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第7話 コンビニ店員は騎士団と出会う


 つまり、トウロの魔力反応やらを消せば竜魔族は襲ってこないという事なのか。なるほど、それなら転移者の街にトウロが行っても問題はない。

 俺は妙に感心しながらトウロの方を見ると、彼は街の方角を見つめ言った。

 

『街の方向から何人かこちらに向かっている様だな。おそらくこちらの異常を察知して様子を見に来たのであろう』


「ああ、あれだけ派手に暴れれば気付かれるだろうな」


 俺がそう言うとトウロは倒した竜魔族の肉片に駆け寄り自身の腕を地中に突き刺し、魔力を流し始めた。すると肉片が散らばっている地面の質感が変化を始め、流砂の様になっていく。砂の流れは肉片を飲み込み地中深くへと沈んでゆく。

 

「おお!凄いな。こんなことも出来るのか」


 俺は片腕を地中に突っ込んだままのトウロに対し感嘆の声を上げた。


『ふふ。以前にも言ったと思うが我ら石魔人族は大地の守護者。これしきの事造作もない』


 自慢げにこちらに向かいトウロはそう告げるとすぐに作業を再開した。

 

 ◇

 

 しかし、なぜ倒れた竜魔族を隠したんだ? そんな疑問を抱きつつ俺はトウロに聞く。

 

「せっかく倒したのにわざわざ手柄を隠す意味がわからないんだけど?」


 謎の隠ぺい作業を一通り終えたトウロはこちらに向かって歩きながら答える。

 

『我がヒロシ殿と一緒にいることが人族に知られると不味いのでな。何、簡単な事、人族は我ら魔人と魔物との区別をしとらんからな』


 なるほどと頷きながら聞いていると、トウロは続けて言った。

 

『また人族単体で竜魔族を倒せる者などおらん。ヒロシ殿がどのように状況を説明するかは分からぬが、先程の戦闘を察知された今、間違いなく面倒な事態になるであろう。ならば、事がなかった様にするのが最善だと考えた』


 そこまで考えての行動だったのか……。と納得すると同時に新たな疑問が湧いた。

 

「でも、それじゃこの後トウロはどうするんだ? 他の人に見つかったらダメなんだろう?」


 一瞬、ここでトウロは身を隠すため別れるのかも知れないという予感が胸の中をよぎる。それとも一旦別行動で後で合流するとでもいうのか。どの道、しばらくは単独行動になる可能性が高いなと覚悟を決めようとしたときトウロはサラリと言い放った。

 

『問題ない、我は姿を変えられるからな。ヒロシ殿の身装具となり身を隠せる。そしてこの"言葉"はヒロシ殿にしか届かぬ』


 俺は妙な安心感を得た。この世界で一時といえどトウロと離れるのは心細い。この提案はとても心強く頼もしいものだった。

 

「よかった。この先一人でやっていく自信がなかったから助かるよ」


『はははっ!何の事かは分からぬが我がヒロシ殿から離れることはない。心配無用じゃ。さて…時間も無いようだ、我の身体に触れヒロシ殿にふさわしいと考える身装具を思い浮かべるがよい』


 トウロは俺が抱いていた心配事など意に介す様子もなく、次なる対策を促す。

 

「わかった、こうか?」

 

 俺はトウロの指示通り、黒光りするゴーレムボディに触れる。しかし身装具といってもな……指輪やネックレスとかは俺っぽくないし……そうだ!ここはファンタジーっぽく腕輪でいこう。俺はシンプルで自身の腕にフィットする腕輪を頭の中に浮かべトウロのゴーレムボディに魔力とともにイメージを送った。

 

『おお、ここまで出来るとは。我が手助けせずともここまでの魔力操作が出来るとは見事じゃ。しかもこの腕輪のセンスも良い。我ら石魔人族伝統のデザインにもよく似ておる。さすがは我が主!ハハハハ……』


 トウロはよくわからない高笑いを上げながら、ゴーレムボディを流体金属の様に変化させ俺の左腕へと移動する。あれだけの質量が腕に移動したというのに重さはほとんど感じられない。と同時に体積も変化している様で、俺の腕に巻かれたソレは違和感なく収まった。

 

 ◇

 

 俺は腕輪となったトウロと共に目的地である転移者の街へと草原を歩いている。街の方角からは何者かがこちらに向かっている様だが、先程行ったトウロとの打ち合わせ通り対応すれば問題ないだろう。

 しかも、不測の事態が起きればすぐにトウロが対処する手はずとなっている。トウロ様様だ。

 

 

「おーい、無事か?」


 街の方角から来た何者かがこちらに気付き、声を掛けてきた。

 俺の世界でいうところの中世ヨーロッパ風の騎士といった感じの人が三人。若干装備が重いのだろう、駆け足とも言えぬ鈍重な足取りでガチャガチャと音をさせながらこちらに向かってきた。

 

「あ、はい。大丈夫です」


 俺は彼らに向かい平然と答えた。

 彼らは俺の姿を確認すると無事であることに安心したように一息つき質問を始めた。

 

「うむ、無事の様だな。それでお前は異世界からの転移者だな?」


「はい、その様ですね。気が付いたら森の中に居て立て看板を見てこちらに来ました」

 

 俺は質問に答えた。嘘は言ってない。トウロの事や転移した場所が転移陣でないことなどを言っていないだけだ。まずは様子を見て、あの転移陣や転移者の街に関する情報を集めるのが先決だろう。その辺はトウロとも同意見であった。

 

 俺の答えに彼らはウンウンと納得したあと森の出口付近を見回し更に質問を続ける。

 

「転移者が無事ならば問題ない。だが先程この付近でドラゴンが現れ何者かとの戦闘があったと監視の者から報告を受けたのだが、お前は知らんか?」


 やはり聞かれたか。でもまぁ想定通りだ。ここもトウロとの打ち合わせ通り答えることにする。

 

「あ、はい。ドラゴンがやってきて森の方で暴れていたので怖くて逃げてきました。そのあとドラゴンはどこかに飛び去って行ったみたいでしたけど」


「そうか、それは大変だったな。まあ飛び去ったのならしばらくは問題ないだろう…」


 うん、上手くいった。といっても証拠隠滅は完璧だし、俺一人でどうにかなったとも思わないだろう。もちろん、ドラゴンをどうにかしたのはトウロなのだが。

 俺が顔色を変えずに内心でそんなことを思っていると、彼らの一人がハッとした表情を浮かべ話しかけてきた。

 

「名乗るのが遅くなってすまない、我々は転移者の街の護衛をしてるエスダート王国の騎士団だ。このあと街へ帰還するので同行願う」


 ここはエスダート王国というのか。王国という事は王様とかお姫様とかもいるのかな……少し会ってみたい気もする。

 

『ふむ、エスダートであったか。エグリガンド山脈の南東に広がる半島に位置する王国だ。ということは……少し厄介なことになるかもしれんな』

 トウロは俺にだけ聞こえる"言葉"で伝えてきた。

 厄介とはどういうことだろう? 今は騎士団の人がいるので街についてからでも詳しく聞こう。

 俺は少しだけ不安を抱きながら、街へ向かって歩き出した騎士団たちに続いて歩を進めた。

 

 ◇

 

 街までの道のりは周りの景色を眺めたり、騎士団たちの装備を観察しながら退屈することもなく順調だった。

 その間、騎士団たちに街の様子や他の転移者の事などを聞いてみたのだが、到着すれば説明があるから心配するなと言われ、それ以降の会話はなかった。

 そう言われると逆に心配になるんだけどね。

 

 しばらくすると街が近くに見えてきた。木の杭で作られた壁で周囲をぐるりと囲まれていて、街というには若干狭いという印象だった。入り口には開閉式の門があり門番らしき人が立っていた。

 

「偵察任務完了。途中、転移者と遭遇したので同行してきた」


 騎士団の人はそれだけを門番に告げ開門させると街の中に入って行く。俺も後を追い門をくぐった。

 俺が周囲を見回しキョロキョロしていると騎士団の一人がこちらに近寄り言ってきた。

 

「ここがエスダート王国転移者の街だ。門の横にある受付で一通りの説明と登録を行うといい。ここまでの道のりご苦労だった」



お読み頂きありがとうございます!

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