続々々・帰ってきたイケメン妖怪ハンターリックの冒険
いつものリックです。
リックは古今無双のスケベな妖怪ハンターです。
美人幼な妻の遊魔と賞金が懸けられた妖怪探しの旅をしています。
またしても、妖怪が見つからず、ひもじい思いをしています。
(お腹が空いたにゃん……)
目も虚ろで、危ない雰囲気を醸し出しているリックです。
あ、危ないのは生まれつきでした。
「うるさいにゃん!」
真実を述べただけの地の文に切れる元気はあるリックです。
「お前様、大食い大会があるらしいですよ」
遊魔が町の掲示板を見て言いました。でも、決して○ちゃんねるとは提携していません。
「大食い大会なんて、自信がないにゃん。勝てなかったら、代金を払わなければならないにゃんよ」
虚ろな目で掲示板を見たリックは溜息混じりに言いました。
「そうなんですかあ」
遊魔はあるお師匠様の口癖で応じました。
「むん!?」
リックは、掲示板の隅に小さく書かれた文を見つけました。
(優勝者には、金貨千枚とミス・ススキノからキスのご褒美!?)
それを見て、俄然やる気フルスロットルになるスケベです。
「遊魔のために頑張るにゃん!」
気取って告げるリックです。とことん外道だと思う地の文です。
「お前様、素敵です!」
何も知らない遊魔は目をウルウルさせて感動しています。
(遊魔、許してにゃん)
少しだけ後ろめたくなるリックです。でも、謝り方がも○ちの真似なので、ふざけていると思う地の文です。
遊魔に真相を教えましょう。
「ダメにゃん! 見逃して欲しいにゃん!」
涙ぐんで地の文に懇願するリックです。
そして、リックと遊魔は大食い大会が開催されるススキノビッグサイトに行きました。
そこにはたくさんの大食い自慢らしき○ブが集まっていました。
「言葉を選んで解説して欲しいにゃん!」
地の文のストレートな表現のせいで周囲の巨漢の方々に睨みつけられ、身の危険を感じるリックです。
「エントリーシートに必要事項を記入してください」
係の女性が言いました。チャイナドレスの美人です。
(この人が、ミス・ススキノかにゃん?)
鼻の下を伸ばしてエントリーシートに記入するリックです。
「あれ?」
書き終えて遊魔を探すと、どこにもいません。
(遊魔が怒ってるにゃん……)
嫌な汗がたんまり出てくるリックです。
(何としても優勝して、ご機嫌を取るしかないにゃん)
遊魔の踵落としを逃れるには、高級またたびをプレゼントするしかないと思うリックです。ところが、
「頑張ってくださいね」
係の女性に手を握られて言われ、また鼻の下を伸ばしてしまうスケベです。
もしかすると、遊魔は本当に好きな人と巡り会って、手に手を取って行ってしまったかも知れないと思う地の文です。
「そんな展開は左京だけにして欲しいにゃん!」
リックは血の涙を流して、地の文の妄想を否定しました。
そして、いよいよ大会が始まりました。巨漢達の間に埋もれそうになりながらも、リックは必死になって目の前に出された食事を食べていきました。
時間が経つにつれ、脱落者が続出します。
(もうダメにゃん……)
そう思った時、目の前に係の女性が見えました。
「頑張って!」
その一言で、元気百倍になる外道です。
「大食い王に俺はなる!」
誰かのパクリ気味の台詞を言い、リックはまた食べ始めました。
すでにお腹ははち切れそうなほどに膨らんでいます。
そして、遂に他の参加者が脱落し、リックだけが残りました。
「優勝はリックさんです!」
司会進行の男性が高らかに宣言しました。会場がドッと沸きました。
「では、賞金の金貨千枚です」
大きな布袋に入った金貨を渡されたリックですが、
「ミス・ススキノのチュウは?」
そちらの方が気になっています。司会の男性はニヤリとして、
「飛び切りの美人ですので、鼻血を垂らさないでくださいね」
「大丈夫にゃん、もう知ってるにゃん」
リックはすでに鼻の下が顎の下になりそうです。
「では、ミス・ススキノ、どうぞ!」
司会の声に応じて、垂れ幕が上がりました。
そこにはスタイル抜群のチャイナドレスのスリットが眩しい女性が立っていました。
会場の飢えた男共が溜息を漏らしましたが、リックは凍りつきました。
「お前様、遊魔は嬉しゅうございます!」
ミス・ススキノは何故か遊魔でした。
(どうゆう事にゃん?)
硬直したまま、遊魔のキスを受けるリックです。
「ミス・ススキノが急病で来られなくなって困っていたら、会場にその人がいてくれて助かりました」
ホッとしている司会の男性を恨めしそうに睨むリックです。
(どうしていつも僕はこんな役回りにゃん!?)
顔で笑って心で泣いてのリックでした。
めでたし、めでたし。