祟り
何時からだろうか、僕らが物事をナンデモカンデモ後回しにするようになったのは。
何時頃からだ、僕らが無責任に周りに責任を押し付け始めたのは。
ある雪の降る寒い日のこと。
地元の人間でさえ一切寄らないような山の奥地に二人の男はいた。
「兄貴、ここに本当にあるんですか」
オールバックの青年は隣の男に尋ねる。
「あるに決まっているだろ。ここいらの土地は切り崩された跡がある。それにこんな怪しげな建造物があるんだ。」
男は作業する手を止め、通ってきた道の反対方向を指さす。そこには石像がいくつも並んでいた。
「それってどういうことですか」
「何バカ言ってんだ」男はオールバックの青年を殴り、
「人を寄せ付けたくないってことはそれだけ重要なものがここにあるってことだよ」
男たちは持ってきた台車から木箱を取り出し岩盤の亀裂へと入れていく。
岩盤の亀裂は男たちが爆薬を使用し作ったものだ。今、運んでいる木箱の中にも弾薬が詰まっており、そこをさらに爆破するつもりである。
弟分の男は爆薬を運び終わり兄貴分の男へ、
「ここに何もなったらどうするつもりなんですか、兄貴。こんな量の爆薬なんてどこから手に入れたです」
「この爆薬な、ここの山の話をしたら食いついてきた、資産家がいたんだよ。面白そうとか言っていたが、全然信じてはいなかったけどな」
「でしたら、なぜこれほどのことをやったんですかね」
「酔狂とかフザケタことをほざいていたよ、あの老人。まあ、金は俺の話術もあってかゼロ一桁増やしておいたがな。」
「さすが兄貴。ベンガタツっていうやつですか。」
「そんな言葉知ってたのかよ、まあさっさと爆破するぞ」
男たちは導火線に火をつけた。
その行動からこの山は文明の遺産であることが分かることとなった。
その場所は鉱山となった。
過去の人類が埋めたモノを発掘したからだ。
文明を大きく失ったら人から見れば天からの贈り物だった。
しかし、誰も天からの贈り物が手に余るから埋められたなんて都合の悪い考えはしなかった。
それからこの山は宝の山と呼ばれ、沢山の労働者に溢れ、町へ都市へと発展を遂げていった。
鉱山は今日も活気に満ちている。
ここの通りにも、
「今日も沢山とれたな」
ハンチング帽を被った男が隣の男に話しかける。
「ホントですね、こんなご時世にこれほどの稼ぎ先があるのはホントありがたいっすね」
「家族にも旨いものが食わせれる。有難いことだ」
男たちは歩きながら帰路へと向かう。他の労働者もせっせと帰るべき場所へと向かっていく。
ハンチング帽の男はふと思い出したように立ち止まり尋ねる。
「そういえばあの銅筒に入っているモノって何なんだろうな」
「よく分からんが金属とかそんなモノだと皆行ってますね」
「全部の筒に入っているから高価なモノなんかね。全部捨ててしまっているが」
「文明の遺産とかそういうものなんじゃないんすか、俺らには扱えないし、どうでもいい事っすよ」
純銅の筒にはいつも同じ金属が入れられていた。皆どの様なモノがよく分からずいつも作業場の近くに捨てている。
「家族も待ってますしさっさと帰るっすよ」
「それもそうだな」
二人の男たちは歩き出した。
まだこの都市の遺産が負の遺産だったことに気付く人はいない。
何時からは分からないが、鉱山街での死亡者が増えてきた。鉱山での仕事による事故死ではない。無理しなくても銅筒は幾らでも出てくる。危ない作業も殆どない。でも、死亡者は増える。
亡くなる人はいつしか労働者だけでなくその家族たちへと増えていった。
何時の時から伝染病やら呪いとか根拠のない噂が流れ、人の死とともに立ち消える。
何時しか宝の山は死の山へと変わった。
土地から人は離れ、昔のような静かな山へと戻っていく。
何時からだろうか、無知を罪だと思わなくなったのは。
何時になるのか、僕らの尻拭いが終わるのは。
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