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第三話

翌朝の早朝六時、瑞貴はブレザーを着ていた。

昨日の戦いで少しボロボロになってしまったブレザーだったが修復の魔法がかけられている様で大きな穴など、その他目立つ傷はすっかり綺麗になっていた。

朝食に購買部で何か買ってこようと財布と鞄、それに昨日の事件でこっそり持って帰っていた、日本刀を腰に携えて朝の購買部へと向かった。


基本的に購買部は年中無休で二十四時間営業である、その理由は『突然物が必要になった時に、戦場ではそれが勝利を左右するときがある』という校長の言葉からである。


そんな購買部には、モリモリドリンクやカサカサカレーなど普通の生活では目にすることの無いような物が多々置かれている、だが瑞貴はそんな怪しいものを買う気にもなれず無難に牛乳とアンパンという。張り込みをする探偵の必須の物を買って外に出た。

とそこで瑞貴は酷い立ち眩みに襲われる、立つのもやっととなり堪らずその場に座り込んでしまう。

(やべぇ〜・・・これは、あの時と・・・。)

パッ!!

大きい音を鳴らしながら不意に瑞貴の頬が叩かれる、それにより意識がハッキリとして立つこと出来るようになる。先ほどまでの感覚はもう無く目の前にいる叩いたであろう人間に目を向ける。

容姿は腰までありそうな長い黒髪をポニーテールと呼ばれるように一つに束ねた和風美人、ただその容姿に似つかわしくないほど目はキリッとしており、まるで「隙は見せない」と語っているようだった。

「大丈夫か?」

そう言って手を差し伸べてくる女、本当は一人でも立てるのだが人の好意を無碍にすることも出来ずゆっくりと手を差し出す。

女は手を掴むと標準の成人男性の体格はある瑞貴の身体を軽々と起き上がらせた。

「突然立ち眩みが起きてしまったので・・・。」

そう説明する瑞貴に少しも驚いた様子を見せず女は淡々とした口調で話し始めた。

「慣れてないからしょうがない、こちらにも非があるしな・・・。だがこんな朝早くここに人がいるとは思わなかったんだ。本当にすまない」

「何を言って・・・っっ!!」

言葉を最後まで言えずに再度立ち眩みが瑞貴を襲う、先ほどよりは酷くは無かったがそれでも身体はいう事を聞いてくれなかった。

薄っすらと目を開けると視界が歪んでいた。自分のせいだと思い目を擦ってみるが・・・歪みは直らなかった。その時、一部の風景が切り取られたように黒くなる。

そしてそこから・・・三人の男が出てきた。


瑞貴は目の前の光景に驚愕していた、先ほどまでの立ち眩みも慣れた様でそこまで酷くはなかった。

大和やまとけいてる、さっき連絡でここに転移するなと言ったはずだが・・・。」

三人の男を睨みつけながら女はそう言うと啓と呼ばれた眼鏡をした男が、クイっという効果音が似合いそうな感じで眼鏡を上に上げ瑞貴に近寄ってきた。

「すまなかった、大丈夫か?」

女と同じように手を差し伸べる啓、大和と呼ばれた男はその後ろで軽く頭を下げていた。

輝と呼ばれた男は興味なさそうに一瞥するだけでふらりと何処かへ行ってしまった。

「輝の奴・・・今回の任務であんまり出番がなかったから拗ねてやがんな」

頭を掻きながら大和は苦笑を浮かべていた。そして視線を瑞貴に移し

「君は新入生かな?でもこんな時間に購買部にいるなんて何かあったのか?」

頭から足まで見定めるように見ていた大和は少し後ろに落ちている牛乳とアンパンの入った、袋を見つける。

「朝食を買いに来てたのか、色々とすまなかったな」

それだけ言って何処かへ行こうとする大和、それを追って女と啓が何処かへ行ってしまう。


「なんだったんだ?」


取り残された瑞貴の問いに答えるものは誰もいなかった。




時間が経ち一時間目が始まった、昨日自己紹介を済ましてしまったらしくまだ名前も知らない人がたくさんいたが瑞貴は気にもせず、今朝のことを考えていた。

(俺のことを新入生と言ってくるあたり多分上の学年なんだろうな・・・。)

ペンを器用に回しながら考えているといきなり自分の机に短剣が突き刺さった。

「うわっ!!」

勢いあまって後ろに椅子ごと倒れてしまい頭を強打する瑞貴、だが周りにいる生徒は先輩すらせず目を合わせようとすらしない。

とそこで一歩一歩こちらに歩いてくる女性・・・このクラスの担任である新野にいのはるか教諭が短剣を構えていた。

「私の授業を聞かないとは良い身分だな、次は頭に当ててやるぞ」

そう言って持っていた短剣を本当に頭に向かって投擲する、瑞貴は自分と一緒に転がっている椅子を盾にして防御する。

ダンッ!!

鈍い音とともに椅子に短剣が突き刺さり、瑞貴はその隙に腰の日本刀を抜き放つ。

「私に楯突くというのか?」

恐ろしい目つきでこちらを睨んでくる遥に一瞬身震いした瑞貴だったが深く深呼吸をしてしっかりと日本刀を構え遥を見つめ直す。

「良い目つきになった、だがそれだけだ」

そして遥の短剣が青白く光を帯び、青白い光を帯びた短剣が投擲される。

「一本なら対処は簡単だぜ」

瑞貴はそう言って日本刀を振り下ろし短剣を叩き落そうとしたが・・・。

ギィィィィ!!

何故か日本刀と投げられた短剣が空中で拮抗する。

「んな、馬鹿な・・・。」

呆気に取られながらも必死に日本刀を握り、短剣を押し返そうとする瑞貴だったが短剣は勢いを逆にだんだんと強くさせ、ついには瑞貴の身体ごと後ろに下げるほどの力となった。

「一つ良いことを教えてやろう、その短剣は私の魔具でな・・・込めた魔力の分だけ破壊力と速さのどちらかをあげることが出来るのだ。今回はだんだん破壊力が上がるように設定してみた。これで先生からの授業はおしまいだ、さっさと終われ」

言葉が終わると同時に瑞貴の手元で鈍い音がする、反射的に手元を見ると短剣が日本刀を折っていた。

それから瑞貴の目には全てがスローモーションのように見え、自らの身体は全く言うことを聞かず動かなかった。

そして短剣が瑞貴の胸に吸い込まれるように向かっていく。

(なんだよ・・・頭じゃねぇ〜じゃん)

そんなことを思いつつ瑞貴の意識は沈んでいった。




スガアアアアアアア!!




教室の窓は割れ、床は捲りあげられ、内部の机は宙に舞った。

「何だ・・・これは・・・。」

遥は呆気に取られていた、先ほど本当は殺す気など微塵もなくただお灸を据えてやろうと思い、心臓手前で短剣が止まる様に設定したのだが、こんな設定や効果を付けた覚えはなかった。

だが現実に目の前で何か凄まじい力が渦巻いている。

「剣術を取る生徒がこんな魔法を使うなんて聞いたことないわ・・・。これほどの力なら魔術の方でもトップに入れるくらいなのに・・・。」

辺りを包んでいた突風は急に静まり辺りは無音となる。

「危ない危ない・・・。」

そう言いながらも傷一つ負っていない金髪碧眼の外国人のような青年が遥の所に近づいてきた。

「先生、これはどういうことで・・・っ!?」

青年が問いただそうとしたときに背後から心臓を素手で掴まれる様な圧迫感を感じ言葉を途切れさせる。

遥の額にも脂汗が滲み出ていた。

遥の視線の先には瑞貴が立っていた、先ほど放った短剣を素手で握りつぶして。

『我が主を攻撃し命の危機にさらすとは・・・生きて帰れると思うな下種ども』

瑞貴の口は動いていないのに瑞貴とは違う声で瑞貴の方向から声が聞こえる。

「下種とは・・・私に対してのことか?」

遥が先ほどと同じように睨みつけるが瑞貴は無視して左腕を上に伸ばす、そこに黒い何かだ集まり、一瞬瑞貴の背後にドラゴンのようなものが浮かび上がり直ぐに消える。

黒影閃こくえいせん

手から黒い閃光が放たれ地面を抉る、遥が周りに被害を出さないように結界を張ったのだが多少威力を弱めるだけで黒い閃光は遥のいた床を貫通する。

「これは・・・魔法?」

先ほどの攻撃は遥には読めなかった、と言うより魔法を使う予兆である精霊たちの力の集まりが全く無かったのだ。


ドンッ!!


教室の扉が吹き飛び外から多数の教師のような者が入り込んでくる。

それもそのはず今までの戦闘の衝撃はこの教室だけに留まるわけも無く他の教室にまで届いていたのだ。

その中でも早く入ってきた若い教師が遥に現状をといただそうと近づくが・・・分かってしまった。

瓦礫の山の中に一人たたずむ不気味な青年に

「く、空間隔離くうかんかくりっ!!」

若い教師は傷ついた生徒を心配し魔法を唱えた。若い教師の魔法は自らと他の先生、それに問題の生徒である瑞貴を別空間へと強制的に転移させた。

真っ白の何も無い空間に一人の生徒に対峙する多数の教師

「何なんですか・・・あれは・・・。」

「分かりません、っっ!!来ますよ」

教師の視線の先には十数メートル離れたところで腕を振り下ろそうとする瑞貴の姿があった。

嫌な感じが教師たちの身体を襲い反射的にその場から飛びのく、すると白い床が見えない何かによって抉れ大穴を開けた。

破壊はかい爪牙そうが

先ほどの声が響くと同時に瑞貴の足元の床を抉りながら四つの衝撃が放たれる、教師たちは見えない力に驚きながらも流石にプロのハンター、冷静に攻撃を避けていった。

『このままではらちがあかぬな・・・。』

言葉と同時に教室のときのような突風が吹き荒れる。顔を抑えていた教師たちだったが目の前の光景に目を奪われ顔を抑える事をやめてしまう。

巨大な黒い蝙蝠こうもりの様な翼、わによりも獰猛そうな顔で長い牙と黒い鱗の顔、十数メートルは在りそうな尻尾、見上げるほど大きな巨大な体躯、空想の中で力の象徴として多く用いられてきた存在するはずの無いモンスター、黒い巨大なドラゴンがそこに在った。

教師たちも数々の視線を超えてきた勇士で自分よりも二、三倍大きな魔物と戦うこともあった。だが目の前のあれドラゴンは全くの規格外であった。

あまりの威圧感に数人の教師たちの足が震える、そんな教師たちの中で意を決して先ほどの若い教師が自らの魔具である槍でドラゴンに突っ込んでいった。

身体の空気抵抗を殆ど無くし、自らのスピードを飛躍的にあげる能力を持つその槍は若い教師の才能もあってか充分にその能力を引き出していた。

最高速度にすぐに達しドラゴンの眼前に踊りだし槍を突き出した。


ガィィィィ・・・バキッ


槍とドラゴンの身体は刹那の間拮抗し、槍は粉々に砕け散った。

そして驚いて呆然としている若い教師にドラゴンの巨大な腕が振り下ろされた。

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