第12話 コンビニ店員は考察する
「それでお前は魔王討伐に疑問があるって言っていたけど、どういうことなんだ?」
マリーさんは俺が固まりながらも頷いたことに一旦話の流れを変えようと質問をしてきた。
確かにマリーさんの情報からも魔王討伐と元の世界に戻るということは無関係ではない様だ。しかし、トウロの話では妖精王の居城に魔王が存在している。魔王が直接転移を行っているというのは考えにくいというのが結論だった。これは転移関係の話題で切り込むべきだろうか。
「うーん、そうですね。実は元の世界に戻るために必要なことが魔王討伐とは直接関係ないという情報を得まして、それを調べるために参加しようかと思っています」
情報元はトウロなのだが説明するのも面倒だし、今はまだ秘匿しておいた方がよいだろう。
しかしマリーさんの中では魔王討伐イコール元の世界への転移という図式なのだろうから、こちらからは"そうではない可能性がある"ということをほのめかしておいた方が後々の行動にも違和感を抱かれないのではないだろうか。
「ふむふむ。興味深い話だなー。元の世界に戻るのに魔王討伐は関係ないとはどういうことだ?」
「いえ、関係ないわけではないのですが異世界転移自体を行えるのが魔王ではないという事です。実際魔王討伐がどのように関わっているのかはわかりませんが、転移そのものについて調べる必要があると思いまして」
俺は妖精王の存在には触れず、魔王討伐と異世界転移を切り分けて調べたいという旨を伝えた。
これには彼女も同意した様で、ウンウンと頷きながら聞いてくれた。
「ちょっと人が多くなってきたな……」
マリーさんの言葉に周囲を見渡すと訓練を終えた人たちが続々と食堂へやって来た。その意図に気付き、今までの話を中断しササッと食事を終える。
俺らは互いの顔を見合わせると、今日の話はこれまでという空気を感じ席を立つ。
そして俺は最後に一つ聞いておきたかったことを口にした。
「マリーさんはなぜ俺にこんな話をしようとおもったんですか?」
「はぁ?そんなの簡単なことだよー。軍属の気配を感じさせないくせにすげー強かっただろ?そんなのは特別な訓練を受けた者にしか出来ない。あとはコレだ」
マリーさんは右手首にはめられているブレスレットを指でコンっと弾き笑いながら言った。
俺もそれに応え、少しだけ歪んだ笑顔を返した。
「それと、あたしのことはマリーでいいからねー。じゃ、また明日なーヒロシ」
「え、あ、ありがとうマリー。また明日」
マリーさん。いやマリーと挨拶を交わし、今日のところは解散となった。
◇
俺は自室に戻り、自然とトウロとの作戦会議が始まる。
「さっきは随分考え込んでいた様だったけど、何か分かったことあったの?」
魔王討伐後に元の世界へ戻った人たちの話の後、トウロは一切口を挟まなかった。確かに衝撃の情報だった。俺たちは魔王討伐に参加すれば元の世界に戻れるという基本情報すら知らなかった。しかも元の世界に戻ったとしても無事では済まないという。
この街の受付で説明されもらった資料を読み、エスダート王国にとっての脅威である魔王を討伐する作戦というのは理解出来ていた。
しかし、仮に魔王討伐の参加報酬として元の世界に戻れるというのであれば、その結果は悲惨そのものである。
『うむ。色々と考えてみたのじゃが、整理して話した方が良いかも知れぬ。』
「俺もそう思う。話が大きくなりすぎてまとまらない」
この街に来てから得た情報は、魔王討伐とその訓練。その後ろ盾となっているのはエスダート王国である。
拠点はここ、転移者の街と呼ばれている。甲冑姿の兵士が管理し、一部業務を召喚された軍属が担っている。
兵舎のドアロック機能を持つブレスレット。これはこの街で暮らす転移者すべてにはめられている。反乱を防ぐためなのか、理由は定かではないが魔力を封じる機能が付与されている。
衣食住は無償で提供されている。
魔王討伐に参加すると元の世界に戻れるという話。これは公式の資料には記載がなかった。
但し、マリーの話では無事に戻れる可能性は限りなく低い様だ。
そしてトウロからの情報で魔王城と呼ばれている場所は次元間を統べる妖精王の居城であること。
最低限、妖精王との契約がなければ異世界転移は出来ないということ。
更にマリーが所属する組織が元の世界でこちらの世界の研究を行っているということ。話した感じでは召喚された兵士を無事に元の世界へと戻すことがマリーの主な任務だと考えられる。
現在、魔王討伐に参加する以外元の世界に戻る方法はないということ。但し、妖精王との対話がなされればトウロ達石魔人族が復活させるであろう転移装置にて戻れるかもしれないということ。
「とりあえず、こんなもんかな。どう思う? トウロ」
『そうじゃな、まずは妖精王の安否が気になる。次元間を統べるとは言ってもそこまで強い存在ではないからの』
「うん、それは俺も同意だ。妖精王がこの件の鍵になるんじゃないかと思っている。それと…召喚された人達が無事に元の世界に戻れる方法を模索したい」
『うむ。森の中にあった転移陣と魔王討伐後の転移。そこにエスダート王国がどの様に関わっているのかも気になるのう。このままでは召喚された者たちや帰還を信じて待っている者たちに申し開きができない。』
「あー。そういえばエスダート王国は軍事国家と言っていたけど、具体的には何か知ってる?」
『確か五十年ほど前に一度訪れたことがあったのう。その時も軍事強国ではあったが、このような街は存在していなかったはずじゃな。その後は良く知らぬ』
「じゃ、その五十年間に何かがあったとか?」
『その線が強いじゃろうな…だが十数年前までは妖精王が健在であることも確認されておる』
「うーん……色々考えてみたけど、まずは魔王討伐に参加してみないとわからない事だらけだね」
『うむ、そうじゃな。マリーとやらと協力して上手く情報を集めながら討伐戦へ挑むしかなかろう。大筋でやることは変わらぬが、目的が明確になりつつあるというのは僥倖であろう。なあに、我が付いておる安心せい。フハハハハハ!』
色々見えてきた分、気になることも増えた感じがした。ただ、トウロが言う通り解明しなければならない部分がどこなのか、それが判明しただけでも良しとすべきだろう。
俺が納得し、トウロが高笑いをしたところで本日の作戦会議はお開きとなった。
◇
翌日からも格闘訓練は行われた。
但し、ビエラ教官の推薦で俺は正規の討伐隊員として認められたらしい。気になって聞いてみたのだが、マリーも以前から正規の討伐隊員として配属されているらしかった。
「残り十二日間しかないわよ!あんた達、魔王は手加減なんかしてくれないんだから気合い入れて強くならなきゃ死んじゃうんだからね!」
ビエラ教官はその屈強な筋肉の鎧にキッチリメイクされた面貌で訓練生達に檄を飛ばした。
ちなみにマリーからの情報でビエラ教官は男性だという事を確認した。
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