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第九十六話

軍部の門を出た。

振り返ってその青空を背景にした建物を眺める。

もともと歴史ある商館だったせいか趣があるなと思った。


「カーシャちゃん。やったな!」

そうクルスさんが抱き着いてこようとするから掌で頬を押す。

ジャンは眉をひそめ門のすぐ傍に立っていた。


「こいつは何辛気臭い顔してんだかな。物事がすんなり行ってなに悪い話があるって話だよ?」

傍にいた赤い髪の魔法使いが泣いている。


「ううっ。ジャン様をよろしくお願いします……」

そう彼女は小さな手で握手を求める。

その泣き顔を見ると何だか胸が痛んだ。


人より優位に立ってはじめて誰かを可哀想に思えるなんてホント腐ってるな私の心。


「よーし。今日はひたすら食うぞ! 飲むぞ! 良いよなカーシャちゃん。この誘いは断らせないぜ!」

そう彼はジャンと私の肩をつかんで街に繰り出そうとする。



クルスさんは広場で麦酒を飲みながら悲しむ。


「赤い髪の女の子来なかったなー。俺と一緒の髪色だから仲良くなれると思ったのに。しつこく誘いすぎたかなー。なあどう思うジャン。俺しつこく誘いすぎたかなー?」


彼だけがよく喋る。もう完全に酔っ払いだった。


私とジャンの間にはどことなくぎこちない空気があった。

「なにお前はこんなにめでたい席で辛気臭い顔してんだよー。カーシャちゃんが処刑されなかった。お前とまた組める様になった! すんなり決まって良かったじゃないか!? なにが不満なんだよ」


「……そのすんなり決まりすぎた所だよ」

その言葉にクルスさんの眼が鋭くなる。

「教会はそんなに甘くはない。何かあると考える方が自然だろう」


彼は陶器の杯を置く。

「確かにな。毒蛇の巣で暮らして生き残ってる様な奴らだからな。魔法使いを殺すのが可哀想なんて思うような連中じゃない……」


二人共、周囲を警戒している様だった。

良く見るとクルスさんの酒は全然減っていなかつた。

飲んでる振りをしていたんだ。


「証拠に黒騎士との面会が許された」

ジャンがそう言うとクルスさんが唾を吹き出した。

「いつ? 五人中の誰だ!?」


「今日、ここで……ゴーディ・ニコルソンとだ」

そう彼は両肘をつき手を口元に当てながら言った。

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