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第八十二話

「そういえばここの皇帝の間ってどうしてこんなにも……」

頑張って言葉を選ぼうとした。

「情緒があるっていうか。伝統があるっていうか」


遺跡みたいなボロボロな石造りっていうか。

その失礼な言葉は頑張って飲み込んだ。

軍師のウィルさんが頷き答える。


「この場所はイヴォークの初代皇帝が築いた場所なのだ」

そう彼は空が開けた欠けた石柱ばかりある空間を眺めた。

「竜と供に政治ができる様に屋根が無く広大な造りになっている」


なるほど結構、合理的な理由なんだなとこの秋の風が入る皇帝の間を眺める。もう冬に近い風かもしれない。その寒さに氷の魔法使いを思い出してしまう。なんだか寂しい気持ちになった。


「だが初代皇帝が我がイヴォークを建国してすぐに竜は我が国から去ってしまった」

「存命中にですか?」


何だか意外な気がして聞いてみた。死んでから離れるならまだ解るけど。


彼は頷く。

「理由は今でも謎だがな。とにかくそれ以来我が国の歴代の皇帝達は竜の建国の尽力へ敬意を示すため、再度我が国へ竜が降り立つのを望んで何百年もここを執政の場と定めてきたのだ」


意外と重い理由なんだな。そう思うとこの乾いた風の吹く無骨な空間も本当に情緒溢れるものに見えた。


「なるほど。初代皇帝が残した城を囲む様にして幾重も新しい城を増築してきたわけなんですね」

そうじゃなきゃこの何重もの城壁が連なる難攻不落な城を説明できない。


長髪の軍師は笑う。

「その通りだ。囚われの身にあって敵を観察してるとは中々肝がすわっているな」

彼は秋の風に髪をかきあげながら続ける。


「まぁ。それは無駄な努力だがな」

そう彼ははっきり言った。

「お前は一生この国から出られない」


彼はそう鋭い視線を私に送りながら言った。

「どうして俺がさっき皇帝の前で軍の状況を説明したと思う?」

長髪の男はそう落ち着いた声で続ける。


「お前を絶対に逃がさない自信があるからだ」

その男は軍師然とし全てを見透かす様な声で言った。

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