にした菊塵の足は自然と交際相手の眠る病院へと向かう。
病室に居たのはフユの妹、アキであった。
アキが語る、フユと菊塵の出会いはフユに仕組まれていたものであったこと。
自身の能力を駆使し、菊塵を振り向かせようとしていた事が判明し、菊塵に笑みが戻る。
哭士が自ら寿命の制約を取り去らせるよう、自分に出来る事を考えるのだった。
夜になり、哭士は庭へ出た。
友禅との言葉を交わし、菊塵が現れる。
菊塵は敢えて哭士を挑発し交戦する。言葉で語る事を殆どしない哭士に、菊塵は戦うという事で本心を語らせることにしたのだった。
戦いのさなか、哭士は最後まで足掻く、と空に嘯く。
桐生診療所へと集まった哭士、菊塵、友禅。
菊塵は桐生へ、哭士が契約を結べない理由について問いかけた。
桐生が語ったのは、【神】についてであった。
哭士の母親、早池峰さくらは、かつて【神】に呼ばれ嵜ヶ濱村を訪れている。
その際に、哭士を産めばさくらは死に至るという予言を受けた。
桐生はそれがさくらへの警告ではなく、哭士に対する恐れではないかと推あてた。
その恐れが、哭士の寿命に関係があるのではと続けて推測する。
【神】が警告した子供である哭士。そして【神】に捧げられるはずだった双子の一人、色把。
二人が共に居る事は偶然なのかと桐生は問う。
全ての答えは嵜ヶ濱村へあると哭士は考えるに至った。
翌朝、嵜ヶ濱村の夢を見た色把の話を聞いた哭士達は、攫われた取那を奪還する為、そして哭士の寿命の制約の手がかりを探るため、嵜ヶ濱村へ向かうことを決意する。
そして菊塵より知らされたのは、革新派の狗鬼達とGDの狗鬼達もまた、【神】を目指して嵜ヶ濱村へ向かっているという事だった。
以前、革新派の頭取である桐生彩子にも革新派として嵜ヶ濱村へ向かうよう指示されていたが、彩子への不信感からその答えを出さずにいた。
単独で向かうべきだと意見するユーリ。
だがそれでは革新派をも敵に回す可能性があると菊塵は諭し、敢えて彩子の傘下に入り【神】を目指す案を提示するのだった。
桐生彩子の管理する病院の最上階。そこに桐生彩子とその夫、桐生祥吾が相対していた。
桐生は彩子が本家の御代と手を組み【神】を手に入れようとしている事を言い当てた。
それでも臆さない彩子に、桐生は【神】が哭士に対し戒心している事を告げる。哭士らが【神】に到達すれば、彩子達にとって予期せぬ事態が起きるであろうことを告げ、そして彩子を狗鬼らの戦いの舞台から引き下ろすのであった。
哭士の母の名を口にして……。
【登場人物紹介】
仁
色把の見た夢の中に出てきた人物。嵜ヶ濱村に住んでいた者。
幼い頃に父と母を亡くし、体の弱い姉と二人で暮らしていた。
予見の力を持つ姉の言葉から、少しずつ周囲に異変が起きていく。
茜
仁の姉。予見の力を持つ。
ある出来事をきっかけに、血が他者を癒す籠女となった。
清太郎
嵜ヶ濱村の村長の息子。仁を弟のように思い、幼馴染の茜を好いていた。
籠女狩りに巻き込まれ、命を落とす。
あらすじ、人物紹介は試験的に投稿しています。
修正が入ったり、削除する場合がありますので、ご了承をお願いします。