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ハザマの国  作者: まのの
6/8

 二つ目の星を手に入れて、三人がウキウキ気分で目指すのは『冬の山』。

 小猿に別れを告げ、さてここからどうやって『冬の山』まで移動しようかと思った時にヤマトが出したのはハネハネバナの蜜とモコモコキノコ、デカデカキノコの欠片だった。葵達に「『冬の山』はとても寒いからモコモコキノコを食べてから行こう」と提案し、自身もモコモコキノコで今以上にモコモコした猫になりハネハネバナの蜜で羽を生やした。葵達は言われた通りにモコモコキノコを一口ずつ食べ、真っ白の着ぐるみを着たかのように全身モコモコになっている。顔の部分だけ丸く開いていてそれ以外は温かいモコモコに覆われている。手足も全部モコモコだ。その状態でヤマトに跨り、ヤマトはデカデカキノコを食べてもはや猫とは言えない生物になり空を飛んだ。

 巨大な黒いモコモコが銀の羽で飛んでいくという何ともシュールな光景を『秋の大地』は静かに見送った。


 しばらく行くと気温ががらりと変わり、雪がしんしんと降ってきた。真っ白な山々が連なり、雪と相まって幻想的で美しい景色を作っている。不思議と寒さは感じなかった。全身がモコモコに覆われている三人はヤマトの上で「ゆきだー!」「ゆきがっせんしたーい!」「だっだー!」と元気いっぱいだ。

 やがてヤマトが大きな山のふもとに降り立ち、チビチビキノコを食べて元のサイズに戻った。雪の上にぼふんっと着地した三人はきゃっきゃと転げまわっている。ふかふかの新雪なのに体が沈まないのはモコモコのおかげだろうか。雪の上でも沈むことなく普通に歩けた。



「あおいー! ゆきがっせんしよー!」

「え~。あおい、ゆきだるまつくりたーい」

「だうまー」

「じゃあゆきだるまつくってから、ゆきがっせん!」

「いいよ~」



 三人は当初の目的も忘れてすっかり雪に夢中。雪だるまを作っても、雪合戦のための雪玉を作っても、雪玉が当たっても全く冷たくないのだ。雪遊びがこれほど快適に出来る環境は恐らくここにしかない。雪の上をコロコロと転がりながら、葵はふと「なにしにきたんだっけ?」と疑問を持ち、当初の目的をようやく思い出した。



「あ! おほしさまさがさなくちゃ!」



 栞もハッとして「そうだった!」と叫ぶ。蛍だけは変わらずコロコロと遊んでいた。転がる蛍を追いかけている黒いモコモコはヤマトだ。



 ころころ ころころ



 目が回らないのが不思議なほど蛍はどこまでも楽しそうに転がっていく。



 ころころ ころころ



 どれくらい転がったのかヤマトが「蛍、もう止まってよ~」と困っているようなので蛍は「はいっ」と返事をしてようやく止まった。立ち上がるとくるくると視界が回りどすんと尻餅をつく。くるくる周る景色が面白くてきゃっきゃと笑っていたら葵と栞が追いついた。



「ほたる、ひとりでいったらあぶないでしょ! めんよ!」

「ほたる、ちいさいんだからダメだよ! めっ!」



 葵と栞が小さいママになって叱ると蛍は「ごぉ」と言った。ごめんなさいの「ごぉ」だ。ちなみに、ごちそうさまも「ごぉ」である。

 

 しんしんと降っていた雪が止み、先ほどまで白かった上空に青色が広がると大地は光を反射して輝きだした。まるで宝石を散りばめたようにチラチラと眩い光の粒が三人を囲む。「きれ~」という葵と栞の声が重なった。



 ――するとそこに、何やら言い争っている声が聞こえてきた。



 どうやら少し行った先で誰かが喧嘩をしているらしい。三人は声のする方向へと歩き出した。ぼすぼすと音を立てて雪の上を歩いていくと、やがて二匹の白いうさぎが見えてきた。二匹はピンク色のリボンの両端を手に持ち、綱引きのように引っ張りあっている。



「このリボンは私のよ! 私がお母さんに貰ったんだから!」

「違う! 私のリボンだよ! お姉ちゃんもう使ってなかったもん!」



 ぐいぐいと引っ張り合う二匹は、お互い譲る気は全くなさそうだった。

 このままでは可愛いリボンが千切れてしまう。葵は「ちょっとまって!」と真ん中に割り込むと二匹の話を聞くことにした。


 姉うさぎは「このリボンはお母さんが私にくれた物なの。私のリボンなの。それなのに妹が勝手に私のリボンをつけていたの! 酷いでしょう? これは私のリボンよ! 妹なんかに絶対あげないわ!」とぷんぷんしながら妹を睨みつける。

 葵はうんうんと頷き、「うさぎのおねえちゃんのいうとおりだよ。わるいのはいもうとのほう」と姉うさぎの隣についた。


 妹うさぎは「そのリボンもう使ってなかったじゃない! 使ってないから私が貰おうと思って、ちょうだいって言ったらいいわよって言った! でも私がリボンをつけたら、やっぱりあげない! っておかしいよ! いいわよって言ったのはお姉ちゃんだもん!」と頬を膨らませて姉を睨みつける。

 栞はうんうんと頷き、「こっちのうさぎさん、わるくないよ? おねえちゃんがわるいよ」と妹うさぎの隣についた。



「しおり! こっちにきなさい! おねえちゃんうさぎのほうがあってるんだから!」

「やだ! こっちのうさぎさんわるくないもん! あおいのがわるい!」

「あおいのほうがおねえちゃんなんだからね! いうことききなさい!」

「やだやだ! あおいのいじわる! ばか!」

「ばかじゃない! しおりのばか! もうしらない!」

「あおいのばか! しおりももうしらない!」



 二人は怒りながらそれぞれ隣に居るうさぎの手を取り、うーんしょ、うーんしょ、とリボンを引っ張り出した。うさぎの姉妹は自分の味方が増えたことが嬉しくて、さらに気合を入れてリボンを引っ張る。

 そんな様子をぽつんと見ていた蛍。大好きな姉達の喧嘩を見て、目に涙が溜まっている。

 


 うーんしょ うーんしょ


 

 蛍の事など頭にない姉達はお互いの文句を言いながらリボンを引っ張り続けている。

 二人はすっかり忘れていたのだ。



 蛍が泣くと大変な目に遭う事を。



 ぽろりと一粒の涙が零れ落ち、蛍の反撃ののろしが上がった。

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