真琴と先輩~水上先輩のスタイリッシュ肉体改造プロテインのち時々もふもふ~
「マコちゃん。来ちゃった」
「ここ10階です」
窓から水上先輩がやってきた。
「ちょっと聞いてよ~」
「その前に中へ入って下さい」
このまま話す気だったらしい。器用に窓枠を掴みながらスルリと入ってきた。
「親がさ~見合いを勧めてくるのよ~」
「見合いって、お見合いですか?」
先輩は未成年だが、両親とも有名人だった。
「見合いってゆーか、出会い? とにかく金持ちの子供を紹介して来るのよ。面倒くさい~」
意外だが、先輩にも乙女心的な臓器があるのかもしれない。
「やっぱり、出会いはときめきたいってことですか?」
「そうね~ドキドキは欲しいな~」
「…ちなみに初恋というか、そういうのはあったんですか?」
興味本位で聞いてみた。
「初恋? そうね~…北海道の山奥で野生の羆に会った時はドキドキしたわねー」
「誰が九死に一生の話をしました?」
「はっ!? もしかしてあれがあたしの初恋!?」
「違うと思います」
「でもあたしじゃ…筋肉の釣り合いが取れなくて」
「でしょうね」
しばらく無言で考えた先輩は、ポツリと呟いた。
「…あたしだって、一応現実は見てるんだよ」
「と、言いますと?」
「相手だって困るわよね~。こんな女だと」
「先輩は、美人の部類だと思いますが…」
それはまあ、本心だった。
「お~ありがと。でもさ、それだけで死ぬまで一緒は無理でしょ」
「保守的ですね」
いつもの先輩らしからぬ発言だ。
「ねえ、マコちゃん。この世界からプロテインが消えたらどうする?」
「普通にバランスの良いご飯を食べます」
「そうよね、死んじゃうかも知れないよね」
「話、聞いてました?」
「あたしの理想は、プロテインと筋肉の関係みたいな感じなの」
「で。話、聞いてました?」
「プロテインだけじゃ筋肉は出来ない。でも、筋トレだけじゃ寂しい」
「何の話ですか」
「プロテインも筋肉も、お互いの運命の人に出会いたがっているのよ」
「先輩? ねえ、先輩?」
「あたしも、理想のプロテインに出会いたい。だから、いつも筋トレしてるの」
「結局これ、筋トレ談義なんですか?」
そこに家猫である茶々が「にゃあ」と言って部屋に入ってきた。
「おう、茶々。元気?」
「にゃ」
会話らしきものをして、先輩が茶々を抱っこする。
「相変わらずふかふかもふもふだね~」
そうして肉球を弄る。
「…このふにふに感。癖になる。…この胸の高鳴り…」
先輩が目を見開いた。
「もしかして、コレって、恋!?」
「たぶん、違いますね」
水上先輩は恋に盲目らしい。