◆第三部のあらすじ
第三部のあらすじです。
第三部を読んでいない方にはネタバレになりますのでご注意ください。
【第三部のあらすじ】
哭士が目覚めると、そこは桐生が管理している大きな病院だった。レキとの戦いに破れた哭士らは治療の為運び込まれていたのだ。
哭士らが居る狗鬼専用のフロアには、もう一室使用されている部屋があった。菊塵の交際相手、柳瀬フユの病室である。菊塵はフユの家族の誤解から事件の日から一切面会を許されていなかったが、蓼原の口添えにより、ようやく昏睡状態のフユと対面を果たす。そこで、フユの右手に菊塵の狗石が握られている事を知らされる哭士。
菊塵は訥々と語りだす。昏睡状態となったフユの治療費を支払えず困窮していた菊塵を、哭士の祖父である修造が肩代わりしている事。菊塵は修造への忠誠を誓った事を。
病院に運ばれたのは、哭士達だけではない。今まで姿をくらましていた哭士の兄、友禅も大怪我を負い病院へと運ばれていた。
十数年ぶりの再会に涙する修造。友禅は本家から姿を消した理由を問われ答える。
五年前に本家当主の補佐、御世に自身が狗鬼同士の掛け合わせにより生まれた者であることが知られ、本家の地下にある牢獄「忌家」へと囚われた。
御世は友禅を穢れた血として、他の籠女との血が混ざることを恐れ、首輪により狗鬼の力を封じ、そして子孫を残すすべを絶った。不衛生な環境、下腹部の怪我、弊履の者達の暴力により弱り、命を落としそうになっていた友禅を救ったのは、同じく地下牢に囚われていた色把と同じ顔の少女であった。
少女は気を失っている友禅に血を与え、そのまま自身の座敷牢へと消えていった。
少女の血により回復した友禅は忌家にて奴隷のような扱いを受け続け、三年が経過した。
ある日、友禅は弊履の者たちを束ねる洛叉の目を逃れさせるため、普段は出入りを禁じられていた忌家の最下層へと放り込まれる。
友禅の耳に懐かしい手毬唄が聞こえ、歌に誘われるように友禅はその歌を歌っている主と対面するのだった。
そこには、三年前に自身の命を救った少女が牢の中にとらわれていた。気を失っていた友禅は自身の許嫁と同じ姿の少女を見、驚きの声を上げる。
少女は色把と名を呼ばれ、一筋の涙をこぼす。
その瞬間に友禅は弊履の狗鬼に呼び戻され、それ以上の会話をすることができなかった。
やはり地下の少女が気に掛かり、狗鬼らの目をかいくぐり再会を果たす友禅。
少女は取那と名乗る。数年の間奴隷としてこき使われてきた友禅は対等な会話が出来る喜びから、密に取那の元へと足を運んだ。
徐々に打ち解けゆく取那、そして彼女の口から何故座敷牢へ囚われているのかが語られた。
かつて、取那は「色把」だった。
友禅の許嫁として大事に大事に育てられ、欲しい物は全て与えられていた。
毎日行われる稽古事に嫌気が指し、自由に遊び回りたいと、そう思っていた九歳の時分、深夜、庭の物音に目を覚まし外を覗くと、同じ年の頃の少女が立っていた。
好奇心から少女に声を掛け、自身の部屋へと招き入れた。汚い身なりをしていたその少女に湯を貸し、着物を与えると、その少女は驚くべきことに自身と瓜二つだった。
少女は自身の名を「トリナ」と名乗る。
瓜二つの少女を見て思いついたのは、トリナを身代わりにし今まで出来なかった屋敷内の探索であった。
庭へと抜け出し、存分に楽しんでいた時に見覚えのない男に突如捕まり、捉えられたのが現在居る忌家であった。
初めは抵抗し其処から出すよう声を上げるも、男はただ笑うのみ。
本家にはもう色把と名乗る少女が居り、周囲もその少女を色把と認めている、そう語るのであった。
色把は取那になり、取那は色把になった。
牢の中で取那は、自身と入れ替わり色把となった少女に深い憎悪を抱くのだった。
取那により語られた出来事に言葉を失う友禅。
憂う取那を元気づけようと奔走していたその時、ついに友禅は狗鬼に見つかってしまう。
狗鬼は友禅に意味深な笑みを向け立ち去る。
戸惑いながらも友禅は取那の元へと向かうも、取那は友禅を拒絶する。
乱れた髪と着衣、涙を流すその顔を見、取那は弊履の者らに陵辱され続けていたことを知る。
友禅の怒りは狗鬼を封じる首輪をも破壊し、一瞬にして力が戻った。
鬼と化した友禅は目の前にいる弊履の者らすべての命を奪い、取那と共に忌家を抜け出したのだった。
友禅によって語られた過去。暴かれた色把の存在。
そして、突如現れた桐生の妻、彩子によって、双子として生まれた取那と色把を引き裂き、忌家へと取り込めたのは本家当主の補佐を務める御世であり、本家が崇める【神】が朽ちる時その器となる存在であった者が、現在の取那であった事が明かされる。
色把は思わず部屋を飛び出す。追ってきた哭士に泣き崩れる色把。
哭士は色把に自身の狗石を託し、それを守るよう命じるのだった。
一方、桐生の治療を受けていた苑司は、籠女と狗鬼の血を同時に与えられたことで狗鬼になってしまったことを告げられる。
与えた血の持ち主であるユーリは、先のレキとの戦いに破れ、自身の能力に対し自信を失っていた。そして、自信の籠女、アキに対する思いにも戸惑っていた。
死んだ妹と重なるアキの姿に、彼女を思えば思うほど自分は妹との交わりを望んでいたのではないかと疑惑を抱いていた。
そのアキとの連絡が取れず、ユーリは苛立ちを覚えていた。
翌日、菊塵のもとへ本家当主カナエの狗鬼、黒古志莉子が到来する。
本家が曽根越久弥によって襲われた事、そこには菊塵のかつての交際相手の妹であり、ユーリの籠女でもあるアキも囚われている事を告げる。
哭士らは本家へと足を向けた。
かつて哭士が訪れた本家の様子とは一変し、騒然としている本家。
大きな獣に食いちぎられた死体に違和を覚えながらも、哭士らはかつて友禅が飼っていた犬の案内により本家内を進む。
やがて隊の指揮をとる久弥と、捉えられているアキの姿を発見する。
久屋の目的は、籠女、狗鬼らを管理している本家を潰し、神を手に入れ、今まで自信らが支えてきた世界の表側へと進出する事であった。
右腕であった菊塵の奪取を狙い、久屋は哭士らに襲いかかる。
数人の久弥の部下との戦いの中で、ユーリは自分の能力の自信を取り戻す。ユーリの能力、菊塵の機転により、久弥を打ち倒す事に成功する。
久弥が倒れたその時、見たこともないおぞましい獣が哭士らの前に現れる。
狗鬼らの力を遥かに凌駕するその獣は、レキと御世によって薬品を与えられた恒河沙の成れの果てであった。
莉子の力により獣は倒れ、本来の恒河沙の姿へと戻る。仲間であった恒河沙の死に呆然とするも、最後に残した恒河沙の言葉により、当主カナエの居場所をしり、皆は其処へと足を向けた。
負傷により皆から遅れた哭士に語りかける男。
狗鬼を引き連れた哭士の叔父、烏沼克彦であった。克彦は「全ての恐れから解放される」と言葉を残しその場を去る。
駆けつけたその場所で、カナエは衰弱しきっていた。
莉子がカナエへと駆け寄ったその瞬間、建物から火が上がり忽ちのうちに炎がカナエと莉子を包み込んだ。最後まで孤独だったカナエに、莉子は共に逝く事を決め菊塵に別れを告げるのだった。
あらすじは試験的に投稿しています。
修正が入ったり、削除する場合がありますので、ご了承をお願いします。