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第八十四話

緑竜の間の窓に頬をつける。

外の冷たさが伝わってきた。

息を吐くと透明な壁が白く曇った。


そこから見馴れた夜の星を探す。

知らない場所で夜空を眺めると寂しくなるのはなんでだろう。

私の悲しい天体観測。


そうしていると艶のある木製の扉が叩かれた。

つづいて茶色の髪の召使が入ってくる。

「皇帝が来るまで暫しお待ちを」


以前陶器にお湯を張ってくれた召使だった。

「いいよ。かしこまらなくても。私そんな身分の人間じゃないから」

「あ、いえ。でも、良いんですか!?」


そう彼女はまんざらでも無さそうに眼を輝かせる。


私は彼女と窓際に座って暫く談笑した。

「……で。ミセス・シルバーは私に言うんですよ『お前は全然成長しないし役に立たない』って」


そう彼女は隠し持っていた干菓子を食べながら言う。

私もその細長くて固い菓子を齧ってみた。

砂糖の甘い味が口に広がる。


「でも気持ちが晴れました。誰かに話を聞いてもらえるって凄く気持ちがすっきりしますね」

私は粉の塊を飲み込みながら頷く。

「良いよ。こんなんで気が晴れるならいつだって聞く」


その言葉に彼女は大袈裟に泣きそうな笑顔を見せる。

「ああ。私カーシャさんのこと凄い好きになってしまいました。良い人ですね!」

そう私の身体を細い腕で抱き寄せ強く揺らす。


「この城でわからないことや困ったことがあったら何でも言ってください!」

そう茶色の髪の召使は興奮気味に眼を輝かせて言った。


なんでだろメニョを思い出してしまう。

きっと砂糖の甘さが舌に広がったせいだ。

絶対に帰る。約束した時は本当にそう思ってたんだ。だけど約束を守るって難しいね。今まで守れた数より破った数の方が絶対に多いよ。


冷たい窓に身体を預けると情けなさで震えてしまった。

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