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目にはさやかに見えねども  作者: 楪羽 聡
第五章 名無し~見えない誰か
100/300

#100 名も無き #20

 『さーやん』の正体を掴む手懸かりは、やはり彼女の日記の中にあると思う。


 登録日と最初の日記は、先週の火曜日……連休明け。


 そして、コメントをつけていた『もっちー』さんも、何か知っているかも知れない……まだ、なんとなくそう思う、としか言えないけど。




 よく見ると、『さーやん』のプロフィールの最終更新日は今日だった。


 テストがあったのだから、朝や休み時間に更新する余裕はないと思う。

 ということは、放課後なのかしら。



 室田先輩たちがいつ見つけたのか、その時のプロフィールはどうだったのか、聞いておけば良かったかも知れない。




「――って、そんなに人のプロフはじっくり見てないわよね」

 ため息をついて、つぶやく。


 それでも、まったくの無駄ではないはず。今度訊いてみよう。




 火曜日にコンビニや図書館に行ったのは、結構な数の生徒が見ている。

 だから、これだけで該当者を割り出すのは結構難しそう。



 学食の話にしても――細かいことは別として、見ていた人は結構いるだろう。


 カオリ先輩の知り合いの先輩たちだって、あたしが何を食べていたのか知ってるんだし……




 でも、数学のことを知っているのは、一緒に勉強した人たちと、クラスメイトくらいしか知らないんじゃないだろうか。

 だとしたら、カオリ先輩関係の人っていう線は薄い。




「でもまだわからないことだらけよね」


 携帯を置いて、一休みついでにおやつを探しにキッチンへ降りた。

 母さんはまだ帰って来ていないみたい。




 ポテトチップスの袋と、オレンジジュースを手にして部屋に戻ると、メールが二件着信していた。



 ――しまった。ポテトチップスはちょっとセレクトミスだったかも知れない。



 食べ始めてから後悔しても遅いんだけど、つまむたびにいちいち手を拭かなきゃ、携帯を汚してしまいそうな気がする。

 本じゃないから大丈夫かと思ったけど、やっぱり気になっちゃう。



 メールはおしのちゃんと美晴からで、どちらも『さーやん』について。

 それぞれ、やっぱり『さーやん』は誰かが勝手に書いたものじゃないか、と書いてある。



 『なんか、不自然…さやかちゃんの行動を元にしてるっぽいけど、さやかちゃんは書きそうにないのよね

  もし本当に川口先輩と付き合ってても、絶対誰にも言わなさそうっていうか…

  ん~と、ライバルを蹴落とすために仕掛けられたワナ、みたいな?』



 『さやかに、あんな日記を書くのは絶対無理!

  恋愛のれの字すらマトモに理解できていないのに、マサキを彼氏にした話なんて書けるわけがない。

  あと、好物を挙げるなら、紅茶の方が先に来ると思うの。もしあたしが真似をするなら、金山さんの紅茶は絶対欠かせないと思うもの。

  でも学食に紅茶なんて置いてないし。だから、多分部活のことはあまり知らない人なんじゃないかと思う。』




 二人とも、独自の目線で分析しているのが面白い。

 そして、本当にわかっている人なら間違わないんだと、嬉しくなった。



 美晴は更に、部員以外の人である可能性をさりげなく示していた。

 これは、マサキが心配したことを美晴も心配してた、ってことよね、きっと。





 でも美晴のメールは、それだけでは終わらなかった。



 『さーやんを名乗る人が、なんの目的であれを作ったのかはまだわからない。だから、ものすごく慎重に行動する必要があると思う。

  しばらくは、自分のこととか訊かれても、答えない方がいいかも。

  相手がマサキでも高見先輩でもおしのちゃんでも、あたしでも。絶対駄目よ。

  あたし、こないだ学食で珍しいねって言ったけど、あれ、浅はかだったわ……ごめんね。』



 うーん……美晴の心配ぶりは、なんかちょっと尋常じゃない気がする。


 その程度の個人情報なら、きっとみんな意識しないで喋っちゃってると思うんだけどね。



 まぁ、なるべくうちのことを喋らないようにしていたあたしがそう言うのも、なんか変な話だけど。




 そしてメールの最後には意味深なことが書かれていた。


 『たかが子どものやること、って思っちゃ駄目よ。ネットでの中傷だって、最悪、人の生死を左右させる力があるんだから……くれぐれも気をつけて。』



 その文章は、美晴の声で頭の中に響いた。




 まだ右も左もわからないのに、いきなり底なし沼に足を突っ込んでしまったような気分になる。


 あたしはこれから、どうしたらいいんだろう……そう考えながらため息をついた。


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